53 その10 ~サンフィールドに往こう その10~

サンフィールド領主婦人とレムに抱擁されてぽ~っとなってたらドライールドからのちょっかいに対処することになったザック(概ね間違ってないけど省略が過ぎてて勘違いされそうな前書きw)

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- 作戦前会議 -


「これは…」


提出された用紙を見て唸る私兵リーダーとその他私兵たち。最初の応接室とは別の、更に広い部屋を暫定作戦室として余計な装飾物を外に出し、テーブルと椅子を多めに配置している。中に居る人員には服装が私兵たちと違う者が居り、訊くとマウンテリバーの衛兵長と衛兵たちだそうだ。


(そーいえば見た記憶があったか…)


ザックがそんなことをぼんやりと考えている間も、喧々諤々けんけんがくがくと怒鳴る声が響き渡っている。


「…いや助かります。これで被害が…恐らくは最低限に抑えられるかと…」


恐らく、町の外に待機しているドライールド領の兵に対してはその考えは正しいだろう…と思う。だが、町中に既に潜入している平民か商人かは不明だが、偽装している兵員に対してはどうだろう?


(町中で何を仕掛けているかわからないし…)


どちらにせよ、外の兵力を町中に誘導する為には昼間は行動を起こさないんじゃないかと予想される。なら…夜、人の動きが少なくなった頃合いに…


(門番を無力化してから招き入れる?…でも、招き入れてどうするんだろう?)


マウンテリバーを占拠して施設をゆっくりと解析するのか…或いは…。


そこまでは流石のザックにも予想ができず、無為に時間だけが過ぎて行くのだった…



- 作戦開始と確認 -


「兎に角、何を仕出かす前に…止めた方がいいだろう」


「そうね。許可します…但し、なるべく関係無い人には手を出さないように」


「了解いたしました。おい!」


「「「はっ!」」」


衛兵長の言葉に婦人が許可を出す。作戦内容はこうだ…



【サンフィールド侵略阻止作戦】

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◎サンフィールド領内に潜んでいるドライールド領兵の拘束

◎並びに、領外に展開しているドライールド領兵の拘束

◎領内の潜伏兵は身元を確認の後、拘束対応する

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ザックがその内容を訊いていた所…


(大雑把過ぎないか?)


とは思ったが…仕方ないだろう。現代の警察機構と違い、捜査の技量も作戦を立てる為のノウハウも未熟なのだから…魔法を使って様々な確認や察知などはフォローは可能だろうが…


(人海戦術になるんだろうけど…衛兵と私兵の総人数ってどんくらいいるんだろ?)


気になったのでザックが婦人に訊いてみた。すると…


「そうね…全部で100人くらいかしら?」


「え…と。それでサンフィールド全体を隈なく調査するんですか?…」


「まぁ…そうね」


どれくらい調査に時間が掛かるのか。先程提出した地図からすれば、サンフィールドはだだっ広い砂漠の中の領地だが、無駄に広いのは貯水池が100個もあることからもわかる。領地の傍を走る河川も1つや2つではなく、凡そ10はあるのだ。勿論貯水池の傍を通ってない河川もある為、支流を人工的に掘って用水路も多く走っている。…要は1つの領地というよりは小国というべき広大な土地を擁しているのだった…


(100人じゃ全然足りないんじゃ?…それに伝令兵が来て待っているってことは…もう作戦も第2段階…潜伏兵が準備を済ませて…後はタイミング次第では外の兵たちが入って来るってことだよね?)


勿論、この場所にいる用兵できる人員が100人であり、区画分けしている別の場所にも衛兵などが配置されてるんだと思うが…今から作戦内容を伝えに行ってそれから内容を話して…そして次へ…とやってたら、絶対間に合わないと思われる。


(はぁ…仕方ない)


ザックは他国の…縁があるとはいえ、マウンテリバーの王様や重鎮たちから見れば反逆と思われそうだなぁ…と思ったが。明日は我が身が危うい…となれば仕方ないと考え、伝家の宝刀を抜く思いでミランダ婦人に協力の申し出を持ち掛けるのであった…



「それ、本当、なの?」


「ええ、まぁ。火の粉を払う…ということであれば、被害が事前に抑えられればと…」


ミランダ婦人は息を飲み、ザックの申し出が信じられない…と思ったか、真偽の確認をする。


「それは…助かるといえば助かるのだけれど…でも…お国にバレたら…断首物よ?」


「そこはそれ…危険が去ったら証拠は全て綺麗に消し去りますし…大丈夫ですよ…多分?」


持ち掛けた内容はこうだ。



◎潜伏兵の調査に掛ける人員が少な過ぎる為、時間が掛かる…と思われる

◎その人員の少なさを埋める為、サポート用に汎用ゴーレムを1万体提供の用意がある

◎これから創造する為、創造用に素材と場所の提供をお願いしたい

◎また、その創造場には人が入らないように、監視も外して貰いたい



…概ね、こんな内容だ。また、MPポーションはセルフで用意できるが、改めて用意して貰うことも追加した。流石にザックの異様な魔力量まで漏らす気はないからだ(婦人にはバレバレだったとしても、私兵や衛兵たちまで広めるのは危険そうなので)


