03 その3 ~ダンジョンの深層からドラゴンが現る!~
①マロンが人命救助に活躍した(第3階層で偶然拾って第10階層経由で戻った)
②ランクA冒険者のパーティを蒸発させた竜種…レッドドラゴンが現れた!
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- 竜の咆哮 -
〈〈〈ぐぅおおおおおお~~~~!!!〉〉〉
〈ぐるるるる…〉『蹂躙せよ…』
※自動言語翻訳などの特殊スキルを持ってない場合は『』の内容は聞き取れない
いち早く気付いた人々は逃げ惑い、竜たちはその様子を見て口角を歪ませて…ニヤニヤと笑ってるようにも見えたが、落ち着いて観察している者は存在しなかった。そして、先程「蹂躙せよ」と命令した個体の傍に居る3体の竜たちが息を吸い込み、その喉の鱗が赤熱し始める。ブレスを吐き出す準備をしているのだ…
〈ぐるる…〉『放て…』
攻撃命令の
ぱきゃっ…
と、割と情けない音を発して四散して消える。
〈…ぐる?〉『…は?』
ちなみに竜たちはマウンテリバーサイド側の深い渓谷の崖…割と深い位置から飛び出して斜めに上昇して来た為に、石橋中央よりノースリバーサイド側へと位置を取っている。そしてその巨体を見せつけて示威行動を取る為に地面より凡そ50m程上空に位置取りをしている状況だ。
〈…ぐるるるる…ぐるぅっ!!〉『…障壁か小賢しい…攻撃を続けろっ!!』
リーダーらしいレッドドラゴンの号令一下、残りの部下らしいレッドドラゴンたちがブレス弾を吐き始める。だが…
ごおおっ!…ぱきゃっ…
ごおおっ!…ぱきゃっ…
ごおおっ!…ぱきゃっ…
…と、全弾情けない音を出して四散し消えて行く。ドラゴンの吐くブレスは炎そのものではなく、炎+風属性の混合魔法だ。業火に見える炎は炎属性魔法で発生させ、風属性魔法で打ち出している。俗にいう連続して吐き出すブレスも継続して炎属性魔法を風属性魔法で吹き出しているに過ぎない。竜種に依っては水属性だったり毒属性だったりするが、基本的に風属性魔法で吐き出す補助をしているのはほぼ一緒だ。
〈ぐるる…〉
〈ぐるぅおおっ!!〉『弱音を吐くな、ブレスを吐け!』
だが、数10発ものブレス弾を吐き出したリーダー以外のレッドドラゴンたちは力尽きたのか1体、また1体とその高度を落とし、運がいい者は這い出てきた穴に舞い戻ったが無理をして魔力不足に陥った者はそのまま奈落の底…ではなく、深い渓谷を流れる川に落ち、川底に叩き付けられて何処かにか押し流されるのだった!
・
・
「これは…もしや?」
若しかしなくともザックのお手柄だ。石橋に設けた防御用の魔法陣は物理的にも魔法的にも、ノースリバーサイドから攻め来る魔物たちを防ぐという目的に特化したもので、石橋に限らず空から攻め来るであろう魔物にも対処してあったのだ。それはマウンテリバーサイド側の最外壁に沿って伸びており、見えない障壁として機能していた。尚、それだけ巨大な魔法陣を維持する魔力は設置した魔力タンクを担っている魔石だけでは維持できない為、毎日「貴族街に住んでいる住民たち」からも少しづつ、気付かれない量を吸い取って後から増設した魔石に貯め込んでいたのだ!w(既存の魔石は維持する為に周辺の空気中のマナを吸収しているが、石橋上の魔物の侵攻を阻止する程度しか賄えない為)
〈ぐるるるるる…〉『ふざけおって…』
リーダードラゴンが怒り心頭となり、体表の鱗がやや暗めのダーククリムゾンから明るい色に変化する…恐らく体表温度が上がり、赤熱してるのだろう!
