55 その12 ~サンフィールドに往こう その12~

ザックはこれからの荒事に対し、2人の従者ゴーレムレムとシャーリー体躯ボディでは耐えられないんじゃないか?…と考えた。いや、レムのボディは通常状態でも「意識して防御」すれば硬く頑丈ではある。だが、意識の外から攻撃されたら?…確かに土属性魔法で底上げすれば並みの魔物では貫き通せない程の防御力がある。だが、魔力が尽きた場合は?…防御魔法を行使してなかったら?…そう考えると、考えたくない最悪な光景が脳裏をよぎるのだ…。は?シャーリー?…彼女は…元々回避型だからな。勘も鋭いし…鼻から考えてない(シャーリー「酷っ!」)

ま、そんな訳で2人のボディの更新…というよりは新造した。うんうん、益々人に近付いたレムの柔肌が…ぶふぉっ(鼻血を吹いたらしい…)シャーリーは巨大化しました。抱き枕に丁度いいくらいの大きさに…(フィギュアから抱き枕にクラスチェンジ?…いや、そんなバナナ…)

汎用ゴーレム?…うん、まぁ…量産中ですよ?(んな取って付けたような…)

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- 翌日 -


「はぁ…疲れた」


まさかの徹夜作業だった!…取り敢えず1万体を量産し終え、統括体として10体、サブリーダーとして30体を追加生産した。


統括体にはそれぞれ1000体づつ管理して貰う。


その補佐として3体づつサブリーダーを付ける(統括体は管理する汎用ゴーレムたちの全体指揮と制御を司るが、通常は監視のみでサブリーダーたちに指令を伝えてサブリーダー3体で1000体の指揮制御を行う。


「ん~…それだけじゃ不足か…」


汎用ゴーレムには標準装備で衣類(胴着・ズボン・靴・手袋)の他に警棒(鋼鉄製)、捕縛用のロープ(1~5mまで伸縮自在)が与えてあるが、小隊単位で小隊長を設定しサブリーダーと統括体からの指令を受けたり現状を伝えるヘッドギア型レシーバーのを配布する(急ぎ生産してサブリーダーに渡して転送して貰う←アイテムボックス経由で)


今回、容量は少ないが(50kg相当の容量まで収納可能)相互に中身を転送可能な機能を付けた。サンフィールド領内と付近の砂漠程度(凡そ20km程度の距離)までなら転送可能だ。


(ぶっちゃけ、マナを多く含む砂が存在する範囲内ならそのマナを利用して…なのでマウンテリバーでは魔力不足で機能しないんだけどね!)


そんなこんなで、マナを多く含む砂が周囲に潤沢に存在するサンフィールドという特異性を利用した装備だ。汎用ゴーレムたちも恐らくはサンフィールドから出ると1箇月を待たずして崩壊する可能性がある。彼女たちは表面のマナを多く含む砂…ではなく、マナが通常量しか含まない深い部分の砂を素材にして大量生産した為、衣類の耐久力任せな頑丈さしか無いし稼働の為の魔力はサンフィールドに大量に漂っている放出マナを吸収して補っているのだ(サブリーダーも統括体も同様)


(まぁ…もし拿捕されて敵地に連行された時の保険でもあるけど…)


サンフィールドから遠く離れた時、ドライールド領の場合はサンフィールド領と似たような環境かも知れないが…その場合、取れるだけ情報を取って送信して貰い…ゴーレムのマスター書き換えなどの処置を受けるか分解されそうになったら自壊するように設定されている。無論、機能停止した状態で鹵獲され、運び込まれる可能性もあるのでその機能は汎用ゴーレムの思考コアとは別システムとなっている。


(非情かも知れないけど…ね)


