78 その35 ~ドライールドで彷徨う その14~
捕らえられた姫…ではなく、警備ゴーレム3体を救出する為にドライールド領の貴族街に侵入を果たした救出班。実際には小隊編成のユグ・シャーリー・ケリーにサリーだ(後者2名は仮名)貴族街に侵入と同時に探知魔法が
そして捕らえられたお嬢様…ではなく(しつこい!w)、警備ゴーレム3体は今まさにその貞操が汚されそうになっていた。ゴーレムでも見た目女性なら構わないという変態の手に依って…
捕らえられた警備ゴーレムの1体がその思念を浴び、奇跡的に再起動を果たす。体機能は未だ不完全だが…迫り来る悪の手に依り、辛うじて体機能を奪っている首に刺さった矢尻を除去することに成功し、「緊急プログラム「□□」」が起動する。そして…コードネーム「ヒナ」は仲間を助けるべく…限られた時間を以て全力稼働を始めるのだった…
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- ヒナ、活躍する! -
〈稼働停止命令の喪失を確認。全システム再起動します〉
〈
〈緊急プログラム「□□」起動〉
覆いかぶさっていた変態wの腕を振り解き、体を弾き飛ばし…ヒナは復活した視覚…目を動かし、仲間の存在と敵である男3名を視認。どう動けばいいか瞬時に算出して体を素早く起こす。この間僅か3秒。弾き飛ばした男が
「ぐえっ」
と、ヒキガエルのような声を出して唸っている頃には仲間2体を両腕で抱えて部屋の出口まで到達する寸前であった。
がんっ!
仲間の体重を含めた全体重と突進力を乗せたキックをかましたが、それでもドアは開かなかった。恐らく外から
「くっ…ならば!」
仲間の首を
「このアマ!」
激情に駆られた変態が気絶しなかったのか起きて来て…ヒナに襲い掛かる!
「はっ!?」
がきぃぃんっ!!
真上から振り下ろされた剣を咄嗟に左腕でガードするヒナ。特に利き腕は無い為、どちらの腕でも同性能の筈だが、基本右で剣を。左で盾を用いていた癖が出たらしい。だが、ゴーレムといえど腕は腕だ。防具ではない為に僅かに凹んでしまい、斬り付けられた腕を剣が滑っていく…
「死ねやおらあっ!!」
「「ぉぃぉぃ…」」
仲間の男たちが突っ込むも変態男は頭に血が上っているのか聞く耳も持たず、ヒナに覆い被さって剣をぐいぐいと押し込んで行く!
(くっ…まだですか…このままでは…)
ヒナが苦しむ真似をしてまで耐えているのは仲間たちの再起動だ。既に主原因である矢尻は除去済みだ。流石に機能停止してる状況で剣で突かれてしまえば大破はしなくとも中破するかも知れない。従って動けない仲間を庇ってまで耐えているのは脱出の可能性を上げる為だ。幸いといっていいか…他の男2名は動こうともせず、こちらのやり取りを見守っているだけだ…と、そこへ
がんがんがん!
「どうした!?…何があったっ?」
と、外から激しいノックと問い掛けが…
(いけない…この儘では…)
脱出の可能性が低くなってしまう。武器も無しに脱出するにしても、「殺さず」の命令が生きている私たちだけでは…と思考を巡らしていると思わぬ援軍ならず…男たちが叫ぶ。
「いやすまん!…この変態が妙な真似をするんでぶん殴っただけなんだ!」
「騒がしてすまん!」
…と。そう叫んだ男たちが神妙な顔をしながらドアの外を見詰めていると、
「そっかわかった!…こっちは上手いこと誤魔化しておくからよ!…ったく、騒がせんなよな…」
と、ボヤキながら遠のいて行く足音。響きからしてフルプレートか…ハーフプレートを装備しているらしい。足音も金属製のブーツのようだ。真っ当にぶつかれば腕の1本も失っていただろう…
(わからない…何が目的だ?)
