103 その4 ~ゴーレム娘に負んぶに抱っこな大人たち~

異界ゲートを消し、準備を終えて出立の日を迎えるザックだったが…

※前書きじゃなくて今話のあらすじ(しかも中途半端でザックりし過ぎ)なのは気のせいってことでw

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- 出立の日 -


「別に見送りに来なくても…」


何故かこっそり行こうとしてたのにダークエルフの重鎮数名に見送りに立たれて困惑するザック。尚、早朝でまだ太陽がその天頂を覗かせたくらいでようやく明るくなって来たか?…といった頃合いである。


「まぁまぁ…じゃ、良い旅路になるよう祈っているぞ?」


「はい!お父様行って参ります!!」


「…ちょっと待て。何でジェリコ皇女がこっち側に居るんだ?」


ちょっと近過ぎると思う程の距離感のジェリコがザック側に立っていれば誰でもそう思うだろう。流石にダークエルフの皇族の…しかも現帝王の娘たる皇女だからか、レムたちも口を挟めないでいたが…


「あれ、聞いてませんか?」


「ああ、何もなっ!」


イラついて少々投げやりな言葉使いになったのも無理はない。面倒事を避ける為にわざわざ早朝を選んで出ようとしていたのだから…


「婿殿…ということだ。娘を宜しくな?」


「は?…婿?…僕、ダークエルフじゃありませんが…」


誰も婿入りを志願したことも頼まれたこともないんだが…と、ポカンとしていると。


「新天地で結ばれて新たなダークエルフ族の拠点を作る…っていう表向きの理由だが、まぁ~…ジェリコを狙っている輩が居るのでな…」


「娘を守るのが親の務めでは?」


ジト目で皇帝を睨むと、


「では、後は若い者たちで頑張ってくれ…では行くぞ?」


「「「はっ!」」」


と、さっさと逃げ帰るダークエルフたち。睨んでいたら案の定転移で消えてったので…予め魔導具とかマーキングとか用意してたんだろう…準備万端な…はぁ。


「…ご迷惑でしたか?」


ジェリコ皇女が珍しく?しおらしい態度で訊いて来るので、


「いや…ちょっとびっくりしただけです…よ」


だけど、


(婿とか嫁とか…一体何歳差婚だよ?)


…と思いつつ。実際にジェリコが何歳なのか解析してみる。



【ジェリコ元皇女の解析結果】

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◎名 前:ジェリコ

◎種 族:ダークエルフ

◎年 齢:167歳

◎サイズ:90 - 60 - 81

◎体 重:55kg

◎詳 細:元皇族。現在は血筋のみで平民ダークエルフとなっている。人間とも交配は可。子はハーフとはならず、ダークエルフ、エルフ、人間の何れかになる(これにより、エルフから派生した種族ということが伺える)

※現状で交配しても子を成すには少し早い。後3年は待った方がいいだろう…

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(えっと…)


ナニコレ…つか詳細の下の一文…余計なお世話だYO!


…と思いつつ、徒歩で移動するつもりだったけど(従者ゴーレムが一杯居るし、馬車で移動しようとすれば嫌でも目立つし…)余り外での徒歩移動は慣れてなさそうな皇女様…いや、元か…が居るので馬車を出そうとしたその時(ちなみに此処はマウンテリバーから出て大体1kmくらい離れた辺りの街道だ)


「はぁっ!はぁっ!はぁっ!………そっ!そこのお前らっ!!」


と、かなり息急き切った大声で呼び止められる。


「何だよ…ようやく出発できると思ったら…」


と振り返り、


「誰…だ、このおっさんたち?」


と、何やら偉そうなおっさんズが今にも倒れそうになってぜーぜーと苦しそうになっていた。


「あ~…(探索者ギルドの幹部たち)と、冒険者ギルドの幹部たちと…領主の部下たちですね」


レムとナルが思い出すようにして説明してくれる。ちなみに接点のある者しか覚えがないのだろう…レムは「探索者ギルドの幹部たち」しか声に出してないが(苦笑)


「そっか…お見送りですか?…朝からお疲れ様です。…おい、体力回復薬スタミナポーションを差し上げてくれ」


「あ、はい!」


名前は不明だが下っ端っぽい何処かの小隊員のゴーレム娘たちがアイテムボックス(腰に下げた小袋状の全隊員に配布してる汎用品)から小瓶を幾つか取り出し、未だゼイゼイと肩を動かしているおっさんズに手渡している。あれは最小効果の物だし複写品だからここで渡しても問題は無い。まぁ…同効果の物をマウンテリバーで求めると相当高い買い物になると思うけど?


「あぁ、すまないな」


「ありがとう」


などと礼をいって飲み干している。暫くすると落ち着いたのかおっさんズが


「ん゛ん゛っ!!」


と咳払いをしてからこちらに正面を向き…睨みつけてくる。


(あれ?…何で怒ってるんだ?)