〈ぐらぁあああっ!!〉『喰らえっ!!』
咆哮一発、瞬時に赤熱した喉の鱗。大きく開く顎から炎の塊が漏れ出て…。それを見ていた住人たちは今度こそダメだろうと目を瞑り、腕で顔面を庇う仕草をする。無駄な行動ではあるが咄嗟の行動だ。だが…いつまで経っても最期の時はやって来ない…
「…?」
リーダードラゴンは大顎を大きく開いたまま、空中に静止していた。一番距離が近い者が確認すれば見えただろう…そのドラゴンの背に立っているアサシンメイドの雄姿を…
「ふ…また詰まらぬモノを斬ってしまった…」
といったかどうかは不明だが、両の手に持つ両刀をシャキンと鞘に納める。と同時にドラゴンの首がずれて行き…そのまま渓谷に墜ちる前に消える(貸与していたアイテムボックスに納めたと思われる)…そして本人は渓谷に落ちないように石橋に着地し、ノースリバーサイド側へと立ち去ったのだった…
「で、伝説だ…また伝説が生まれたぞぉっ!!」
と、平民街、貴族街問わずに盛り上がりを見せるマウンテリバーサイド。何しろ7体ものレッドドラゴンが現れ、斃したのはその内の1体だけとはいえ(他6体は魔力欠乏でダンジョン深層に撤退か渓谷に墜落…死亡したかどうかは渓谷が人の手により降りることが現状では不可能なので未確認)人の手で斃したのだから!(その恰好からクォーター獣人のマロンということはすぐに判明したとのこと)
・
・
「ふぅ…まさか毎日のルーティンをこなそうとマウンテリバーサイドに向かう途中であんなものに出くわすとはな…」
マロンは
唯、防衛を任されたノースリバーサイドではない渓谷の川の上の為、目撃した時はどうしようか少しだけ迷ったのだが…マロンは本能に任せて跳び付き、その首を斬った。いや、マウンテリバーサイドに向けてブレスを吐く所だったのでそれを阻止しただけだ…といういい訳もできるだろうという計算に基づく判断だったのかも知れないが(苦笑)
「被害が出る前に対処ができたし証拠もある。叱責は無いだろう…」
逆に褒美がでるかも知れないなと、少しウキウキなマロンであったがさて…
- 冒険者ギルド -
「何ぃっ!…レッドドラゴンが現れてすぐ斃されただとっ!?」
見張りの塔から連絡を受けてから数分後には斃されたとの報告が入り、混乱する冒険者ギルド。住人の避難誘導の体制を整えつつ防衛の人員を集めてる所でそんな報告が入れば無理もないだろう。
「冗談を聞いてる暇なんぞ無いんだぞ!」
「いえ、それが…」
見張りの塔からの連絡で確かな情報だと改めていい直すギルド職員。通信用の魔導具を持っていたので、
「ちょっとそれを貸せ!」
と、副ギルド長が奪うと見張り塔の兵に確認を取る。
「…今聞いたんだが…本当なのかっ!?」
『あぁ、本当だ。レッドドラゴンは現れた7体の内、6体は崩れ落ちて…恐らくは渓谷に落下。魔力欠乏で脱力して落ちて行ったように見えたな…』
「残りの1体はどうした!?」
『ここからじゃはっきりとは見えなかったんだが…頭にケモミミを付けたメイド?さんが首を落とした…信じられないが、私にはそう見えた』
副ギルド長は噂に共通する項目を聞き、「はぁ~~~…」と深く溜息を吐く。
「わかった。またトビトカゲの連中が出て来るかも知れん。引き続き見張りを頼む」
『…了解した』
ぶつっと通信用の魔導具から通信切断の音が聞こえ、ぽいっとギルド職員に放り渡す。
「知ってるか?」
「え、何をです?」
「やたらと強いケモミミのメイドだよ」
「あぁ、マロンさんですよね?…あのノースリバーサイドのお屋敷の」
「そうか…」
興味が失せたのか、副ギルド長はギルド職員から視線を切って、未だにどたばたと走り回っている他のギルド職員に怒鳴り散らす。そう…マロンのお陰で無駄になった準備作業の中止を怒鳴っている訳だ。
(…まぁ町に被害が出ないことはいいんだが…何かコケにされたようでムカツクな…)
イラつく表情を隠そうともせずに、冒険者ギルドの副ギルド長は「作戦は中止だ、聞いてるのかっ!?」と再び怒鳴るのだった…
- 探索者ギルド -
「本当なのかっ!?」
「え、えぇ…見張り塔からの連絡によれば…」
探索者ギルドでも周辺住人の避難誘導の準備を進めていたのだが(流石にドラゴン程の大物を防衛できる程の人員は抱えている探索者には居なかった為)突如として知らされたドラゴン撃退の報に戸惑っていた。
「一体誰が…」
「冒険者のランクAパーティですかねぇ?」
「んな訳あるかっ!?」
副ギルド長の呟きにお気楽な調子でギルド職員が返事すると、余りにもお気楽極楽とんぼな返事に怒鳴り散らす副ギルド長。最初にブレスで骨も残さずに殺されたランクAパーティがこの冒険者ギルドに
「じゃあ誰が…他のランクAパーティが立ち寄ってるなんて話しは聞いてませんし、ましてやランクSパーティなんてこんな辺境に立ち寄ることなんて無いですよ!?」
恐らく救援の連絡を入れても忙しく飛び回っている者たちだ。仮に連絡がついても到着までに平気で1年と掛かってしまうだろうし、他のランクAパーティについても近場に偶々立ち寄っていた…なんて幸運でもなければ来ないだろう。
「わからん…兎に角現場に行って情報を集めて来い。どんな情報でも構わん、急げ!!」
「は、はいっ!!」
ギルド職員は副ギルド長の命を受け、走って10分程離れている貴族街へと向かうのだった!
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マロン無双。勿論、武具も一流品でなければそもそもドラゴンの首を叩っ切るなんてできませんが…(苦笑)
備考:
探索者ギルド預け入れ金:
金貨712枚、銀貨802枚、銅貨1667枚(尚、両替を希望しなければ貨幣単位で加算される一方となる)
ストレージ内のお金:
金貨282枚、銀貨1020枚、銅貨781枚(変化なし)
財布内のお金:
金貨2枚、銀貨78枚、銅貨80枚(変化なし)
総額(両替した場合の額):
金貨1015枚 銀貨25枚 銅貨28枚
屋敷の備蓄額:
金貨2063枚、銀貨55枚(変化なし)
ミスリルインゴット30kg
今回の買い物(支出金):
なし
ザックの探索者ランク:
ランクB
本日の収穫:
マロンの狩ったリーダーレッドドラゴン1頭丸ごと(但しダンジョン産魔物の場合、ドロップ品に変化しているので体と頭部がそのまま回収できているかは不明)
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