121 その6 ~迫りくる危機、再び…~

外洋船を建造するゴーレム娘たち。ザックたちはチューザー共和国の最東端…港町の南へ数km離れた人の立ち入らない崖の上で作業をしていた。

「まさか、海の傍以外で大型船を建造している筈が無い」

という常識外れをやってこそ、人を欺くことができる。何故なら…普通は海に隣接している場所で船を建造し、そのまま進水させることで移動のコストを抑えるのだから。

「まぁ、僕にはストレージがあるからね」

そう…ザックにはストレージという重さも大きさも関係無い、アイテムボックスの上位版の収納の魔導具があるから…場所は関係無いのだった!

━━━━━━━━━━━━━━━


- あれから2週間が経過… -


「まぁ…こんな所に」


「マスター、こんな所に居たんですね?」


ザックたちの仮拠点…「崖の上の造船所」に別行動をしていた2人と護衛のゴーレム娘たちが現れる。


※「崖の上の●にょ」ではないw


「ジェリコ皇女に…えっと誰だっけ?」


「はい、貴方のお嫁さん(候補)のジェリコですよ?♥」


「ひ、酷いですマスター!」


ザックの返事で対照的な2人の態度に内心、


(しまった!?)


と思ったが、ニコパ顔のジェリコ皇女と泣きながらポカポカ叩いて来る娘にどう対処するのが正解なのかわからないザックは、痛くはないが軽いぐーぱんちでぽかぽかされるが儘になっていた…ジェリコ皇女が


「もうそこまでにしては如何ですか?」


と口を挟むまで…



「あ~…思い出した。サヨリだったな」


「はい!サヨリです!!…忘れるなんて酷いですよ…もう!」


もう!…といってるが表情はにこやかであり、もう怒りの成分はそこには残っていない。何となく、何処か見覚えのあるその表情に既視感を感じるが、今は思い出せない。


ジェリコ皇女も妹を見守る感覚でニコニコとしており、


(姉妹が居るとしたらこんな感じかしら?)


…と感慨深いというような感覚にとらわれていた。一人っ子ではないが久しい間、兄とは離れ離れとなっているせい…だろう。尤も両親が兄妹が生まれた後、子を成さなかったせいもあるが…



マウンテリバーの姉妹ゼロスリーナンバーズは全滅し、サンフィールドの姉妹ゼロフォーナンバーズも時限で消失と…残している姉妹は存在しないと考えていいのかな?」


ジェリコ皇女が到着した夜…統括体ナルとレム、シャーリーとで会議を行っている。ジェリコ皇女も取り敢えずザックに準じる身分ということで参加はしているが口を挟んでは来ない。一応、意見があれば発言は許可されているが…今は見学というか聞きに徹するようだ。


「いえ、ノースリバーサイドに数人だけ残してあります。長距離念話が可能となるようにヘッドギアを預けてあるので何かあれば連絡はして来るように言付けてありますが…」


「あぁ、そういえばこの前転移したっけ」


忙しくてスポーン!と頭から抜け落ちていたザック。NRS救援部隊として送り届けていたのだった。


「えと…あれから何か連絡はあった?」


「実は…」


と、圧縮された文章で何か変化があった時に連絡は来ていたそうだ。纏めると以下略だった。



◎封印されているが水さえどうにかなれば生きていくことに不具合は無い

◎色々と調査した結果、転移魔法以外では出ることも入ることも叶わないと知ることになった

◎この地を護ることにより魔族からの脅威を防ぐことに通じ、託されたからには意地でも護ろう

◎現在、深い井戸を掘ることで水を得ることに成功した

送られた者ゴーレム娘たちには苦労を掛けることとなるが、今暫く滞在の許可を頂きたく思う



彼女たちは専用魔力カプセルが。カプセルが無い場合、普通に食事をさせる必要があるがその場合は魔力カプセルを摂取した時より遥かに能力が低下する…


主に、魔力を行使した身に着けている魔法は効率や威力が低下し、体性能も並みの冒険者並みに下がってしまう。人間と違って脂肪などでエネルギーを溜め込むという機能も無い為、魔力を失えば体も思考コアも動かすことができなくなるので毎日3度の食事は欠かせなくなるのだ。