と思ってキョトンとしていると、おっさんズの代表者らしいおっさんがきっぱりとこう叫ぶ。


「マウンテリバーの裏切り者「ザック」に告げる…今すぐお縄に付け!…さもなくばこの場で処刑することになる!」


…と。


「は?…何でそうなるんですか?」


いや訳がわからない。昨日までにちゃんと引継ぎやら色々を済ませたんだよね?…と、ナルに視線を向けると、


「はぁ…やはりこうなりましたか」


と、とんでもない発言をしてくれやがる!


「ななな…何で!?…ちゃんと引継ぎやら国を出ることは説明したんだよね?」


説明して納得したならこうはならんだろ!…と思いながら返事を待っていると。


「ちゃんと説明はしましたし、今後の方針やら諸々も説明したんですけどね?」


「…元々このゴーレム大隊は異界ゲートから溢れてくる魔族の尖兵やら魔物からマウンテリバーを防衛する為に創り出したモノだとも…。そして今、その脅威が去った今、必要無いだろう?…ともな」


レムがやや凄みのある声で説明口調で語り出す。


だが、


「脅威が去って必要が無くなったなら要らないとはならんのだ!…今後の警備計画やら何やらに、既にそこな娘たちは組み込まれてるのでなっ!!」


と、別のおっさんが頭をカンカンにして怒鳴ってきていた。いや、組み込まれてるって、誰もんなこと許可した覚えはないんだが?


「そうだ!…街の復興計画にも必要だからな。人間はすぐ疲れたと抜かして休憩を取りたがるが、娘たちはよく働いてくれるからのう…」


そらゴーレムだからな。でもパーツの摩耗はあるから普通にメンテ休憩は必要なんだが?…動けなくなる程消耗したら、オーバーホールとかで人間より長い休憩というか…全身の状況を診てからの、最悪全部バラシて総パーツ取り換えとかになるし。そうなったらにゴーレム技師に頼むとかすれば1箇月以上は掛かるし法外な金が飛ぶんだけど?…まぁ、僕に掛かればほぼ一瞬で元に戻せるけど。


※素材は土ですが金属並みに固まってるので分類上はアイアンゴーレム系に分類されます。まぁ、内骨格に外装に装甲とスキンとか…外見は未来的なアンドロイドみたいな感じですかね?w(マウンテリバーに戻って来てから、要望がある者に対してだけ仕様変更を施してあげたので以前より人間に近い外見に換装してあるのだった…その際、健康診断みたいに内部スキャンをしてメンテも施したのでゴーレム娘たちからの愛が重くなった副作用は推して知るべきだろう…(苦笑))


※尚、新仕様に換装した娘たちは、余程近寄って見ない限りは人間の娘と然して変わらない為…下心を持つ野郎共に襲われて返り討ちに…ということで、女性被害が減ったとの統計データもあるとかないとか…w



「それって勝手に人の持ち物を使って計画に組み込んだだけじゃないんですか?」


「勝手に…」


「人の持ち物って…」


「君ぃっ!…この女性たちを「持ち物」だとぉっ!?…何を女性蔑視な台詞を堂々と!」


「…何畏まってるんです?…彼女らは「僕」が創り出したゴーレムなんですけど?」


そして一斉に片腕を付け根から外し、ドサドサと地面に落とす彼女たち…って、それ無言でやってると凄い怖いんですけど?


「なっ!?…ぎぎぎ、義腕だろう!…こんなことの為に彼女たちの腕を切り裂くなど…」


おっさんがそういうと、落とした腕を再接続して…今度は首を一斉に


がぽっ!


と外して上へ持ち上げる彼女たち。はっきりいえば…軽くホラーな画面えずら彼らおっさんズの前に広がっていた…見える範囲で数10人の女性型ゴーレムの頭部を持ち上げている異常な光景が広がっているのだ…


※人間ではないので首を引っこ抜いても死なないとはいえ…ショッキングな光景であるので心臓が弱い人にはお見せできないと思われる…


「な…な…な………」


口から泡を吹いて倒れる代表のおっさん。う~ん…心臓が弱い人が居たのか…そんな代表で大丈夫か?



- 無計画な人たちのせいで出立が遅れそう… -


「僕が彼女らを連れて行くと困るっていうんですか?」


「「「そうだ!」」」


「大いに困る!」


「だから出て行くというのならば…残して行け!!」


「残すねぇ…彼女らが故障したら誰が直すんですか?」


「直す?…ハン!…誰も故障なんかしたことないだろう?」


「機械じゃないんだから故障なんかしないだろ?」


「そういっておいて俺たちから奪う気だな?…この裏切り者をさっさと追い出せ!!」


…てんで話しにならないというのはわかった。いや、前からナルから聞いていた状況を鑑みるに、こいつらはゴーレム娘たちを永久稼働可能なアーティファクトか何かと勘違いしてるようだが…こいつらは外見みてくれがちょっとだけいいだけの汎用ゴーレムだ。無茶な稼働を続ければ故障もするし魔力を充填しなければ動かなくなる…普通のな(一般的なゴーレムと比較すると普通でも何でもないが?w)


