56 その13 ~サンフィールドに往こう その13~

汎用ゴーレム1万体を生産し、制御用に統括体を1体とサブリーダーを30体(流石に統括体1体だけで1万体は監視はできても管理は難しいからサブリーダーを生産し、1000体毎に3体を付けた)、そして小隊(小隊長1+小隊員4)毎に分けて統括体とサブリーダーからの指示を受ける用にレシーバーが付いているヘッドギアを小隊長に配備した。確かその上に中隊とか大隊とか上の区分があると思うが、ザックは詳しくないので…統括体たちが知恵を捻り出して何とかするだろう!(ゴーレム任せかYO!w…つか、ゴーレムに知恵って…)

そして一気に1万体配備は流石に怪しまれてヤヴァイことになる未来しか見えなかった為、五月雨式に徐々に放出することに…途中で「休みなさい」とミランダ婦人に睨まれて(千体づつでもエグかったらしい…)丸々1日休日に。仕方なく残っている待機部隊の内、3千体をステルスマントを配ってサンフィールド周辺でドライールド領兵の監視業務と砂採取に従事させてみたり…

そして汎用ゴーレム配備開始から6日目。遂に…というか、よく今まで我慢してたな…というか。ドライールド領の兵たちが侵攻を宣言して迫ってきたのだった!…

とりま、ザックは残っている4500体のステルスゴーレム部隊を引き揚げさせる。理由は…迫り来るドライールド領兵たちの対処の為だ。派遣している汎用ゴーレムたちは広大なサンフィールド領内を潜伏兵の検挙の為に駆けずり回っているから対処がどーしても遅れそうだしね…

━━━━━━━━━━━━━━━


- 開戦…? -


「全軍進撃!!」


大声で怒鳴り声が上がり、ゆっくりとドライールド領兵が動き出す。だが、全て…という訳ではなく、輜重しちょう部隊や雑用をこなす領兵たちに付いてきた平民たちは残る模様だ。


※輜重部隊:食料や様々な道具を運ぶ後方部隊。通常は専門の軍人が輸送や使用に当たるが、ドライールド領兵では数人の領兵と使役奴隷がその任に当たってる模様


(あれって徴兵された平民なのかな?…あ、でも着てる服がボロの貫頭衣か…)


首に注目すると金属製の輪っかが付けられている…ということは、奴隷なのだろう。遠隔視では例え鑑定スキルを持っていても判明しないだろうがあれがどんな目的で付けられているか…なんてのは想像が付く。


『マスター』


『うん?』


『敵兵の現在位置、予定位置に到達しつつありますが…』


予定位置…つまりは「落とし穴」を掘った辺りに到達するということだ。ザックは伝令兵が戻った後、すぐにステルス部隊に命令してあの領兵たちが通るであろう道に掘らせた。無論、パッと見には落とし穴があるとわからないようにしてだが…


『じゃあ、落とし穴に墜ちるように誘導してあげて?』


『了解致しました!』


作戦はこうだ…一旦ロケランで左右から撃ち込んで爆発させる。勿論当たらないように調整してだが…そうすれば「真ん中を突っ切れば射程の足りてない投射武器なぞ当たりはせん!」とかほざいて真ん中の道をこちらが距離を詰める前に急ぎ走りだすだろう…で、急いで盲目的に突っ走った先には…大穴が空いていて落ちるって寸法だ。


勿論、爆撃にビビってUターンしてって退却してくれた方が平和的に解決…でもないけど。まぁ…一時的にでも停戦(といえるかどうか知らないけど)してくれた方がこちらとしては有難いっちゃ有難い。その後はミランダ婦人か領主の旦那さんに政治的に解決する方法で丸投げだし?(面倒なのはのーせんきぅ)


どちらにしても、大穴に落ちた捕虜を交換材料に交渉するか、先出しで宣戦布告して来た内容を交渉材料にするかの違いだけだけどね…全く、大人の世界は面倒臭いよねぇ…はぁ。



