87 その3 ~ゴーレム関係のあれこれを創造~

収支を全然管理してないと聞き、サンフィールドでの収支も合わせて計算することになったザックたち。

マウンテリバー側は赤字で、金貨140枚と銀貨151枚と銅貨2509枚が赤字として計上されていた。サンフィールド出張費用は黒字で、金貨136枚と銀貨563枚と銅貨1309枚。合算すると銀貨1枚の黒字となった。一応、税金を抜いた額なのでそっちは計算しなくてもいいようになっている。

2人ナルとレムはがっくりとしていたが一応へそくりというか確保してある資金はある…が、数百体のゴーレムを擁する者としては不安なのは確かだ…赤字の原因は破損したゴーレムの修理費用…要は維持費用が嵩んでいるということらしい。魔力カプセルも思ったより費用が嵩んでいるとのこと。

…という訳で、修理工場兼、魔力カプセル生産プラントを創ることにした。いや、マウンテリバーで金を回した方がいいと思って外注にしてたのに、赤字になるんじゃね…ってことだ。できることは自分たちでやった方が経費が掛からないのだし…

※金は天下のまわりもの…といっても赤字だらけじゃやってられないのもある(苦笑)

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- 赤字返上のために、その1 -


「…っと。こんなもんでいいかな?」


ガワを創る。工場然とした建物だと物々しいので地上部分は増えたゴーレムたちの住居とした。肝心の工場部分(魔力カプセル生産プラントと修理工場という名のゴーレム専用医務室だ)は地下に創る為に地下を2階まで掘り、頑丈な壁で囲った後に内装を整え、例の砂から魔力カプセルを生産するブラックボックスとカプセル製造ライン、梱包装置までをセットする。


後、専用の単純労働ゴーレムを2体配置して梱包された魔力カプセル10個入りの箱を自動販売機に封入作業と適宜魔力カプセル生産のオン/オフを制御して貰う。一応2交代制で12時間づつ働いて貰い、片方は休憩用のメンテボックスで寝て貰う。これで無人でも問題無いだろう…ちなみに魔力カプセル生産場と自販機は地下2階になる。


地下1階はゴーレムたちの人間でいうところの医務室となる。尤も、人間用ではないので外部の人たちはシャットアウト…侵入不許可となる。外装が傷付いた程度なら診察室で処置をし、欠損ダメージや欠損していなくとも内部まで破損している以上の破損の場合は奥の修理ゾーンで修理となる。


躯体の大部分の欠損ダメージでもパーツ交換で対応できるが、そこまで破損していた場合は僕の「耐久値再生デュラビリティ・リペアー」の方がコスパもいいだろうし…呼び出されて対応することになっている。そんなに大量に出ないだろうということで最奥の多段ベッドで寝て待って貰うことになる。床数は5×6段で30(横に1列に5つベッドが並び、それが上に6段あるって感じ)…再びモンスタースタンピードでも発生しない限り、これで足りなくなることは無いだろう…と思う。


地上1階と2階はそのままの床面積でゴーレムたちの住居スペースとなっている。一応4人の相部屋×8の2階で64人までだ。サンフィールドから連れて来た面々を収容して、少しだけ空き部屋があるって感じだが…一応3階にも空き部屋を用意してるのでそれ以上増えても対応は可能だ(内装は全然揃ってないが)


最後に4階だが…こちらは屋上で陽光から魔力を吸収する魔力プラントとなっている。尤も、魔力タンクは屋上ではなく地下3階に納めてある。暴走しても大丈夫なように地下1~2階より更に頑丈な隔壁で囲ってあり、外部からの干渉もされないようにもしてある。魔力伝導ケーブルも屋内の中央に設置してあり、矢張り外部からの干渉を最小限にしてある。


(…なんて知識も生活魔法の神さまの加護で得た物なんだけどね…どんなモノを創ればいいか、考えただけで得られる知識。普段はさっぱりだし訊かれても思い出せないんだけど、創造する段階になって溢れて来る知識。つまり、これはそういうモノなんだろう…)


