88 その4 ~ゴーレム娘の新装備~

ザックの創造したゴーレム娘たち…子供の身ではあるがザックが創造した娘たちは自分の子たちといっていい存在…それを…思い出すと誰彼構わず暴力を振るいそうになるので自重。

安心して寝泊まりできる屋根のある住居をと頼まれたので創る。サンセスタ組とマウンテリバー組とで分かれてしまったけど…勿論、それぞれ自由に住んでいいとは言付けてある。管理者は統括体ナルに丸投げではあるが…何?…頭がパンクしそう?…まぁ、ガンバレ!(ナル「酷っ!?」)

…ということで、状況は把握した。これからマウンテリバーの責任者たちの元へ被害報告を伝えに行く。人権が無くとも…僕の持ち物を害したことには変わらない…

━━━━━━━━━━━━━━━


- 被害報告 -


「はぁ…」


領主の館を出ると同時に溜息を吐くザック。


「まさか、あそこまで分からず屋だとは…」


ゆっくりと振り返り、睨む。


「何が…「破損したゴーレムは動かずに破棄処分した訳じゃないんですよね?…ではその冒険者たちを処分することはできません」だよ…」


破損したら修理するのが当たり前だろが!…と悪態を付くが…


現行法では証拠が無ければ処分できないらしい…そら、感情も無い機械然としたゴーレムなら現状保存が基本だろうが…


「彼女たちには感情があるし、苦しんでいたんだ…放置なんてできないだろうが…」


機能停止してアイテムボックスに収容していたが、取り出して機能停止解除した時…痛みで歪んだ表情を見て…ゴーレム技師でも無感情に放置できるんだろうか?…僕には理解できない。それとも…僕の方がおかしいんだろうか…


(確かに、汎用ゴーレムとして創造したんだけど、レムたちに比べて感情の起伏は乏しい筈なんだけど…)


確かに苦しんでいた。


直したのは間違い無い筈だ。


しかし…確かに暴力を振るった冒険者たちは裁けないという…


「…人間なら、すぐには大怪我は治せないしな…証拠となるんだろうけど…」


ゴーレムは人間ではない。修理すればすぐにでも復帰できる。だから、破壊行為を裁けないと?


「おかしいだろ…それ」


ザックは憤慨しつつも、


(ならば、暴力を振るって来た者には…相応の報いを受けて貰うしか…ないよね?)


と、昏い笑いを浮かべるのだった…


※別に闇墜ちした訳ではありませんw



- 子供たちの為に… -


「「「え…これって…え?」」」


1週間の間は特に問題は発生しなかった。その間にザックは色々とやることはあったが…可能な仕事は他の子に任せ、1週間自室に籠ってあるアイテムを創造していた。そして、集まれるゴーレム娘をかき集めて…寄宿舎の前の庭に集まって貰っている。そして…


「こ…こんな物を頂いても宜しいのですか?」


「えへへ…マスターからの贈り物…えへへへへ…」


「わっ!…わたしは一生、マスターにこの身を捧げます!…一生仕えます!…だから、その…お傍に…」


「「「こらぁっ!…抜け駆け禁止ぃっ!!!」」」


…と、大盛況だった。ちなみに、好みもあるだろうからと、ネックレス型、指輪型、腕輪型、ブローチ型など…幾つかの種類で創った。まぁ…御守りの性能を持つアクセサリーをね…


「いや…結婚指輪じゃないからね?…できれば左手の薬指以外に付けてくれるといいかなぁ…あはは」


と、苦笑いである。一応、身に着けるタイプで指やら腕やらに装着するのはオートフィットの魔法も追加で掛かっている。アンクルタイプも足先から足首まで通すと太ももかふくらはぎか足首より少し上か選択肢が出て、指定した部分まで移動してフィットするようになっている。腕輪タイプも同様で前腕か上腕の2通り指定箇所がある。前腕なら腕時計などを付ける辺り、上腕なら通常の腕輪を装着する辺りになる。


全て同性能で…主な機能は攻撃者から装着者を防護する結界の機能を有する。ゴーレムの為、毒殺は無効なので防毒は無し。代わりに属性魔法に依る攻撃魔法を無効化、或いは減衰させる機能もある。流石に攻城兵器並みの攻撃は無効化は無理だが…一個人が発生させる魔法攻撃や物理攻撃ならほぼ無効化が可能だろう。但し、持続時間は一瞬の攻撃ならばその都度防御して…凡そ1時間はもち、人間が持続できる連続攻撃ならば…それでも20分程度は防げるだろう…と思う。