- 凡そ5分後… -


「さて…っと。どうなったかな?」


ステルスゴーレム監視員の視覚情報を再び共有するザック。距離は大して離れてないが視覚と音声の両方を共有する為に情報総数が減って余り画質も音声も綺麗ではない…が視えるし聞こえるので問題は無い。また、汎用魔法と違ってザックの固有魔法周波数の為にジャミングもできないのでそのまんま素通りなのも助かっている要因の1つだ。


「ん~…おお、落ちてる落ちてる」


原始的ではあるが大穴を掘って上にカモフラージュの土色の布を被せて誤魔化していたらしく、頭に血が上ったら…そりゃ見分けが付かないだろうし。見事に術中にはまったって訳だ。見れば、進軍する道の左右に爆発痕があったので、命令通りに中央突破誘導するようにロケランを発射したのだと思われる。


『ぐああ~!押すな!落ちる!押すなぁ~っ!!』


と叫び声が聞こえてきて、監視員の視界がそちらに向けられると…


「あ、落ちた…ぷぷっw」


怒鳴っていた人物は後方から速度を落としきれない軍勢に押されてそのまま落ちて行った。勿論押した軍勢もそのまた後ろからの圧力に耐えきれずに…何人落ちたんだろう?


『凡そですが、50人前後かと…』


統括体から念話テレパシーがあった。まぁ最初から監視してたからわかるかな。


『たった今落ちた人物は、ドライールド領兵のおさのようです。捕縛しますか?』


(あーうん…でも、まだドライールドの兵たちがうごめいてるしね…もう少し落ち着いたらでいいかな?)


『では、そのように…』


(ってあれ?…僕、まだ念話で指示してないよね?…何でわかるかな…)


「私から命令を伝えておきましたが…?」


とレム。いや何で~!?…おまいら、頭の中を読んでる訳ぇ~っ!?


『だってマスターの考えなんて単純だからねぇ~…?w』


シャーリー。おまえもか…


ザックはがっくりとorzした…



- ドライールド進軍から1時間後… -


後方部隊にもロケランで脅しを掛け、輜重部隊と奴隷であろう雑用員たちはすぐさま投降していた。流石に千体のゴーレム部隊に囲まれては、せいぜい100人程度の居残り部隊に抗う術は無いに等しい。基本的には輜重部隊の荷からロープや拘束用具を探し出して拘束することに…


『何で拘束用具がこんなに一杯あるんだろうな?』


見れば、100を超える数が1台の荷馬車に満載されていた。まるで、サンフィールドの人たちを拘束する為だけに用意されたような…


『どうやらドライールドの噂は…本当のことのようですね』


『噂?』


『他領の人間を攫い、奴隷にして稼いでいるって話しですよ…』


『まさか…』


『今回はそうとは限りませんが…』


統括体は1万体の汎用ゴーレムの監視…見聞きした内容を全てその身に溜め込んでいる。そして分析して様々な出来事の繋がりも解析している。今のはサンフィールド内で話されている噂話を持ち出したのだろう。領主の館に引き籠っていては知り得ない物の1つではある…。勿論、私兵や衛兵たちも朧気には知っていてもそうと決めつけるには決定打に欠ける話しでもある。ひょっとすると、潜伏しているドライールド領兵が暇潰しに話した会話内容かも知れないが…


『まぁ今話しても解決するかわからんことだ。兎に角拘束して動けないようにしておけ』


『はっ!』


こうしてステルスゴーレム部隊千体で後方部隊は拘束され、突撃した領兵たちが入って来れないように土壁で彼らが気付かない内に囲ってしまうのであった…



- ドライールド領兵サイド -


「ぐぅっ…酷い目に遭った…」


領兵たちの長…兵長は穴から這い出してうめく。下から押し上げられ、上から引っ張られてうの体で地面へと復帰したのだ。


「兵長殿!…体勢を立て直すべく、一旦戻った方が良いと思われますが…」


「貴様!…おめおめと尻尾を巻いて逃げろというのかっ!?…あぁ~んっ!!」


「いえっ…ですが」


「我がドライールド領兵には貴様のような臆病者は要らぬっ!」


流石にその場で斬首…というのは士気にも関わる為、兵長はグーパンで殴るに留めたが…


ドライールド領は表向きは賛成票の多い少ないで事を決める議会制に依る支配体制を敷いていた…その実、たった1人の男が全てを掌握している出来レース議会なのだが。そんな議会から命令を受けて出向いて来ている領兵たちだが、兵長はその中の1人に過ぎない。決してドライールド領兵を掌握しているという訳ではないが、唯の1人でも人員の損失が発生すれば全責任を追求される…それが兵長の立場だ。