だから、創造して暫くは頭に残っていても、関係ない時に


「どうやって創ったの?」


と訊かれても…愛想笑いするしかないっていう…だって覚えてないんだもん。仕方ない…そりゃ、どうしても必要であれば思い出すこともあるんだけど。



「ってことで皆にはここで生活して貰うことになる。怪我した時や飯…あー、魔力カプセルの自販機も用意したんで…地下にある施設を利用して貰うことになる」


サンフィールド勢とマウンテリバー勢のゴーレム娘たちを新築のゴーレム寄宿舎の前に集まって貰って説明しているザック。一応、建前上は「ゴーレム寄宿舎」としている…


「マスター!」


「はい、君」


「私たちにはその…寄宿舎とか宿泊施設は無いんですか?」


「え?…と?」


あちこちからぽつぽつと現状のゴーレム娘たちの宿というか、寝泊まり?の現状が発言があり、纏めると以下略だ。



【山川勢ゴーレム娘たちの現状】

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◎最初こそは衛兵たちの宿泊施設を間借りして寝泊まりしていた

◎ある程度経過し、「ゴーレムなんだから寝なくてもいいんじゃね?」という声が出て…要は寝泊まりしていた宿泊施設を追い出された

◎巡回の勤務時間以外での休憩の場が消失し、各々がザックの小屋には寝泊まりは不可能…ということで3交代でザックの小屋かその外で寝泊まりし、あぶれた者で資金に余裕がある者は人間用の宿屋で休憩を取っていたが…

◎やがて、「ゴーレム娘お断り」の宿が増えたことで仕方なく外で休憩を取る個体が増え…悪戯をされる個体も増え…破損する者も。…流石に動けなくなるまで破損した個体は動けない為に任務に就くことも難しい為、アイテムボックスに収納して保護していた…

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「それ、マジか?」


「え?…えぇ…本当です」


「人間じゃないってだけであんなことされるなんて…」


「私なんて人間じゃないって気付いたら剣でぶん殴られたんですよ!…酷い………」


「服もビリビリにされちゃったしね…」


余りの惨状に、ザックの顔が引き締められ…要は殺気が漏れ出し…ゴーレム娘たちはビビりまくる。


「マスター?」


レムが一言。


「…あ、あぁすまない。えと…それって領主たちは?」


「多分知らないんじゃないかと」


「報告しに行っても門前払いだったしね…」


「冒険者ギルドとか探索者ギルドは?」


「右に同じ…」


「人権が無いから物と同じって思ってるんじゃないかな?」


ゴーレム娘たちは、仲間たちと目を合わせながらマスターであるザックに答えているが…


「そうか…つまり」


「はいストップ。また怖がらせてどーすんの?」


と、今度はシャーリーに突っ込まれる。


「いやだってな?…この子たちは俺の子たちだぞ?…それを壊すってことは、敵対してるも同然だろっ!?」


「だからって、この子たちを怖がらせてどーすんの?っていってんの!!」


「あ…はい、すまん」


「あたしにいってもしょうがないでしょ?」


シャーリーから目前のゴーレム娘たちに向き直り、


「あ~…すまん」


と謝るザック。


「あ、いえ…そんな」


「マスターが怒ってくれるだけで…」


「はい!…もう直して貰いましたし!!」


と、感激しているゴーレム娘たち。中には涙を浮かべてる者も居たが…


(やっぱり…思考コアの感情?が…人間に近付いてってるなぁ…。ここまで人間に近付いたゴーレムを人形扱いするなんて…やっぱ許せるもんじゃないよな…)


取り敢えずそっちは後で苦情を伝えるとして、新しくマウンテリバー勢のゴーレム娘用に空き地に建てることとする。取り敢えず安全に寝泊まりができる場所が欲しい!…という要望を受けて、1日だけ待って貰った。



「えっと…本当ですか?」


「本当にここに寝泊まりしても?」


出来上がった建物を見て、ゴーレム娘たちが確認してくる。


「あ、うん。本当だよ?」


嘘いってどーすんの?…と、悪戯が成功したような顔で答えるザック。ゴーレム娘が真意を訪ねても仕方ないだろう…その建物はマウンテリバーの何処を見ても存在しない程に…大きかった。外見は平凡なデザインだったが…兎に角大きかったのだ!


