77 その34 ~ドライールドで彷徨う その13~
大砲部隊が撤退し、ゴーレムたちに内壁周辺の清掃を任せた時に事件は起きる…そう、警備ゴーレム3体が何者かに拉致されたのだ。敵方にバレないように捜索を進めるも、行方はようとしてわからないままだった…
そして結成されるゴーレム救出部隊。ユグ、シャーリー、警備ゴーレム部隊からリーダーとサブリーダーのケリー(仮名)、サリー(仮名)の計4名だ。レムはザック護衛の為お留守番だが…
これはドライールド領破滅の序曲か、それとも…
※何で救出部隊が結成されて派遣するだけで1つの領地が破滅するんだっ!?w(戦力的にはユグ1体だけで十分殲滅可能ですけどね?w←丁度、専用魔力カプセルを食べた直後だし)
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- 貴族街・潜入 ~侵入直後~ -
「…ん?」
某●ラゴンレーダーチックな探知魔法を仕込んだ魔導具が全面真っ白になっている。丁度ドライールド領の貴族街に潜入した直後のタイミングだ。
「マスター…マスター?」
魔導具のヘッドギアから連絡をするけど魔力通信方式のチャンネルではノイズが酷くて通じていないようだ。恐らく
「どしたの?」
ユグちゃんが訊いて来る。
「えっと…ヘッドギアが通じなくて…」
「あ~、なる」
すぐさまマスターから念話で連絡が入る。一応、マスターからの念話はヘッドギアで受信は可能だ。
『探知魔法が効かないエリアに入ったんだが…無事か?』
『え、マジ?…あ~確かに魔法は妨害されてるねぇ~…』
シャーリーが返事するが、私の持っている探知の魔導具の画面が真っ白に気付いて驚いていた。彼女は通常は有視界で索敵してるようで、それで補えない場合は探知魔法を使うようだ。ちゃん付けじゃないのは精神年齢がこちらと同じくらいだからだ。ゴーレム同士の格付けは普段はやらないようにお達しがあるので敬称略で通している…よ?(ユグちゃんは何となく年下っぽいし見た目も…ねぇ?)
『マスター、こちらも探知の魔導具が妨害されてるようで…真っ白です』
シャーリーに念話のチャンネルに切り替える方法を聞いてから応答する。通常は魔力通信で十分だったので切り替え方を知らなかったんだけど…まぁ後で全部隊のリーダーに共有するとして…
『成程…貴族街に入った途端にそれって…「自分たちが主犯ですよ?」ってバラしてるも同然なんだけどなぁ…』
マスターが苦笑いしながら念話で呟く。釣られて私たちも『そうですね…』と笑っちゃうが…失笑にしかならなかった。ユグちゃんだけポカンとしてたけどね?(苦笑)
『じゃ、敵の本拠地も近いってことで十分警戒してくれ』
マスターからの有難いお言葉に、
『『わかった!』』
…と元気にシャーリーとユグちゃんが応答し、
『『了解致しました』』
…と緊張を隠せない私とサリー。初めての本格的な作戦に冷や汗…を流す機能は無いけれど、内心バリバリに緊張する。仮に失敗しても
そんな決死なことを考えてたら、単独チャンネルでマスターに怒られた。
『きちんと、全員で戻って来いよ?』
…と。
『えと…それは…えと…はい…』
おかしい。汎用ゴーレムであるこの
※胸には思考を司る思考コアはあるけどそれは人間でいう心臓じゃない筈…!
ケリーがサリーに背中を
ばしん!
と叩かれ、移動を開始したことに気付くまで、ぼ~っとしてたそうな…ナニこの初恋でも患ったようなゴーレムは…(苦笑)
- ザックサイド ~念話連絡直後~ -
「はぁ…じゃ、こっちはこっちで防備体制整えるぞ?」
「了解です」
ザックが念話の後、レムが頭を下げてから集中する。全ゴーレムに対し、色々と指令を発しているのだろう。こちらには
(マウンテリバーにもサンフィールドにも居るからなぁ…余り司令塔を数多く創るのもどうかと思うし…)
司令塔である統括体が多く居ても、戻った時に混乱するだろうし…という訳で今回は創ってない。レムが大雑把な指令を出し、それをリーダーが受諾してサブリーダーと協力して部下を動かすという形で何とか回している形だ。全体で千もゴーレムが居ないのでできるのだろう。尤も、壁の中に配備している索敵・狙撃・近接部隊とは別動隊なので実際には半分以下なのだが…
「地雷原でも設置すれば簡単なんですけどね…」
レムが防備としてそんな一言を漏らすが…
「地雷、ダメ!絶対!!」
と、ザックが何かの琴線に触れたようで、レムに対して絶対NO!を突き付けるのであったw
※対人地雷として、麻痺効果のある弱電流地雷を埋めようと思ってたようだが、ザックの剣幕に「…はい」といわざるを得なかった模様(苦笑)
- 某所・捕らえられた警備ゴーレムたち -
「これがゴーレムねぇ…」
「ぱっと見には服さえ着てりゃ…どこぞのお嬢様と変わらねーな?」
ニヤニヤとした笑みの張り付いた男たちが床に捨て置かれた警備ゴーレムたちを見て喋っていた。
「や、やらねーのか?」
「アホかっ!?…ゴーレムだぞ?…できる訳ねーだろ」
アホそうな3人目の男に2人目に喋った男が怒鳴る。流石に本物の人間ぽくても、人形とイタスつもりはさらさらない!…ということだが。
「勿体ない…ならせめて見ちゃおうかな?」
と、スカート…ではなく、長ズボンを履いている為にまずはベルトを…と手を掛ける3人目のアホ男。
「やめんか!…どーせ解体するなら服なぞその時に除装するだろう?」
と、一喝する1人目の男。ビク!…と手が止まったアホ男は
「そ…そうだな。なら、その時に拝ませて貰うよ…えへ…えへへ…」
と、何ともアホっぽい顔で下がって行く。その時、危うく服を脱がされそうになっていた警備ゴーレムが自身に迫る不運に気付き?…覚醒した。だが、じっと静かに目を瞑ったまま聴覚を…耳を澄まして周囲の状況を確認していたのだ。
(…此処は…何処か不明。恐らくマスターの所有地とは別の模様)
(…3人の人間男性に囲まれている?)
