02 その2 ~やってきた災厄~
マロンのメイド服(の性能)を目当てに群がる民衆…ではなく、貴族と金を持っている商人と死と隣り合わせの戦闘民族…ではなく、冒険者たち(流石にマウンテリバーの探索者たちは金持ちが居ないのか群がっては来なかったが…)コナンとの相談の結果、素材であるミスリルインゴットを5kgと金貨500枚を持って来れば作ってやるぜ!…と、これなら買おうという奴は居ないだろうと思ったのだが購入者が3人も居たり…金持ちって居るんだなぁ~と思いつつ、それぞれ(貴族と大商人と冒険者の3名)に素材と前金を要求(ミスリルインゴット5kgと金貨250枚)すると、冒険者は手持ちに無かったのか「採掘してくるから少し待ってくれ」と。貴族と大商人は素材と前金は即用意したのだがデザインを考えるからと待つことに…冒険者の方はデザインはお任せだったのでミスリルを採掘して来たらすぐに取り掛かったけどね(無難に丸首シャツをチョイスしたら…お仲間の皆さんが余りの適当なデザインにか、それとも大金と大量の素材をせしめたのにみすぼらしいシャツ1枚を寄越したせいなのか…両方かも…憤慨してたかも?)貴族と大商人の分はデザインを用意するといってたので採用したけどね。でも、命の危険度は冒険者よりは下がるので性能はかなり落としたけど…3人とも喜んでいたようなのでいいかな?…後金も同様に金貨250枚。あ、コナン。これ金庫に入れといてね!
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- ザックがマロン服(…と、世間が呼称)を創っている頃… -
「ダンジョンを閉鎖しろ!今すぐにだ!!」
「し、しかし!」
「しかしもカカシもねぇっ!…急げ!!!」
第1階層に続く階段通路。その最外に設置されている大仰で重厚な門扉が今閉鎖されようとしている。流石に中に入っている人間を閉じ込めることは無かったが(10階層毎に設置してある転送口から外に出ることはできる)第10階層に到着してない探索者を見捨てる訳にもいかず、探索する届出を出している最後の者が出てくるまで待つ羽目に遭い…係員の責任者が慌てて閉鎖の命令を出した所なのだ。下っ端は、
「本当に誰も入っていないのか上に確認しなくてもいいのか?」
…と言外に責任者に訴えていたのだが、彼の目を見て、
(あぁ…こりゃ何いっても聞いてくれないな)
と諦め、いわれるが儘に閉鎖した訳だ。
・
・
ずずずずず…どぉぉぉ~~~ん…
内扉が何重にも降りていき、最後に観音開きの重厚な門扉が閉まり、自動で
「ふぅ…これで、ひとまずは安心だな…」
ダンジョン出入口監視責任者は冷や汗を拭い、へたれ込む。とそこへマロンが現れ、
「む?…ダンジョンは閉鎖中なのか?」
と訊く。
「え、あれ…マロン…さん。聞いてないんですか?」
「何をだ?」
「今日、緊急でダンジョンの閉鎖を行うって…何でも、深層で化け物が発見されたとかでランクの高い冒険者のパーティが1つ全滅したとかで…」
「ほほう…」
話しをする下っ端監視員の話しに段々と剣呑な光を湛えだしたマロンに、監視員は
(あちゃぁ…この人にこういう話しをしちゃ不味いっていってたような…)
と思い出し、段々と声量が下がっていって尻切れトンボとなる。
「転移魔法陣も封鎖したのか?」
と訊かれ、
「あ、いえ…あれは我々の権限では…というか一度停止すると再び元に戻るかどうかわかりませんので…って、えぇ!?…ちょおっ!!」
ずかずかと転移魔法陣へと歩き出すマロンに慌てて声を掛けるが、手を伸ばした時点でマロンは魔法陣の上でその姿を消してしまうのだった…
「俺ゃ知ぃ~らねっと…」
耳クソを穿りながら一部始終を見ていた監視員の責任者が呟く。
「見てたんなら何で止めなかったんですかっ!?」
と叫ぶが、
「いやぁ~…俺、あの姉ちゃんにぶっ飛ばされたことがあってよぉ~…すげぇ怖いんだぜ?」
と苦笑い。どうせセクハラでもカマそうとした結果だろうと思うが、「はぁ~」と溜息を吐き、
「仕方無いですが上に報告しませんとね…」
と、トボトボと責任者にこの場を任せて報告に行く下っ端だった。副ギルド長に怒鳴られる下っ端監視員だが相手が
- ザック邸 -
その日の夕方頃、割と泥だらけで戻って来たマロン。玄関でその姿を認めたザックはいつものように声を掛ける。
「おかえり~、マロン」
「戻った」
メイド服は汚れてないがそれ以外の場所…露出している頭部や腕と足はそこそこ汚れており、すぐ風呂にでも行くと思ったんだけど、今日は報告することがあるという。
「そう?…まぁ取り敢えず濡れタオルで汚れを落としたら?」
と、ストレージに仕舞っておいたタオルを取り出し、ウォーターで濡らしてマロンに渡し、例の僕専用の食堂へ一緒に行くことにする。若しかすると他人に耳に入れたくないことかも知れないからね。途中、メイドのニナとすれ違ったので飲み物とお菓子を運ぶようにいっておく。
・
・
「…で、何があったの?」
「うむ。実は………」
時系列に話し始めたのではっきりいって長い。ので、ここでは要点を纏めた。報告は以下の通りだ。
【ダンジョンであったことの報告】
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◎出入口が封鎖されていた→転移魔法陣を使って中に入った
◎第10階層から第1階層まで掃除を実行した(いつもの魔物退治)