『3階建てで隣に建てたのよりは1階分低いけど、敷地面積が広いわね…』


シャーリーが飛びながら評価をしている。まぁ、今後人数が増える可能性があるからな。余裕を持たせておく方がいいだろうと思ったんだ。


『まーね。中庭もあるから非番の子もゆっくり過ごせるしね?』


建物の敷地面積は広いが、実は全部が全部ではなく、1~2階は敷地面積全部が部屋を内包しているが2階の内側屋上部分が庭になっていて、ちょっとした憩いの地となっている。3階部分が外からの視界を遮っているので気にせずゆっくりと休めるようにと工夫してみたのだ。尚、3階の天井部分…中庭はやや濁ってはいるが半透明な素材で覆っているので雨の影響は受けないようになっている。


「こんな立派な…お屋敷ですか?」


「いや~…屋敷っていうか、どちからというと学園の寄宿舎みたいな?」


大勢で協力し合って住む住居だから、寄宿舎に近いのだろう。管理する者は…ナルに丸投げであるがw


「まぁ…住む所は提供するから、ちゃんと協力し合って過ごすようにな?」


「「「はい!」」」


…という訳で衣食住の内、食住を提供して解決。衣に関してはボロになった初期装備を耐久値再生デュラビリティ・リペアーで復活させて、それすらも無い者には同一の衣類を創造…いや、予備をストレージから全部出して押し付けた。寄宿舎(仮)の倉庫にでも入れておいて、ボロしか着てない子に渡してやってくれといって渡したのだ。


「「「有難う御座います…」」」


と、大変感謝されたが、そもそも3~4箇月の遠征でこうなるとわかっていれば、予備を渡しておくべきだったなと反省するザック。そもそも、乱暴されなければ問題無かった筈なのだ。だが、まさか…


「護る筈の人間から乱暴されるとはな…」


ゴーレムたちにはこんな制限を課していた。



1つ、人を護る為に街を防衛せよ

1つ、人に危害を与えるな

1つ、上記2つに反しなければ外敵から身を護れ



だが、身を護る為に人から乱暴された場合…2つ目の命令から背く可能性がある場合…どうなるだろうか?


恐らくは…身を護るには乱暴を働く人を攻撃せねばならず、だが2つ目の命令に背くことになる…結果として固まってしまい、乱暴を受け…人間じゃないからと破壊目的の攻撃を受けた…そんな所だろう。


「はぁ…」


考えがぐるぐるしてきて…ザックは溜息を吐く。


「乱暴を働いた奴、覚えてる?」


「え?…えぇ、まぁ…」


「じゃ、書いて?」


「あ、はい…」


ムスっとしたマスター…ザックの覇気に押されて、被害者であるゴーレム娘たちは覚えてる限りの似顔絵とわかれば名前を書き出す。尚、書いて貰ったのはできたばかりの寄宿舎。1階の大勢でゆったりして貰う目的で作ったレクリエーションルームだ。丁度大き目のローテーブルがあり、椅子も無しに座れるので靴を入り口で脱いで貰って適当に座って貰っている。


「ありがと。じゃあ…今日からここで寝起きしていいから。何か困ったことがあったらナルに相談してね?…じゃ!」


「「「あ、はい…有難う御座います。マスター!」」」


ゴーレム娘たちがめいめいに座っている中、ザックは1人急ぎ寄宿舎を出るのであった…


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何処に向かったって?…そりゃ、街の責任者であるアソコとかアソコとかアソコしかないでSHOW!w


備考:持って帰って来た砂を1トンくらい消費…既に誤差でしかない量だけどもw

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