「はぁ…話しは平行線ですね」


「わかったなら彼女たちを引き渡せ!…無論、全員をだ!!」


「はぁ…寧ろ話しが通じない蛮族ですか」


「「「なっ!?…蛮族だと?…このガキめがっ!?」」」


ずい…とレムがザックの前に立つ。流石に今の言葉の凶器には我慢がならなかったのだろう。


「な…何だ、このメスガキが…このガキを庇おうというのかっ!?」


既に歯に衣を着せぬ物いいとなっていた。怒りが言葉を飾らなくしているというか?…レムだけはもしもの場合に備え、腕や首を取らないでいたこともあり、おっさんズからは人間と認識していたのかも知れない。尚、シャーリーは増援があるかも知れないと、早々に姿を消してから上空に退避していた。


「今すぐ街へお戻りになった方がいいかと…」


と一言。そしてそんなタイミングでマウンテリバーから駆けて来る人間が1人…いや3人。全速で駆けて来たらしいギルド職員と思しき人間と護衛の冒険者だろうか?…が2人。おっさんズたちの集団側に辿り着くと、こちらに聞こえない声量で何やら話し出すギルド職員。


「何かあったのか?」


レムに訊くと、


「そろそろ1年経過しますしね…」


あ…と思い出すザック。


(つか、時限でゴーレム創ったから一気に消えるんだよな…また創ってくれっていわれるかもだけど…このタイミングでサンフィールドに戻るとまた2箇月以上は移動が遅れるよなぁ…)


仕方ないと念話で命令する。


『脚に自信のある者はこのまま付いて来い。そうでなければ…』


そして機能停止命令で動きが止まった者をストレージに収容。主に全体の9割が消失し、残った1割…殆どが消耗の少ない中隊長以上の者が残る。ザックは続いて馬車をストレージから取り出し、そこにレム・シャーリーと一緒に乗り込む。ナルとジェリコ元皇女、そして大隊長のイオNo.010も一緒だ。


『全員集結。東の「チューザー」共和国へと出立する!』


御者には何故かイワンNo.011が就いていた。まぁ、レムが僕の傍に居た方がいいだろうと自ら御者に志願したようだけど…


ごとごとと音を立てて移動を開始する馬車に、おっさんズの1人が気付いて


「なっ!?…待てっ!待つんだっ!!」


と喚いているが、おっさんズは冒険者2人と職員の青年1人に引き摺られるようにしてマウンテリバーへと去って行く。


「はぁ…ナル。サンフィールドの彼女たちの反応は?」


「ある時期を境に思念波が弱くなってましたが、今日はさっぱりですね」


矢張り、消失したんだろう。


「あちらも消える1箇月くらい前には消失の期限を事前報告して備えて貰うようにと言付けてあったんだけど…冗談と思われてたのかなぁ?」


ミランダ婦人にもサンフィールドを離れるタイミングでもう1度注意というか警告はしておいたんだけどね…優秀過ぎたせいでべったりだと消失した瞬間に困るのは自分たちだというのにね…


取り敢えず、飛び火したら困るので僕らは急いでマウンテリバーを後にするのだった…え?小屋とかゴーレム娘たちの休憩所?…別に建物自体は残しても困らないので、残して行くとヤバそうな物だけ撤去して、地上の建物だけはそのままにしてあるかな?…後、路銀も多少はあった方がいいので土地と建物を売却しておいたよ。今日から他人名義の土地と建物になってる筈。


ゴーレム娘たちの休憩所の地下のプラントなどは勿論残して行くとヤバそうだったので、再利用もできるだろうし…地下1~2階はそのまま土で埋め戻しておいたよ。僕の小屋も地下は撤去して回収。土で埋め戻ししておいた。隔壁なんかはオーバーテクノロジー過ぎるだろうしね!


…まぁそんな訳で、異界ゲートを潰してから慌ただしかったけど…まぁ、向こうの国で落ち着いたらお世話になった人たちに手紙くらいは送ってもいいかな?…まぁ、まともな経路では送れなさそうだけど。検閲とかあるからね…


「さて…東の「チューザー」共和国ってどんな国かな?」


そこまで辿り着くまでに幾つかの村とか町とかあるだろうけども…取り敢えず、僕の出身村とは方角が違うから寄らなくて良かったのは助かったかな…


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ザックの出身地の村は北北東の山を幾つか抜けた先。割と寒い地方です。これから向かう東の「チューザー」共和国は方角的にはやや南よりの東。海も近い(国の端っこは海に面しているけど首都は内陸となります)ので比較的温暖な気候…となるかな?といった感じです。


備考:次は名称未設定の村ぁ~!(ちょっ!w)


※マウンテリバーに連れて来たフォーナンバーズは勿論消失しないようにコアのデータを新しいコアに写し替えてボディもより頑丈な物を創っておいた。これでマウンテリバーの新仕様ボディと同等品になったので喜ばれて…俗な言葉で飾れば愛が重くなっていたってことに…orz

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