127 その12 ~魔境の制御管理体創造 その3~

ユグドランを回収し、代わりに制御管理体を残してきたザックたち。

こうして…元・ドライールドは…緑の魔境改め、漆黒の大地に制御管理体を設置されて徐々に自然な環境へと戻るだろう…だが、龍脈が一度集結してしまった事実は変わらず、制御管理体に集中されないように乱されてはいるが制御から外れると魔界のゲートが設置されるに適した地に戻ってしまうだろう…

え?…また海中に没したらいいんじゃないかって?…そんな封印に適した場所がホイホイ見つかるとでも?…これだから無知蒙昧むちもうまいな民は困る…ヤレヤレ

※無知蒙昧…知恵や学問がなく、愚かなさま。▽「無知」は知識がないこと。何も知らないこと。「蒙昧」は物事の道理をよく知らない意。※goo辞書・四字熟語より抜粋

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- 暫くぶりの崖の上の…ぽ●ょじゃないぞ! -


「今戻っ「ますたあああああ!!」たああああ!?」


肉の壁…しかもたわわに実った二振りの肉の果実の群れに襲われるザック。一部、何故かやや小振りだったり大き過ぎる果実もあったりなかったりするが…数の暴力に押し倒されるのであった!


「な…な…なにしてんですかっ!?」


レムが激高して…否、羨ましそうに怒鳴っているw


「「「なにって…マスターが…はっ!?…レム…ってことはこれは幻影じゃなくて…」」」


さ~~~っ…と青褪めるゴーレム娘たち。流石に大隊長は呆れて物もいえないと疲れた顔をして傍観しており、統括体ナルはナルで真っ先に飛びついて…後ろから大勢のゴーレム娘たちに潰されているw


「痛たたた…ってか、ナル?」


ザックが痛みから、驚きから復帰して目を開けると…飛びついたナルがザックを跳ね飛ばした後…大勢のゴーレム娘たちにバックアタックを受けて気絶してる所が目に入ったのであった…合掌…チィ~ン…w



「まさか僅か数日で禁断症状に陥るとか…」


レムが溜息を吐いてるが、ザックはレムをチラ見して


(レムも同類じゃないのか?)


と思っていた。伝わらないようにコッソリとだが…w


ストレージ内で保存されていれば時間経過が無いので問題はなさそうだが、外で活動してる間は普通に時間が経過する。ザックと物理的に長距離離れていると…寂しさが爆発するそうだ。


(うさぎ?)


寂しくて死にそうになるとか…まるっきりうさぎであるw



現在、ザックはユグとレドランのメンテ中だ。ストレージ内に入って貰って…まぁ収納したのだが…その中で詳細を調査中だ。


(…ユグ、概ね問題なし。但し、違和感あり…と)


違和感の正体は…濃過ぎる魔素に体組織が侵されているからだが…割合としては全体の僅か0.001%だからいきなり増殖するでもなければ問題は無いだろう…


(…ルドラン、こちらも概ね問題無し)


同様に魔素が構成素材に僅かに浸透している程度。その割合は更に少なく…0.0001%だ。だが、ユグの疑似有機体とは違い…一度魔素が変に浸透すると抑制機構を持たない無機物のルドランはあっという間に侵されてしまう可能性がある。


(取り敢えず…両方の魔素を抜いておくか…)


メンテナンス・モードをモディファイ・モードに切り替え、素材毎に弄れるようにする。


(魔素見っけ…)


両者の浸透している魔素を引っ掴んでゴミ箱に放り込む(手ではなく思考で操作)


(スキャン…残った魔素は無しっと…)


他に何か問題が無いか考え、


(…魔素に影響を受けた部分は無いかな?)


と、他の構成素材を精査する。


(これは…?)


見ていたのは神経伝達材である疑似ミスリル神経束…それと、その先にあるコアたちだ。コアは直接触れている訳ではなく、コアを内包するコアパーツに接続され、その中のコアに魔力波でやりとりをしている。だが…


(神経束が魔素に侵されているな…中の神経パーツもか…その先のコアパーツも…まさか)


コアに焦点を当てると、コアは魔素に侵されていなかったが…どちらかといえば自衛機構が働いて常時魔素からの影響を防ごうとそのエネルギーの半分を浪費させられている状況だった…


(全パーツから魔素の悪影響を除去っと…)


ひとつひとつこなそうとすると…かなり細かい作業が必要になる為、一括して魔素を消去クリアした。とはいっても、単純に「魔素」という成分をクリアするとユグが動作不能に陥る為…「創造時のデータに存在しない要素を消せ」という命令を発動した。これにより、悪影響のある要素を消し去ることに依り、問題は無くなると思う。


(次、ルドランもだな…)


同様にクリア処置を施す。一応、精査をしてからだが…結果的にはユグと同一症状だった訳だ。違うのは神経は無いがデータ伝達部位があり、人間型ゴーレムとは違う構造だということくらいか。


(全パーツから魔素の悪影響を除去…)


ストレージ内のユグとルドランのステータスから魔素の影響が消えたことを示すインジケータが点灯する(このチェックで改めて追加した)


(よし、おっけー)


排除した魔素は改めてMPに変換する。


(…結構な量になるんだ。放置されてた期間分かな?)


