決壊

05 その1 ~それは静かに訪れた…~

幕間のような閑話のようなマロンとトレハンチームとその他の話が進んでましたw

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- 侵攻 -


ごごごごご…


元々大規模な活火山があった此処ハイマウンテンには遥か昔に活火山は殆ど消失している。原因は不明だが残っている活火山はマウンテリバーから遠く離れているし、それこそここ数10年は地震らしい地震も起こってないのだ。人々は老人でも地震を体験したことがある者は居ないようで、地鳴りと響いてくる音に慄き、ある者は逃げ惑い、ある者は信じる神に祈りを捧げる為に地に伏せていた…


※教会があるし、神の奇跡と称して回復魔法があるので、存在すると信じられています。本当は…あ゛、教会関係者に殺されたくないので伏せておきますw



- ザック邸 -


「…こりゃあ」


ザックは屋敷の外を見上げる。が、執務室からでは特に変わりない空しか見えなかったので外に出ることにする。


「あっちは北の方か…」


中庭に出て四方八方を見回す。だが壁が邪魔をして見え難い為、身体強化フィジカルブーストを行使して壁を駆け上がり、壁の上へと身を躍らせる。


「何か雲?…が」


積乱雲のように巨大な雲が湧き上がっていた。その下には暗く垂れ込んでいて大雨が降っているように見える。雷が鳴っており、幾度となく稲妻が走り…積乱雲の覆っている範囲は嵐となっているのだろう…


「夏ももう終わりだってのに、何で…」


季節は夏が過ぎて秋となっていた。何なら北に近いこの地はもうすぐ冬となる。流石に雪はまだ降らないが風が涼しくなっているのもまた事実。季節外れの雷を孕んだ大雨を降らす大雲という訳だ。


「先日のレッドドラゴンの襲来といい、何かが起こっているのは間違い無いだろうな…」


ドラゴンは脅威だが、しっかりと対策をしておけば撃退は可能だ。だが、流石に天候操作などできないザックは嵐を止めるすべは知らない。北を護る者として、マウンテリバーサイドの領主に報せて対策をしっかりと立てて貰う他は無いだろう。流石にマウンテリバー全域を覆う程の全天候ドーム結界を作り出す程の魔力も結界魔法も所持してないのだ。


(…土壁で覆ったら太陽も隠れちゃうし、そんなことしたら怒られちゃうだろうしなぁ…)


石橋の魔石による結界はあくまで対象が限られており、稼働させ続けるには周囲に漂う魔素を吸収し続ける必要があり、ドラゴン程の強敵が放つ魔法攻撃を弾くにはマウンテリバーサイドの(貴族街の)住民から魔力を吸収する必要がある程だ。


※魔力吸収するのに最も近かったのが貴族街だったというだけ。後、マウンテリバーサイド全域から吸収するには効率が悪いという理由もある。



- 領主邸 -


「何?…そうか」


使用人からザックから渡されたという親書を受け取り、領主が封を切って読みだす。


「…これは本当なのか?…しかし…」


暫く黙考する領主。そして執務席に着くと、便せんにペンを走らせ封蝋をして待機していた使用人に渡し、


「こちらを冒険者ギルドに。こっちは探索者ギルドに。最後の封書は衛兵詰め所に頼む」


使用人は3通の封書を受け取り、執務室を退室した。そして領主は深い溜息を吐き、


「…間違いであればいいのだが」


と、窓を通して空を見上げるのだった…



- ダンジョン -


ずずずずずず…


間断なく響く地響き。ダンジョン内部は静かに騒がしくなっていく…そう。魔物の群れが道という道を埋め尽くし、民族大移動さながら、ダンジョンの出口へと…地上を目指して移動していたのだ。


〈〈〈ゴブゥ~!?〉〉〉


偶々うろついていたゴブリンたちがその移動に巻き込まれ、蹴り飛ばされ、踏みつけられて圧死した。歩みはゆっくりだったが、確実に進んで来るその威圧さに逃げられず、ダンジョンに産み落とされた僅かな時間の後に、同じ魔の者たちによってその短い生を終えたのだった…。尚、冒険者や探索者たちは上からの命令でダンジョンには入ることができず、巻き込まれた者は居なかったようだ。



