126 その11 ~魔境の制御管理体創造 その2~

元・ドライールド、現:緑の魔境(どう見ても漆黒の大地だったが)に設置する制御管理体を創造するザック。残りの障壁装置も創造して準備は刻々と進んでいた。

そして…魔境のユグドランと制御管理体の交代作戦は…最終段階へと到達するのだった…

━━━━━━━━━━━━━━━


- これで終わり…かな? -


「障壁装置完成っと…」


全ての装置を完成させて、制御コアを組み込み終える。


「制御管理体とのリンク確立…」


全ての障壁装置の制御コアと制御管理体との結び付きを設定。テストモードで動作をチェックさせる。


「…問題なさそうだな」


最初に障壁装置を所定の位置へ設置すべく、目前に置けるだけの数を取り敢えず取り出す。すると…


「あの…」


「ん?」


ゴーレム娘たちが手持ち豚さん…ではなく、手持無沙汰を持て余していたようで…声を掛けてきた。


「それ…先程話していた障壁装置…ですよね?」


「え…あぁ、そうだけど?」


珍しいから見せてくれ…とかかな?…と思っていると、


「私たちに…その…設置の指示を!」


「「「お願いします!」」」


…と、働かせてくれと迫られたのだった。


(ん~…まぁ、今の所…危険は無さそうだし…まぁいいか)


運ぶにしても、そう極端に重い物でもないし、軽くだけど動作させておけば敵性生物から身を守れる物だからな…と思い、許可を出す。設置場所の現状を確認をついでにやって貰えるという打算もある。


「じゃあ…各々の設置場所を指示するからそこに設置して来てくれるか?」


「「「はい!」」」



元気よく返事されたはいいが…設置場所の指示書を用意しなくてはいけないのでその分、事前準備の時間を取られることとなる…。障壁装置に番号を書き込み、指示書にもどの辺に設置するか番号を書き込む作業に手間取り…結局第1陣が出発したのはあれから3時間程後となった…


「はぁ…組織って面倒臭い…」


「そう…ですね」


念話で全て片が付けばいいが此処は魔力が…魔素が濃い魔境だ。いつ何時なんどき念話が通じなくなるか不明な為…指示書は紙で手渡しておく必要がある。運搬と設置役で1名。その護衛に2名を付け、全てのゴーレム娘をストレージから取り出して全員に設置を依頼して…全ての設置を終えるのに、実に更に5時間近くが経過していた…


「はぁ…初期装備然としてたのが1/3位居るとは思わなかったよ…」


「まぁ…マウンテリバーは比較的平和でしたし」


「まぁ…いいんだけどさ…お腹タプタプだよ…ったく」


MPポーションをあれからまた1本飲み干し、暫くはノーセンキュー!…といった感じなザック。1本2本なら兎も角、1日に数本を飲むといい加減飽きるというものだ。


「…ちとトイレ」


「気を付けて」


「付き合おうか?」


シャーリーがにしし…といった顔で付いて来ようとするが…


「覗かないなら」


と同行を許可される。


「おお!…いつもなら「来るな!」って拒否するのに!?」


「まぁ…こんな場所だからな…」


と、シャーリーが連れション…ではなく、護衛として同行を許可される。レムは目を瞑ったまま無言だったが、シャーリーが途中から挙動不審になったので、恐らくは釘を刺されたのだろう…



「障壁装置の設置が終了しました」


漆黒の木々が伐採されて広くなった魔境中心地付近。そこに展開するザック従者ゴーレム娘群。その代表としてイオNo.010…第1部隊・中隊長が報告して来た。一応、統括体ナルや大隊長のイオNo.001は残して来ている。残して来た部隊が…無いとはいい切れない襲撃で全滅する可能性はある。万が一を考えての判断だ(無論、中隊を幾つか残して来た…流石に少人数では不安しかないのもあるし…)


「んじゃ…ユグ」


はいはーい!…んじゃ退くからあとはよろしく!