「…余り突っ込んだ質問は控えておくわね?…では、正式に依頼するので少し待ってね?」


依頼…と聞き、ザックは探索者の資格は剥奪されている…といい掛けるが、


「別に一般人の技術持ちに仕事を依頼するのは普通のことなのよ?」


とウインクされ、視線で座らされる。


(あはは…敵わないなぁ…)


流石、母の包容力を持つ女性だ…とザックは大人しく待つことにした。その後ろでレムがモヤモヤしていたが、部屋から婦人が去るといきなり抱き着いて来たのにはビックリしたが(苦笑)



「はい…これでおっけーよ」


作成した依頼書に必須事項を書き込み、抜けが無いか確認する。そして改めて依頼内容を確認する。



【緊急依頼】

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◎依頼者 :サンフィールド領主婦人「ミランダ=サンフィールド」

◎依頼内容:ドライールド領から来た潜伏中の兵たちを検挙する為の汎用ゴーレム兵の生産(1万体)

◎生産仕様:最大維持期間は1箇月(稼働魔力込みで充填は不要)

◎報 酬 :大金貨1枚(生産用素材と生産場賃貸費込み)を前払いし、成功報酬として後払いに同額を支払うものとする

※本案件が終了次第、ゴーレムは自然崩壊するとする(追記要項)

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「…こんなもので宜しいかしら?」


婦人が依頼書を凝視したまま固まってるザックの反応を待っていたが、1分経っても2分経っても反応が見られないのでそわそわし…そして遂に訊くことにした。


「あ…なら、外の砂漠、ありますよね?」


「砂漠?」


領主の館は比較的町の外側に近く、砂漠は目と鼻の先にある。敷地の外壁の外には砂漠の一部が迫ってるくらいだが…


「あるわね…それが?」


訳わからんとクエスチョンマークを浮かべながら婦人が訊くと、


「その砂漠をゴーレム生産拠点にしてもいいですか?」


「え?………もう1度お願いできるかしら?」


聞き間違えたかな?…と思ったミランダ婦人はザックに「わんもあぷりぃ~ず!」…と訊き返すのだったw


「え…と」


何ていえば理解できるかな…とは思ったが。馬鹿正直にいうと、今後…砂の採取が困難になる可能性がある。依って嘘をでっち上げることにした…半分は本当のことを含めるのがバレ難くなるのだ!



「成程ね…それは助かるわね」


何といって誤魔化した…否、説得したか?…それは、


「砂漠にゴーレム工房があるなんて夢にも思わないでしょうし、万が一襲撃があっても町中よりは被害が最小限で済みますよ?」


…と説明したのだ。砂漠に工房は造る…といってもゴーレムはストレージで錬金して創るので工房みたいな設備は不要だし、せいぜい出来上がったゴーレムたちの一時待機場としてでしか利用しないだろう。どちらかといえば…


(砂の採掘場…として利用するのがメインだしなぁ…)


という訳であるw


「では、早速準備して…それから作業に入ります」


「はい…宜しくお願いね?」


暫定作戦室をザックはレムを連れて出る。シャーリーは念の為、領主の館周辺を見て貰っている。流石にサンフィールド全域の索敵は不慣れもあるし、仮に敵性体に発見され(ることはまずないだろうが…)たらドライールド側に要らない情報を与えることになる。


「さて…行くか」


「はい」


まずは短距離転移を実行する。目標は外壁の外。レムと手を繋いでいたので一緒に転移し…


「きゃっ!?」


「おおっと!?」


思ったより砂漠側が低くなっていたせいで(高低差凡そ1mだが)いきなり足元が無くなり…


ぼすっ!


と、お尻から砂漠に落ちたのだった。


「痛ててて…」


尻を擦りながら立つザック。


「む~…」


痛がってはないが格好悪いとムクレるレム。


「あはは…ごめんごめん」


と、手をレムに差し出すと、


「む~…」


と、ムクレっぱなレムが差し出された手を握り…


「えいっ!」


と、引っ張って


「おわぁっ!?」


ぽすっ!


…と、レムの膝枕にザックが器用に着地する。勿論、後頭部がだw


「あ、あのぉ~…レムさん?」


「…」


「これからゴーレム創らなきゃいけないんですが?」


「…」


「お~い?」


「…」


ザックがレムに話し掛けるも、一向に反応が無い。そして…


「1時間」


「はい?」


「罰として1時間、膝枕で甘やかされること。いい?」


「ばつ…?」


(それってどちらかというと…ご褒美じゃないでしょうか?)


とは思ったが、レムの表情がニヤケ切ってたので


(まぁ1時間くらいはいっか…)


と思い直し、2人はまだ高い夕日が沈む手前まで、そうしてイチャイチャしていたのだった…


((どーせ誰も見てないし?))


と思いながら…


(…何で誰も見てないって思うかなぁ?)


と、シャーリーと、ドライールド領の兵たちは思っていたがww


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遠視の魔法とかあるしねぇ…w(望遠鏡は倍率低いなら存在はする。クッソ高いけどw)


備考:大金貨2枚の収入の宛てができたw

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