◎封鎖されているのに逃げ遅れた探索者とその他数名が浅い階層に居た
◎仕方ないので第10階層までエスコートした
※その階層…第3階層から下は掃除済みなので特に何をするでもない
◎第10階層まで行ったことがないのか、全員足が遅くて戻るのに時間が掛かった
※といっても普通に夕方には戻って来たんだけど…
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「えっと…じゃあ何で泥だらけに?」
土色の付いた濡れタオルを返して貰い、
「いや、その…」
少々頬を赤く染めたマロンがいうには、救出した中の1人が感動したのか、マロンに抱き着いてお礼をいったそうだが、その衝撃で足を滑らせて…丁度水撒きをして泥だらけになっていた広場に倒れ込んだとか…
「そっか。よく怒らなかったね、エライエライ…」
と、頭を撫でようとして手が届かなかったんだけど…頭を下げて来て撫でさせて貰えた。うん、何この可愛い生き物…じゃない。ケモミミが柔らかくていつまでも触っていたかったけど、くすぐったかったのかすぐ頭を上げてしまった。物凄く残念だ…
「いや、その…。どうせメイド服は
「でも露出部分は泥だらけだったよね…まぁいいか」
細かい、髪の毛の奥に潜り込んでしまった泥などは取れてないと思うけど風呂に入れば十分落ちるだろうし、何なら
・
・
「じゃあ質問。ダンジョンが閉鎖されてたっていってたけど、その原因は?」
マロンは少し考え、
「聞いてない。だが、ダンジョンに侵入直後に感じたのだが…いつもと雰囲気が違うんじゃないかと思った」
(閉鎖理由も訊かずに入ったの!?)
と、後でお叱りが来るかもなぁと思いつつ追加質問。
「第9階層から上に向かって掃除したんだと思うけど…何か変わった所は?」
「む?…そうだな。いつもより若干だが雑魚どもの勢いがあったか?」
(つまり、何か脅威が迫ってたってことで狂暴化してたってことかな?)
低層の魔物を雑魚っていい切っちゃうくらいにはマロンは強い。強いんだけど、
(油断してるといつか寝首を掻かれるよ?)
…とは思ったが今はいうべき場面じゃないので黙って置く。
「最後に。第10階層には侵入したんだよね?」
「あぁ。転移魔法陣は10階層単位でしか転移できないしな」
つまり、正面玄関…否、正面の出入り口を閉鎖しても転移魔法陣は稼働中と…大丈夫なのかと思ったが魔物に魔法陣に魔力を流し込んで稼働させる程の知性を持った存在は今の所は報告はされているとは聞いてない。聞いてないが…
(大丈夫かな?…う~ん…)
不安しか感じられないけど、今の所は考えてもしょうがないかと思うしかなかったザックであった…
(そういや先日、深部で何かあるっていってたっけ…)
マロン本人が行った報告であったが、当の本人はもう忘れてるようだ。こちらが黙っていると、
「取り敢えず今の所はこれで全てだ…」
といって出て行こうとする。僕は慌てて
「救出した人たちは?」
と訊くと、
「詳細は後日探索者ギルドで聞けると思う」
といい残して出て行った。
「はぁ…早く風呂に入りたいんだろうけど、報連相はしっかりしてくれないとなぁ…」
まぁしょうがない。猫だもんなと思い苦笑いするザック。マロンに聞かれれば、
「俺は虎のクォーターだ!!」
といって怒るんだろうなぁ…と思いつつ。え?…いやあくまで予想だけどね。毛皮部分の模様とか虎っぽいし…毛皮部分が耳しかないけど(苦笑)
- そして受注してた服が全部売れた後… -
ずどぉぉん…
それは頻繁に響いていた。まるで群発地震のように…人々は最初でこそ焦り、町から逃げ出そうとしていたが地響きがある以外に対した実害が無いと知り、次第に気にしなくなり始めていた。響いて来る時間は特に規則性もなく、音と共に響けば
「またか…」
とか、
「今日は大きいわね…」
など。稀に1日何も無ければ、
「あれ?…今日は地響きあったっけ?」
「無かったよ。静かなもんだ…」
「明日も静かだといいなぁ…」
「そうだな」
と、毎日1回起きるイベントのようになっていた。これでは気が緩むの仕方ないだろう。だが、気が緩んではいけない者も居るしダンジョンが使えなくて困っている者も居る。
- 探索者ギルド -
「おい!いつまでダンジョン閉鎖してんだよ!!」
「こちとら生活が懸かってんだぞ!…いい加減解放してくれないと宿を追い出されちまうんだ…どうにかしてくれよ!!」
探索者たちだ。主に低層で小物を狩って生活している者を中心に受付でダンジョン解放を受付嬢たちに迫っていた。
「いえ…まだ開放してもいいと聞いておりませんので…」
「危険が無いと確認されるまでは何とも…」
と、上から指示が無ければ出入口の解放はできないとの一点張りで、いい加減探索者たちの我慢も限界であった。
「宿を追い出される…とのことであれば、ギルドで当面の宿代を貸し出しますが如何でしょう?」
と、金貸し業に精を出すギルド職員も居たが…
「けっ!…んな高利貸しに手を出すバカがいるかってんだ!!」
「そうそう…。今時トイチなんて高利、その辺の闇金でもやってねーよ!!」
と、散々ではあったようだがw
・
・
そして更に1箇月が経ち、マウンテリバーはダンジョンではなく…もう少し離れた場所。マウンテリバーサイドとノースリバーサイドの間…深い渓谷から侵略を受けることとなる。彼のランクA冒険者チームを襲った…竜種たちの侵略を!