いきなり、目の前の巨大な山が消える。余りの不自然さに…唐突さに…非常識さに僅かな時間の空白がその場を支配する…


「召喚…」


取り出す、ではなく…召喚という形で「制御管理体」をユグドランが支配していた地に根差す…否、根刺す。その足元は根の如く…深く、深く…地中へと潜り込み…途中途中で棘の如く横方向へ延びて…がっちりと地に足を固定する。そして…物理的にも魔術的にも空間的にも…「制御管理体」という名の魔導装置・・・・はこの地に根刺す。


〈DDCM、固定完了しました〉


「DD…CM?」


「ドライールドの頭文字と最後の文字、制御のコントロール、管理のマネージメントの頭文字を取って、DDCM…だな」


シャーリーが誰ともなく呟いていた疑問に回答するザック。明日になれば本人ですら忘れてしまうだろうが…今は必要と思ったのか説明できる程には知識を与えられていた。そもそも、「制御管理体」という単語すら、不必要ともなれば記憶から薄れてしまうだろう…(ユグはルドランからいわれたので口にしてただけで、意味はよくわかってないと思われるw)


〈DDCM…障壁装置を本格起動します〉


ズズズズズ・・・


不自然な地響きが周囲から…四方八方から響いてくる。全員、不安そうな表情であちこちを見ていたが、一定の圧力と光を感じると…地響きは時間と共に弱くなっていった…


〈障壁展開完了…正常稼働を確認〉


DDCMと自ら呼称した…見た目、金属らしい…似ている物といえば教会の鐘だろうか?…あれより大きく、黒っぽい…やや湾曲した物体から金属が響くような声が響いてくる。声は男性とも女性とも判断がつき難いが…


「んん?」


じ…と見詰めていると、その鐘?がどどん!…と巨大化した。それに伴い、地面が凹んだように…見る見る内にクレーターのように深くなり…だが鐘はどんどん巨大化していく…


「これは…何が…」


起こっている?…と戸惑っていると、再びDDCMが喋り出す。


〈…最適化を完了。ボディの堅牢化と防衛に最適な形状に仕様変更を完了。障壁装置の機能を本体に付与…最内壁の障壁展開を完了〉


(え?…そんなの仕様に組み込んでないんだが?)


と、更に戸惑っているとDDCMから最終報告があった。


〈マスター・ザックに報告〉


「え?…何か?」


〈魔界よりゲート設置の為の魔力を感知。事後報告となりましたが、これを防御し…ゲート設置の抑制に成功しました〉


「お、おう…」


〈また、龍脈の集中を乱し、特異点生成も防ぐことにより、今後1万年程は魔界ゲートの設置を防ぐことにも成功しました〉


「…わかった。お疲れさま…」


〈この地に存在する多量の魔素と龍脈に流れる魔力は、障壁装置の維持とDDCMの維持に役立てると思われます〉


「…」


〈また、遠隔となり多少のロスが発生しますが…マスターのストレージ内にある大容量魔石ラージマギバッテリー充魔力チャージの一助となると思いますが…如何しますか?〉


「え、マジ?…それは助かるけど…大丈夫か?」


存在と障壁の維持には結構な量の魔力が不可欠だ。但し、この地に集中している龍脈から拝借すれば問題無いと思っていたのだが…


〈問題ありません。寧ろ、溢れる程はありますので…〉


…という訳で、僕は充填し忘れていた大容量魔石ラージマギバッテリーに、余裕がある時でいいからと遠隔チャージをして貰うことに…いやぁ助かったわぁ~…


━━━━━━━━━━━━━━━

取り敢えず、数時間程様子を見てからザックたちはユグとルドランを加え…チューザー共和国の港町の南の、崖の上の造船所に戻ることとなった。無論、全員を連れて転移などは無理なので主要メンバーを除き、泣く泣く別れを惜しまれながら…ストレージに入って貰った(いや、収納したんだけどね!)


備考:数えたら200人以上居たらしい…残して来たのは50人弱…合計300人弱の大家族!w(笑いごとじゃないけど)

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