102 その3 ~異界ゲート・消失~

ノースリバーサイドへ赴く許可を得て、ザックはダークエルフの長…皇帝ジェンドゥに謁見…という名の…内容的には今まであったことを説明し、他国へ移住する意を打ち明けたといった所か。

ジェンドゥは話しを聞き、何か思い付いたようだが今はまだ…と秘すことにし、ザックの背中を押して退席する。謁見?の場である離れを出る時に、皇帝の付き人からも感謝の言葉を頂いたが…振り向いた時には既に離れへと姿を消す所であり、「そういや名前すら知らないんだよな…」と思ったが。

それから1箇月の時が過ぎ…いよいよ異界ゲートへの準備が終わる。そのタイミングで全ゴーレム娘たちへ今後の方針を示した情報を発信した訳だが…その中のある一文が波紋を広げ…ゴーレム娘たちのマウンテリバーへの態度が僅かづつではあるが…早い話、好感度が下がって態度が硬化していったようだ…

※恐らくマイナスにはならないけど「知らない赤の他人」に対する態度くらいには変わった模様w

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- 異界ゲート -


「あれだな…」


以前のようにいきなり転移して…ではなく、マウンテリバーとノースリバー周辺の野良っぽい魔物をぶち倒しながら…要は掃除しながら異界ゲートへ到着する。従者ゴーレムの街中を巡回警備に最低限残してから…数百名の大部隊での殲滅戦を繰り返して来た訳だ。


※全部書いてたら何10話にもなりそうなのでさくっと割愛しましたw←綿密に表現しながら書くと、1戦1戦で数話づつ…あ、やべ、全部で100話越すわw(極端過ぎだろ!)


幸い、全損する程の個体が出なかったので総数に減少は無かった。逆に倒した筈の魔物が立ち上がって来て、仲間になりたそうに見つめて来て…何故か仲間となって重い荷物を運ぶ重労働を買って出てくれたので助かるといえば助かるのだが…いいんだろうか?(逆に食べ物を消費する僕以外にも増えた訳で、狩りをする手間が増えたといえばアレなんだが…どーせ戦闘して斃した相手から得られるお肉ならどんどん増えるので捨てる手間が減ったといえば…無駄が減ったともいえる…か?)


※トドメはささずにさっさと行こうとしたタイミングで発動するポ●モン現象?w←魔物ではないが強い動物を無力化しようとした時など。強い動物は基本的に知恵も付いてることが多い模様



「どうしたらいいと思う?」


一応、破壊でも封印でも…どちらにも対応できるように魔導具は用意してきている。


「マスターのお好きに」とレム。うーん…基本的に重要なことはこちらに丸投げなんだよな…脳筋過ぎるっつーか…


「あたしは…封印の方がいいんじゃないか?って思うけどね?」とシャーリー。


「何故?」


「んーっとねぇ…いい感じですぐには解けないけどいつかは解けちゃう封印でね?」


「うん…」


「んで、マスターが死んだ直後くらいに壊れて、世界が魔族に蹂躙されちゃうの!」


「ちょ…そんなことしたらみんな困るだろ!?」


「えー?いいじゃん…マスターを追い出した連中なんか滅んでも!」


ちなみにシャーリーは浮遊して目の前で語ってるのだが…珍しく。


「ということは何か?…僕が居なければ世界がどうなっても「うん♪」…って、はぁ…」


僕はあくまでもマスターが第一である目前の小さな妖精型ゴーレムシャーリーを見て溜息を吐く。


「まぁ…僕を第一に考えてくれたんだろうけどな…」


シャーリーは「それが何で悪いの?」と首を傾げる。


「人間にはさ…あ~面倒臭いな…」


と、説明しようと思ったが人間のしがらみなんかを知らない者に説明できる自信は無かったし、ましてや、まだ成人してまだ(恐らく)1年くらいしか経過してない自身が説得しても納得はできないだろうというのもあった。


…と、いつ生まれたのか覚えてないザック、17歳の春だった…ひゅぅ~~~~…


※貧しい村なので誕生日会というのもなく、その年の始めに10歳のおざなりなお祝い(村の10歳の子供全員をまとめてやる行事)をしたっきりだったので、覚えてる訳もなく…(聞かされたこともなかった)


※その時についでに固有技能スキルの判定も行うが判定をする神官?は気付かれないように行事に混ざってこっそりとやる為に有用な固有技能スキルを持つ子供と家族くらいにしか知らされない為にそれ以外の村人は知らないという…(当然、ザックには誰でも使える「生活魔法」しか備わってないとわかった為に、わざわざ報されることもなかった訳です)



「・・・」


暫く無言で前方に浮かんでいる異界ゲートを睨んでいたザックだが…


「よし。破壊しよう」


と発言。途端、異界ゲートから魔力が上昇する反応が現れるが…


『設置完了しました』


との念話連絡があり、すぐさま離れるように命令。設置に携わっていたゴーレム娘たちが避難した直後…


カッ!


…と眩しい光が放出されて、その直後には異界ゲートが消失する。


「うん、成功したな」


ザックが一言放つと、踵を返して歩き出す。


「「「…」」」


暫く唖然としていた従者ゴーレムたちだが、マスターであるザックが離れて行くことに気付き、慌てて後を追う。そして…


「あの…唯眩しい光が出ただけですが…どういう理屈で?」


代表してレムがザックに問う。レムの予想としては…何かのエネルギーを使ってゲートを破壊する。それにはそれなりに離れる必要があると思っていたのだが…まさしく脳筋な考えだがw


「あ~…あれね。異界ゲートの魔力を利用してゲートの唯でさえ不安定な力場を乱しただけだよ。まぁ…あちらから慌てて転移しようとしてきた魔族か何かがいたようだからね…作用する魔力が必要以上に供給されちゃったから…眩しい光となって発散しちゃったんだろうね?」


不安定なゲートを固定している力場を乱してゲートを閉じる。唯それだけの魔導具を設置して発動させただけなので、余り離れなくともこちらには影響が無い筈だった。だが、転移機能が動くと安定させているだけの力場より魔力が多くなる。すると力場をかき乱す力も上昇する訳で…簡単に発散させるには光を放出するしかない。それなら目蓋を瞑るとか腕で光を防げばいいだけだからだ。


「…」


振り返って異界ゲートのあった場所を見るザック。解析が発動してるようで、魔眼がやや光っているように見える。


「あれなら向こう数百年は開けないだろうね…此処だけが安定してゲートを開ける場…って訳じゃないだろうけど」


此処は龍脈が安定して通っている力場パワースポットだ。ゲートを安定して開くには常に魔力が安定して…それも一定以上の強さの魔力が流れている必要がある。魔族は魔素を呼吸して生きているとも聞く。それこそダークエルフたちが必要とする量より多くの魔素を…


「…まぁ。僕が死んでも数百年は大丈夫。他の大陸にも居るかも知れないけど…マウンテリバーやサンセスタの在るこの大陸は安泰あんたいでしょ?」


ニコっとザックは微笑むと、再び歩き出す…マウンテリバーへと。


━━━━━━━━━━━━━━━

これでもう思い残すこともなく、万事丸く収まって他国へと移住ができる…そう信じていたザックに人々が思った通りに事を通してくれる筈も無く…いやはや、人間ってのは愚かな存在なんですねぇ…


備考:要らない(使えない)と思っていた人間(ザック)が偉業を成していざ他へ行こうとすると…

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