(…同僚が他2名、すぐ傍に倒れている)
(…機能はほぼ停止している模様)
(…確認した状況を送信して再起動を要求…失敗)
(…原因は…機能停止命令を打ち込まれた?)
(…では、何故自分は再起動を…不明)
その個体は、まさか自身に迫る不運が原因とは思い付かないようだ。尤も、人間の異性に対する性的欲求が危険などとは夢にも思わないからなのだろうが…
(…体内の各部位の状況確認…機能回復まで残り時間、55分45秒を要する)
専用のドックでもなければ、自己診断機能のみでは時間が掛かるようだ。ザックであれば僅か数分で診断し、最適な修復を…否、
(…何としても、此処から脱出しなければ…くっ)
某女騎士みたいに「くっころ」の精神は有していない警備ゴーレムの少女は…仲間の再起動を再挑戦する。3体の仲間の内、自身のみでは脱出の可能性は低い。仲間を見捨てて脱出をするなど考えてすらいないのだ。必ず全員で生還する…その為には最低でももう1人は起こさなければならない。
(…命令停止の原因は…これ?)
自身の診断プログラムにより判明する、機能停止の原因。ゴーレムの停止命令を打ち込む為の短めの棒が首の横に撃ち込まれていることが判明した。各機能の再起動を妨害もしているようで、今も「停止セヨ」というカタコトの命令を発し続けている。
(…これを抜けば…ぐぐっ…)
先端が僅かに食い込んでいるだけの棒だ。首を少しだけ動かせば…床に擦り付ければ抜けそうだが…上手いこと動いてくれない。腕も、指も…
(…なら、首だけでも動かせれば…)
僅かに動いた気がするが、それだけだ。
「ん?…おい、何か動いてねーか?…それ」
びびくぅっ!?
「お、本当だ。今、びくっ!と動いたぜ?」
2人の男がこちらを見て…視覚は目蓋を瞑っているのでわからないが…聴覚…耳から得た音…声を拾い、視線などは感じられないがこちらをジロジロと無遠慮に覗き込んでいる様が感じられる。
「ちこっと確認していいか?」
3人目のアホ男が嬉々として2人に訊く。余程体を弄り…もとい、触れたいのだろう。
「はぁ…殺されても知らんからな?」
「勝手にすりゃあいいだろうが…ア・ホ」
「うひょぉ~!…許可が出た!!」
動き出そうとする敵のゴーレムに嬉々として触れたい野郎なぞ居ないのだろうが、このアホ男は見た目少女の体に触りたい一心で近付いていく…そして。
「これだよな?…稼働停止命令を打ち込んだって矢は」
見れば、矢尻は首に刺さってはいるが先っちょ1cm程が辛うじて埋もれているだけだ。少しでも矢に触れれば抜け落ちそうになっているが…
「それには触るなよ?」
「え、何で?…痛そうじゃん」
「アホかっ!?…抜けたらすぐさま再起動して襲って来るんだぞ!?」
「え、そなの?」
と、男たちを見たままのアホ男の指先が矢に触れていた。
(…今だっ!!)
全力を込めて…首を動かす少女。そして…
ぽろっ…
と、稼働停止命令を流し続けていた矢は…小さな魔石を埋め込まれた矢尻は彼女の首から抜け落ちたのだった!
「なっ…」
「ちょっ…」
「え?…」
三人三様の声を上げて、今…警備ゴーレムの少女から枷が解き離たれ…
〈稼働停止命令の喪失を確認。全システム再起動します〉
〈
〈緊急プログラム「□□」起動〉
それは、彼女すらも知らない…ザックがもしもの時にと、全てのゴーレムに仕込んだ緊急プログラムだった(名前が空白なのは、「まさか発動しないだろ?」と思って名を与えてなかっただけで他意は無いのだったという…(苦笑))
━━━━━━━━━━━━━━━
※単に内包魔力を全消費して各性能を3倍に上昇させて、捕らえられた仲間を助け出し…敵地から脱出するだけのエスケーププログラムなだけ…その継続時間は僅か1時間…果たして、ヒナは仲間と共に脱出できるのだろうかっ!?
備考:結果から話せば…ネタバレなのでスルーで(ちょっ!w)
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