※一応、魔力タンク代わりの魔力コアはあるが魔力カプセル1つ分の魔力を蓄積し必要に応じて魔力を供給するだけで、今以上に蓄積するとか供給量を調整して長持ちさせるという能力はない


「うーん…じゃあ魔力カプセルを1年分とか送っておく?」


「それもいいかも知れませんが…」


レムとナルは、長期稼働できるタイプのゴーレムを新造して送ってはどうか?…と意見具申する。その場合、女性型ではなく男性型をと。その際、ジェリコ皇女も頷いていた。つまり…


「ふむ…無性だが女性型だと襲われる可能性はある…か」


仕方なくザックはゴーレム然とした無性型のゴーレムを設計し、送り込んだ人数の倍を用意してから念話でこれから送り込むと連絡をした。


…連絡してから2日後。交代の準備ができたと連絡があり、先ずは先に無性型ゴーレムを送り届けた。そして現地で情報交換をし…現地での役割や必須の情報を交換したのだ…救援部隊のゴーレム娘たちは帰還する。



「…お帰り」


「「「お疲れ様!!」」」


外洋船の建造を一時中断し、働いていたゴーレム娘たちが殆ど集まってNRS救援部隊を労っていた。知り合いであろう者たちが背中をべちべち叩いてたり抱き合ってたりと騒がしくも心温まるシーンではある。そして…現地の情報をその中でも共有していたのだろう…次第に険しくなるレムとナルの表情。


「マスター。こちらへ…」


と、大騒ぎの連中から離れ、住居として使っている木小屋ログハウスへと誘う。



「どうした?」


ザックの問いにレムとナルは険しい表情の儘だ。


「…ゲート、ですが」


「ゲート…あぁ、あの消し飛ばした異界…魔界への通路だったよね…それが?」


「ゲートが…復活したそうです」


「な…え?…復活?」


「「はい…」」


封印で外に出られないのにどうやって確認したんだろうか?…と思っていると、


「井戸を掘る時に横穴を見つけたそうで…」とレム。


「その横穴を調査していたら…ノースリバーサイドの外に通じていたそうです…」とナル。


「つまり…そこを通じて外を調査したって訳か…」


「「はい」」


そんなことが外部に漏れたら…そう思うと今まで念話連絡でも伝えられなかったと。


「ま…それは兎も角、だ。送り込んだ連中は上手くいってるのかな?」


「え…えぇ、まぁ。今まで通りとはいきませんがそれなりには…」


「ダークエルフたちとしてはがっかり感が深まった…と苦笑いしてたらしいですが」


レムとナルは、ザックのいきなりの方向転換に戸惑ったが、取り敢えず聞いた話を伝える。


「そっか…まぁ性的な支援をした訳じゃないし。役に立ってるならいいことだ…」


今回送ったゴーレムは力仕事も魔法的な支援もできる万能タイプだ。手先の細かい作業も見た目のゴツイ指先では期待できない…と思わせて、指先から出る小さい指マニュピレーターで驚く程に細かい作業もこなす。


※指1本から3本の細く小さい金属指が出て、片腕辺り合計15本の指で人間以上の細かい作業をこなすようになっている。人間と違い、並列思考・並列作業がこなせる為、人間以上の作業量をこなせるように設計してある…例えば1体でポーションの調合作業を複数人数分、正確にこなせる…など。


後に、ノースリバーサイドの封印が解け、ダークエルフたちが自由に行き来できるようになった頃に大変感謝したという話しもあるが…それはまた、別の話である…


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再び魔族の…魔界からの侵攻の危機が迫る人類絶対防衛線。果たして、今度はどうなるのか…肝心の守護神はマウンテリバーの総意で追放済みだZO!(既に滅亡してるけどもw)


備考:何でマウンテリバーを避けて防衛線の隙間から移動して他の街を襲わないのか?…どうにも、マウンテリバーを放っておいて、他の人類領域を襲うという考えが存在してない模様…本能で「この忌々しい街を放って他に攻め込むなんて考えられん!」…と思ってる模様w(過去にかなりの因縁ができてる模様…今となっては知る術が無いけども!)

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