ヒナはそう考えていると、
「あ~…俺らも捕縛した捕虜…捕虜だよな?…が逃げ出そうとしたなんて聞いたら責任問題だからな?…まぁ、そういうことだ。大人しくしていて貰えるか?」
何を勝手な…と憤慨するが仲間たちが未だ再起動しない今、単独で抗っても傷付けられて動けなくされた挙句…再び捕らえられる結果だけが見えていた。
(くっ…此処までなのか…)
僅かに目線を下げ、まだ何か策は無いかと思考するが…現状の儘では無策に近い。無駄、無駄、無駄あっ!…と、何処か偉そうな青年が高笑いをしながら上から目線で見下ろしている姿を幻視をする。
「…っ!」
ドアの外から何か騒ぎがあったのか、何をいってるか不明だが騒いでいる様子に気付く。
「む?…何があった?」
男2人の内、1人が不審な目をドアに向ける。
「お前、そこで彼女を抑えておけ。いいな?」
「お、おう…」
変態男が更に力を籠めてヒナを抑え込みにかかる。
「ぐ…」
「
厭らしい台詞を吐いて変態男が体重を掛けて圧し掛かって行く。流石に腕が割れてへし折れる…ということはないが皮膚に似せた表皮が少しづつ削り取られ、剥がれていく。恐らく、剣を退かせば金属に似た素体が見えていることだろう。流石に鋼鉄製の剣では傷は付かないが、人間ではないという証明がそこに露わになってしまうのだ…
「くっ…」
「おお!?…いいのかぁ~?…無駄な抵抗をしたっていいんだが、その時にはお仲間がどうなるだろうなぁ?…くっくっくっ…」
見れば、もう1人の男がいつの間にか…仲間の警備ゴーレムの1人の首に剣を添えていた。
(なっ…いつの間に…)
男はニヤケながら剣をツンツンと首に付けたり離したりしている。明らかにこちらを挑発してるように見える。
「…っ!!」
ずだぁ~んっ!!
ドアに何かとてつもなく重い物がぶつかったような衝撃音が鳴り響き、激突した衝撃で天井からパラパラと砂や欠片が落ちて来て…ドアはドアでぶつかった瞬間は激しい振動で閂が折れるかと思ったくらいだ。幸い、ガラス窓などは嵌ってなかったので割れ飛んだりはしなかったが…
「気を付けろ!?…ひょっとしたら敵襲かも知れんっ!」
ドアの傍で外の様子を聞いていた男その1が警告を発し、緊張で冷や汗を垂らしていた。変態男も男その2も緊張しているのがわかる。
(今、この機を逃したら脱出できない、かも…)
ヒナは力を溜め…全身に力を籠めて、気合を入れて全力で声を発す。
「うわああああああ~~~っっっ!!」
「ぐっ…な、なんだこの力はっ!?」
変態男が驚き、今までにない膂力にも驚き、
ぐぐぐ…
と押し返されそうになるが…
「はい残念!」
男その2がその上から剣を添えて全体重を乗せて来る!
「そ、そんな…!?」
ようやく拮抗していた力がおかわりの体重と剣圧が追加されて…再び押されていく。ヒナは不安定な体勢で下から腕力のみで押し返そうとしていた為、全力運転だったのだ。唯でさえ緊急プログラムで魔力の消費が激しい上に気合を入れて更に魔力消費が加速。こうなっては後数分ともたないだろう…
「うっ…くっ…」
「ほれほれほれぇ~…もう終わりなのかぁ~?」
「はっはっはっ…遊んでないでトドメを刺してやった方がいいんじゃないか?」
と、ヒナを抑え込む野郎2人は楽しそうだが…
「おいお前ら!遊んでねーでさっさと停止信号を打ち込めよ!」
と、男その1が厳しそうな顔で命令する。
「ちっ…折角の楽しみが…」
「まーそーゆーなって、そのまま抑えてろよ?」
男その1が先程拾っておいたのだろう…折れた矢を手に持つとゆっくりとヒナの首へと矢尻を添える。
「悪く思うなよ?」
首に空いた穴へと矢尻の先を添え…ずぶりと押し込む。
〈稼働停止命令を受信しました〉
〈全システムの停止シークエンスに入ります〉
〈システム停止まで10…9…8…7…6…〉
妙にシステム停止シ-クエンスがゆっくりに感じられます。
〈5…〉
ああ…もう帰れないのでしょうか…
〈4…〉
マスターたちの元へは…
〈3…〉
仲間たちの元へは…
〈2…〉
目の前が暗く、彩度が失われて…
〈1…〉
明度も失われて、視界が暗くなっていきます…
〈0…〉
もう…システムが止まり…ます…ね…
「やらせるかよ?」
はい?
〈稼働停止命令の喪失を確認。全システム再起動します〉
〈
〈緊急プログラム「□□」再起動します〉
〈体内残存魔力後僅かです。プログラム停止まで残り時間5分となります〉
〈敵からの逃走、及び殲滅までプログラムが停止できません。グッドラック…〉
思うんだけど…マスター。どんなプログラムを仕込んでたのかな?…生き延びたら正座して貰ってゆっくりと小一時間はお話ししないといけないかもね?
━━━━━━━━━━━━━━━
人生…否、短いゴーレム生で得られた経験としては余りにも無茶苦茶なモノで…コードネーム「ヒナ」は、思わず創造主に色々お話ししたいと思ったのでした…マル
備考:ザックくん、逃げて~!超逃げて~!(従者であるゴーレムが極限?状態でヤンデレっぽい思考に陥っちゃったよぉ~っ!w)
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