(流石に何十人と押し寄せて攻撃してくればその限りじゃないと思うけど…)


その場合は僕に魔力波で危険感知を報せるようにしてある。魔力波の妨害なんて、余程魔法に精通してる魔法使いでもなければできないと聞くし…


(まぁ…対人装備として創っちゃったけど、これは魔物に対しての防備でもあるしね…)


時間制限はあるけど、防御力向上としての側面もある。ザックはゴーレム娘たちに配り、大変感謝されて…抱き着かれたりして困るのだった。


「マスター?…顔がニヤケてますがぁ?」


「ほ、ほほほ、ホットケ!」


「はいはい…」


中には感情が爆発してキスしようと顔を寄せる子も居たが…


「はい!そこまで!!」


と、シャーリーが飛びついて邪魔をしてたり…


「何だかな…」


だが、満更でもないザックがそこにいたりw


「はいはい…残りは私が渡しておきますので…」


とレムが代りを打って出て、


「「「ぶーぶー!!」」」


とブーイングの嵐であったが…


「…何かご不満でも?」


と、背後にナニかを幻出させて威嚇するレム。


「「「キャーッ!…ナニアレー!?」」」


「こ、これが…噂のスタンドって奴か…」


と、恐怖に墜とされるゴーレム娘たちと感嘆に呻くザックであった…っておい!w



「…で、テストしたの?」


「え?…何の?」


「だから…配ったアレです!」


「いや…してない」


という訳で、事後であるが配ったアクセのテストである。


「では僭越ながら私が装備します」


「あ、はい」


「ナルさん?」


「はい?」


「この剣で斬り掛かってみてください」


「へぇっ!?…わわ、わたしがですかぁっ!?」


「えぇ…問題ありますか?」


渡された剣を鞘から抜き…地面に鞘をぶっ刺してから大上段に構えるナル。それを見届けたレムは右手の人差し指に指輪型の防護アクセを装着し、無事に稼働を確認してから頷く。


「あ、いえ…で、では逝きます!」


「はい、どうぞ?」


自然体で立っているレムに、ナルが助走を付けてから斬り掛かる!


「やーーーっ!!!」


がきぃん!!


「くぅっ!?」


剣はレムに当たらずにやや離れた位置で弾き返される。統括体という余り体力や腕力を必要としない仕事を受け持っているナルではあるが、その膂力は並みの人間を上回る。加えれば下っ端といえる汎用ゴーレムの性能を上回っているのだ。冒険者のランクC熟練冒険者と同等といえば性能が如何に高いかがわかるだろう。


「もう1回です!…てやーっ!きえーっ!ちぇすとぉ~!!!」


がきぃん…がききぃぃん!…ばきぃ~んっ!!


振るっていた剣が余りにも乱暴に扱われたせいで折れ飛ぶ…


「あ…」


ひゅるるる…ぽて


剣先が折れ飛んで明後日の方向へ…ザックが慌てて回避する!


「ちょおっ!…うわぁっ…危なっ!!」


「マスター何やってんです?」


シャーリーが呆れたと突っ込んで来る。


「いや、まさか折れるまで剣を振るうなんて思ってなかったからさ…アクセの性能も気になったし…」


自室に籠ってた筈のザックが様子を見にやってきていて、シャーリーが呆れている形だ。


「マスター?…私が検証するので…危険だから引っ込んでいてといいましたよね?」


((いや、いってないいってない))


ナルとシャーリーが無言でシンクロし、首と手を左右に振っていたw


「あ…え…そうだっけ?」


とザックが首を傾げていたが、有無をいわさずにザックの小屋へとレムが手を引っ張って行く…


「あれだね…」


「えぇ…もう無意識に嫁さん女房といいますか…」


「世話焼きのお姉さんかもよ?」


「「うーん…」」


などとナルとシャーリーが唸っていると、


「何いってんですかっ!?…さ、さっさと性能の検証を続けますよ!!」


と、顔を真っ赤にしたレムがテストを続行しろと照れ隠しに叫ぶのだった…


━━━━━━━━━━━━━━━

一応、結果としては十分だろうということで。但し、使い捨てになるので一度でも防御能力を発動したら申請して再配布を受けろとのお達しでした…


備考:この装備の配備で破損被害は激減したという…

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