- マロン -


「…!」


ダンジョン第5階層で歩いていたマロンが何かに感付き足を止める。


「…」


ケモミミを暫くピコピコとあちこちに向けていたが、次の瞬間にはその場から掻き消えるように姿を消すマロン。まるで忍者のような身のこなしだが…アサシンメイドだw


「これは…」


天井に張り付いたマロンが小声で呟く。流石に雲霞の如くな数では敵わないと判断し、天井に張り付いたのだが…気付かれてしまう。


〈GYAU!〉『曲者!』


最初に指差し天井に張り付いたマロンを発見する魔物の叫び声?に、一斉に視線を向ける他の魔物たち。丸腰の者たちは地面に転がっている小石などを掴んで投げつけ、獲物を持っている者は弓なら矢を射かけ、投射武器なら投げつける。流石に近接武器を持っている者たちは投げつけるようなことはしなかったが、攻撃を避けて降りて来たマロンに向かって走り出した!


「ちぃっ!?」


マロンは指を指された瞬間、視線が一斉に向けられたと同時に壁へと向かって天井を蹴る。が、次々に矢が後追いして来る為に壁に着地してもすぐに蹴って場所を移動せざるを得なかった。やがて地面に着地し、四方八方から…最早壁といっていい程の敵が迫り、最期の切り札を…といっても攻撃ではなく、防御の手段ではあったが…使う!


「結界!!」


悠長に複数の結界符を設置してる暇は無かった為、その場に1枚だけを緊急使用する!…そして構築された結界に阻まれて近接攻撃しか攻撃手段を持たない集団がその場に留まる。尤も、後から押し寄せてくる集団に圧し潰されて圧死する者が後を絶たなかったのだが…少なくとも絶叫が何度も耳朶を打っているので数10体は味方のせいで圧死したと思われる。


「あ、レベルアップした。これって俺が斃した扱いになるのか…」


久々にレベルアップしたマロン。一体どれだけ高レベルなのだろうか…


「それよか…どうやってここを脱出するかだな…。それと、ダンジョンの現状を報告に戻る必要があるな…」


そう呟くが、本音はそこではない。


(…暫くダンジョンの掃除を控えろっていわれてたのにこの様か…後で大目玉だよなぁ…はぁ)


と、マロンはお叱りや小言の方が気になるようで…



「へっくちっ!!」


「おや、風邪ですか?」


「いや…何か噂されてる気がする」


「そうですか…おや、雨が降って来そうですな…そろそろ室内に戻られては?」


「あぁ…わかった」


嫌な風だ…そう思いつつ、ザックは室内へと戻るのであった…


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とうとう魔物の群れ…否、群衆がダンジョンの深層から湧き出して来るのでした…果たして巻き込まれたマロンは無事に戻れるのでしょうか?…そしてマウンテリバーは今度こそ絶望の淵へと追いやられるのでしょうか?…ダンジョン入り口の門扉は突破されてしまうのでしょうか?…だが、それは実際に成ってみないとわからないことばかりです…次話を刮目して待て!(どこのアニメのパクリやねん!w)



備考:

探索者ギルド預け入れ金:

 金貨712枚、銀貨802枚、銅貨1667枚(尚、両替を希望しなければ貨幣単位で加算される一方となる)

ストレージ内のお金:

 金貨282枚、銀貨1020枚、銅貨781枚(変化なし)

財布内のお金:

 金貨2枚、銀貨78枚、銅貨80枚(変化なし)

総額(両替した場合の額):

 金貨1015枚 銀貨25枚 銅貨28枚

屋敷の備蓄額:

 金貨2063枚、銀貨55枚(変化なし)

 ミスリルインゴット30kg(変化なし)

今回の買い物(支出金):

 なし

ザックの探索者ランク:

 ランクB

本日の収穫:

 特になし

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