サンフィールドだけでなく、ドライールドにもゴーレムの情報が漏れたとなると、いよいよ自身の安全が危険となる。致し方ないだろう…



「ふわぁ~…あ、ミランダ婦人」


「お疲れ様、ザックくん」


「あ、いえ…。えと…ゴーレムですが…」


「聞いているわ。取り敢えず千体の配置ですってね、お疲れ様」


「あ、はい…」


砂漠のゴーレム工房(仮)…として設置した土壁ででっちあげただだっ広いだけの小屋…小屋?(1ヘクタールくらいあるけども(苦笑))…から出て来たザックたちは、100mくらい歩いて外壁を飛び越えて領主の館へ戻っていた。尚、1万体は既に全部創造し終えていたが…


(一晩で1万て…どんだけ異常チートって思われるかわからんからなぁ…)


という訳で、


「汎用ゴーレムなら一晩掛ければ千体くらいはできるよね?」


という思考の元、統括体に頼んでサブリーダー1体に命令して貰って着任に走って貰ったんだけど…


(一晩でせっ…千体もなんて…ザック、恐ろしい子っ!?)


…とミランダ婦人からは内心恐ろしい子認定を受けていたなんて夢にも思ってない訳で…うむ、然もありなん…



1日目…千体の増員をするも、潜伏中のドライールドの潜伏兵は発見できず。伝令兵は館の外で待機していたが疲労を理由に撤退。


2日目…更に千体の増員・派遣を敢行。ミランダ婦人に「無理してない?」とか「ちゃんと休まないとダメですよ?」と注意を受ける。潜伏兵を3人程発見・拿捕に成功。婦人や私兵・衛兵たちからは絶賛の声が上がるが…まだまだですといっておく(計2千体派遣)


3日目…更に千体の(ry)…婦人に強制的に休めと命令される。仕方ないので統括体に念話テレパシーで頼んでステルス部隊を三千体、派遣して貰った(ステルスマントを配布。捕縛用の麻痺針投射器を全員装備。計5千体派遣)


4日目…ミランダ婦人の命令で屋敷に割り当てられた部屋でゴロゴロしていた…と見せ掛けて、念話テレパシーで統括体にあれこれ命令したり、ステルス部隊に指示出ししていた。既に展開しているゴーレム部隊に渡して間接的にドライールド潜伏兵を6人発見・拿捕。探知魔法で調査しながらなのでこちらの方が余程効率的だったが非常に疲れた…


5日目…まるっと1日強制的に休んだお陰でゴーレム生産に戻ることができた(実はゴーレム生産は終えてるのでマナ砂採取してるだけだけどw)…追加で500体を派遣。統括体とサブリーダーたちからの要請で投網投射器を開発して配備する(人を数人纏めて捕らえられる大きさの投網を発射する筒…所謂投網ランチャーを創った)小隊毎に1つを配備することに(小隊は4人の小隊員(誰かが投網ランチャー装備)+1人の小隊長(レシーバー装備)の5人1組)…余分な作業をしてるのに千体派遣は変じゃないか?…と思い、500体に留めておいた。派遣してない個体は待ってる間にも情報の共有は済ませてあるし、ステルスマントを仮配布して砂の採取を任せてもいる(まだ4500体居るのでどんどん砂の採取は進んでいる。計5500体派遣)


6日目…いよいよ痺れを切らしたのか、サンフィールドの外で潜伏していたドライールド兵たちが動き出した。伝令兵がまず先陣を切って…要は戦国時代の伝統をなぞって宣戦布告をしに来たのだが…ひとしきりがなってから陣地に戻って行き、隠蔽の魔法を停止した途端に砂の少ない地面のある側(ドライールドへ続く道がある)からぞろ…っと敵兵が現れる。既に戦闘準備が完了しているらしく、まずは遠距離攻撃…攻撃魔法をぶっ放すようだ。セオリー通りだが…うん。急いで砂集めさせてる彼女たちを呼び戻したのは当然だよね?