〈〈〈ぐぅおおおおおお~~~~!!!〉〉〉
大気に響く重低音の怒号とも思える、叫び・雄叫び・号砲…それは、ダンジョンに棲む魔物たちからの侵略開始の
〈ぐるるるる…〉『蹂躙せよ…』
深い渓谷に開けられた小さな穴は、中から這いずり出てくる竜たちにより少しづつ大きくひび割れて拡大されていくがやがてじれったくなったのか、
かあああっ!!!
というつんざく音と共に渓谷は真っ白な光で満たされ…幸いにも直視していた者が居なかった為、失明する者は居なかったが…穴は竜が四足で立った状態で余裕で通れるまでに拡大されていた。
「お、おい…何だあれは!?」
偶々ノースリバーサイドに続く石橋の方を見ていた者が気付き、大声を上げる。それは貴族街の外側に位置する平民街からも余裕で視認できる、大きな赤い巨大生物だった…そう、レッドドラゴンである!…1体でも手を付けられない強力な存在がばさばさと背中の羽を羽ばたかせ(実は風系魔法で制御して浮いてるので羽ばたかせる意味は殆ど無いw(示威行動か?))、数えるだけで7体の赤いうろこを太陽光に反射させて浮遊していた。
「な、な、なぁ~っ!?」
訳がわからず駆け出す男。それに釣られててんでバラバラに駆け出す付近の住人達。わかり易い程のパニックが発生してしまう。それから少し遅れて見張り塔の兵が異常に気付き、しきりに鐘を鳴らし始める。見張り塔はノースリバーサイドではなく、東西南と中央部に配置されている。北には存在しないのだ。そして見張っているのはそれぞれの方角だった為に気付くのが遅れたのだった(偶々近くを走る住人が「北からドラゴンがぁ~!!」と怒鳴ってたのに気付き、確認した所…という訳だ)中央部の見張り塔の兵は魔道具の通信装置を用い、各見張り塔に連絡を入れつつ町を護る衛兵詰め所と冒険者ギルドに連絡を入れる。
「北のノースリバーサイドに掛ける石橋の付近からレッドドラゴンが出現。至急防衛に当たられたし」
…と。だが、此処から見えるだけでもその数は5体は確認ができる。町の護衛戦力と冒険者ギルドのギルド員たる冒険者たちの戦力だけでどれだけ斃せるか…例え1体だけでも絶望的なのは見えている。だが、やって貰わねば…非戦闘員である町の住人ができるだけ逃げる時間を稼いで貰わねば…それよりも、
「一体…何処からやって来たんだ、あのドラゴンたちは…」
見張り塔の兵は、その疑問を持たざるを得なかった…
━━━━━━━━━━━━━━━
第26階層のブレス一発でランクA冒険者たちを蒸発させた個体が居る群れでSHOW!
そして、調査隊たちの苦労は!?…「無駄むだムダぁ~っ!!!」…デュオかYO!?
備考:
探索者ギルド預け入れ金:
金貨712枚、銀貨802枚、銅貨1667枚(尚、両替を希望しなければ貨幣単位で加算される一方となる)
ストレージ内のお金:
金貨282枚、銀貨1020枚、銅貨781枚(変化なし)
財布内のお金:
金貨2枚、銀貨78枚、銅貨80枚(変化なし)
総額(両替した場合の額):
金貨1015枚 銀貨25枚 銅貨28枚
屋敷の備蓄額:
金貨2063枚、銀貨55枚(変化なし)
ミスリルインゴット30kg
今回の買い物(支出金):
なし
ザックの探索者ランク:
ランクB
本日の収穫:
なし
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