取り敢えず、変換したMPを大容量魔石ラージマギバッテリー充魔力チャージしておく。どんどん注ぎ込んでいると1本が満タンになり、2本目も満タンになり…5本目でようやく凡そ半分くらいで変換されたMPが注ぎ終わる。


ストレージ内とはいえ、バッテリーにチャージすることでロスは発生する。ストレージ内ならロスが発生しない仕組みを創り上げられればいいのだが…今の所、思い浮かばないので取り敢えずスルーすることにしたのだった…



「ユグ…体調はどうだ?」


「うん!体も頭も軽くなった気がする!」


(頭…何も考えてないとかじゃないよな?)


頭痛はしないけど頭が重かったということだろう…と思いたい。


「ルドランはどうだ?」


〈問題ない〉


「そ、そうか…まぁ、何かあったら教えてくれ」


〈あぁ…〉


何故か口数が少なくなったルドランに訝し気になるザック。現在は女性型になっているルドランだが…金属鎧姿なのでアイアンゴーレム然としている。ルドランはユグと一心同体であり、内包しているコアは武器としての制御と自律行動ができる程度の機能しかなく、基本的にはユグの思考コアを間借りして思考している。それだけユグのコアの性能が高い訳だが…大体は一緒に行動しているのでそれでも問題は無い。


「まぁ…問題が無いならいっか…じゃあ」


「「?」」


「魔境に居た時のデータの提出、宜しく」


後はナルに丸投げし、データは念話ネットワーク経由ではなく、口頭での聴取となった訳だが…


「お兄ちゃん!…飽きたぁ~っ!!!」


…と、いつもの調子が戻ったらしい。仕方なく、残りはルドランに聴取して貰ってユグは…疲れたらしく横で爆睡していたらしい…いいのか?そんなんで…元最強のゴーレムさんよ…(苦笑)



- 漆黒の大地 -


ズズズズ・・・


夜も更けた頃…地鳴りが響いていた。ザックたちが転移にて去った後、この地を任された制御管理体のみで過ごす初夜だ…とはいえ、人型でもないゴーレムが単体で過ごす夜に色っぽいことなどなく…唯、淡々と何事も無ければ善い…と佇んでいた所に襲った異変ではある。


(一体何が原因で…?)


制御管理体は各種センサーを起動して周囲を探査サーチを開始する…


(赤外線センサー…感無し)


(魔力センサー…感無し)


(空間センサー…感無し)


(…おかしい)


各種センサーに反応が無いことに制御管理体は訝しみ、考え込んでいるようだ。そして…


(…まさかっ!?)


周囲ではなく、慌てて自身の建っている真下や中部をサーチする。すると…


ビーッビーッビーッ!!!


警報アラート!…真下の地面に異常あり!〉


警報とマシンボイス(制御管理体のコアとは独立した探査機能付随のマシンボイス)と警告音声が鳴り響く。


(まさか…)


制御管理体は真下を精査する為に探査の精度を上げて再度探査をすると…


警報アラート!…設置面に異常あり!〉


(え…早くない!?)


警報アラート!…制御管理体底面に異常あり!〉


(は?え?)


警報アラート!…制御管理体内面に異常あり!〉


(…な!?)


そうなったら後はコアの思考を加速しない限り…抵抗は無駄であった。一瞬でも呆けてしまった制御コアは…抵抗する間も無く…唯でさえ漆黒の大木を素材とした暗黒物質ダークマターで組まれた構造材から…内部機構全ては魔素に侵され…その行動目的を書き換えられてしまった。


(は…い………全ては魔族の王…魔王様の仰せの通りに…)


制御管理体の抑制・攪乱していた龍脈と特異点は安定・集中・発生が成され…魔界ゲートを安定設置する地として…漆黒の大地として勢力を拡大し始めるのだった…


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緑の魔境が漆黒の大地として魔境再び!…そして魔界ゲートが開くことに依り…魔族の前線基地が構築されることに!

逃げてー!超逃げてー!>サンセスタの人々(でも、気付くのは前線基地ができてから魔族の尖兵が侵攻を開始する頃なんだよなぁ…)


備考:最善と尽くしたと思ったら、逆効果だった罠…orz

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