(くそが…。期限は後1週間と無いというのに…)


兵長は大穴から兵たちが救出される様子を睨みながら、遅々として進まぬサンフィールド占領作戦を思い、ハラワタが煮えくり返る思いだった…



- 再びザックサイドへ戻る -


『…だそうです』


『ほぉ~…』


遂に兵長とか呼ばれているお偉いさん?…の口から目的がもたらされる。無論、監視しているステルスゴーレムからの情報だ。ゴーレムは人や動物と違い、気配とか殆ど感じられない為にこういう監視業務には向いているようだ。じっとしていれば、見え辛い上に気配が無いので景色と然して変わらないのだから…勿論、魔力に敏感な人が居れば、また変わっただろうが…


(あちらさんには魔法を扱える者は居ないみたいだしなぁ…)


要は、普通の人間より鍛えてはいるがそれだけの人のみで編成されているように思われる。


(サンフィールドにも魔術に強い人間は余り居ないみたいだし、不要と判断されたんだろうな…)


でなければ、マナを多量に含むあの砂を見逃す筈も無い。砂漠には魔術に長けた人間が居そうな雰囲気があったが、与太話だったようだ…確かに僅かに魔導具の流通はされてるようだが…


(生活用品が殆どだったしねぇ…)


後は体力回復薬スタミナポーション回復薬HPポーションなどの水薬を生産する設備にも魔導具が使われているが…。あぁ後、熱を加える設備にも使われているか…(魔導コンロなど)


『敵領兵、土壁の包囲網に気付いたようです』


『了解。あ…穴に残ってる人、居る?』


『いえ、全員脱出した模様』


『おーけー。じゃあ水攻め開始して』


『いえっさー』


こうして、土壁で囲ったドライールド領兵の居る場所に…静かに水が流し込まれるのであった…そして



- 再びドライールド領兵サイド -


「なんじゃこりゃ!?」


土壁アースウォール…のようです」


「そんなことぁ見りゃわかる!」


兵長は冷静に分析した…とドヤ顔の部下に怒鳴りつける。事実、土属性魔法でこさえられた土壁アースウォールとほぼ変わらぬ壁が周囲を囲んでいるのだから…だが、兵長の驚いた所はそこではない。


「どうして気付かぬ内にこんなもんができたのか?…って驚いているのだっ!!…お前らそんなこともわからんのかっ!!」


事実、数分前には存在しなかった筈だ。偵察兵からもそんな報告は無い。全員が集結したタイミングを見計らって急いで造った…見たままならそう判断が取れる。ということは…


「見張られている?…まさか…おい!!」


「はっ…」


1人の部下が現れる。先程までそこに居なかったのに…と、兵たちが驚きざわついている…


「周囲を見てこい」


「はっ…」


そして姿を消す呼び出された部下。更にざわつく部下の兵たち。


「あれが噂の…」


「噂は本当だったのか…」


「確か、極東の忍びのモノとか…」


まさかの忍者、のような者らしい。だが…その首には薄く小さく目立たないが首輪が在った…それは魔術に詳しい者が見れば気付いただろう…「隷属の首輪」だと…


━━━━━━━━━━━━━━━

隷属の首輪に支配された忍びのモノ…果たして、家族や恋人を人質に取られた止む無く従っているという、有り勝ちな設定の有能な人物なのか?…それとも………(それは神も知らない(だって急遽でっち上げたキャラだし?w))


備考:ドライールド領がサンフィールド領を襲う為に進軍してキマシタ!(何故カタカナ言葉?w)

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