- 6日目の戦端開始のこと -


「マスター、全員呼び戻しました」


「あぁ、有難う」


統括体の…勿論ナルじゃないよ?彼女はマウンテリバーに居るからね…ゴーレムに労いの言葉を伝える。全員といっても町中に派遣している潜伏兵捕縛に駆けずり回っている連中ではなく、砂集めを頼んでいる4500体の方だ。念の為、10体程(単眼望遠鏡配備済み…眼鏡型で左右どちらかに望遠用レンズ筒を装着するタイプ。望遠鏡と違って手を塞がない)は監視の為に散らばって貰っているが…


「じゃ、これ配布して貰えるか?…本格的な戦闘用として創った訳じゃないので申し訳ないんだけどね…」


と、警棒(鋼鉄製)に加えて剣(柄のみ。スイッチを入れるとサンフィールドに漂うマナを吸収して魔力で作り出すエネルギーブレイドを形成する。刃は質量を持つので鍔迫り合いが可能(相手の剣の耐久力を削り切ると武器切断))と盾(普通の鋼鉄製だが剣と同様にスイッチを入れるとマナを吸収して防御力が向上する)を4500体分アイテムボックスへと転送する。


「こっ…こんなに!?」


驚く統括体だが、すぐに


「わっ、わかりました」


と、外で待機している4500体に転送配備する。


「じゃ、次はこれね」


と、ステルスマントのアタッチメントを転送する。これは唯体を見え難くするステルスマントに回避力向上の効果を付与する物だ。唯でさえ見辛い(近接すればうっすら見えてしまうが)ステルス効果に空気の厚い層を付加することにより攻撃を回避、或いは逸らす効果がある(高速で走っていると空気抵抗で腕が思うように固定できなくなるアレですw)…勿論完全ではないので、剛腕の者に空気層を打ち破られることもある。過信は禁物だ…


※ステルスマントは偏光効果で真正面に立っても像が結び辛くなっているだけなので、遠く離れていればいる程離れた所にずれる為、現在位置を誤認するだけで「居る」ということは認識されてしまう。が、ある程度接近した場合は殆ど見えなくなる効果がある。依って「ステルスマント」というよりは「ミスリード惑わしマント」といった方が妥当だが…ステルスの方が何となく格好いいということでそうなったw


「最後に…」


「ま、まだあるんですかっ!?」


どんだけ容量があるんですかっ!?…と呆れの表情で驚かれるが、本当にこれで最後だ。


「一応アドバイス。最初にぶっ放せば戦意を失って戦端は開かれないかも知れないけど…戦死者が出るかも知れない。勿論、向こうさんドライールド側にね」


こくこくと頷く統括体。何か可愛い反応だなぁ…と思いつつ説明を続けるザック。


「殺したくないなら使わないに越したことはないけど…」


ごくりと唾を嚥下する音が…って、そんな機能付けたっけ?…と思いつつ続ける。


「最後まで温存していてもやられちゃったら意味無いからね?…いざ!って時は、ちゃんと使うこと」


こくこくと頷く統括体。どれだけ凶悪な武器なのだろう?…と思ったか、青褪めて来る。そしてザックは1つだけ「取り出し」て使い方を説明する…取り出したのは肩に担いで運用する武器。見た目は投網投射器と同じ形状だが…細かい仕様は違う。運用方法は殆ど同じだが、その用途は「投網投射器ランチャー」は目標の捕縛だが、この「爆裂弾投射器ロケットランチャー」は目標たちの殺害、及び大怪我をさせて動けなくさせることだ。怪我をさせないように捕縛と殺害及び重症化では…


(仕方ない…かな。相手は数千の兵たちだ。あんな数の暴徒がサンフィールドに侵入したら、一体どれだけの人々が害されるか…わかったもんじゃないしな…)


ザックはロケットランチャーを仕舞い、改めて統括体のアイテムボックスに転送しようとしたが…


〈びーっ!!…転送先のアイテムボックスが一杯です〉


と出て、統括体のアイテムボックスが空くまで待機するのであった…!(苦笑)


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ランチャー単体だけなら十分だけど、弾も含めると足りなかった模様(苦笑)


備考:武装追加で砂が100kg程消費。でも、採取の分と差し引き+1トンくらいDEATH!!(大雑把過ぎるw)

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