59 その10 ~七面倒臭い貴族意識を持つ元貴族の女~

元貴族の奴隷医者「ディアナ」…彼女が要求した医療用物資と家具だが、医療用物資は兎も角、要求した家具の総額は屋敷の備蓄資金を大きく上回る金額だった。ザックは「どんだけ金遣いが荒いんだっ!?」と思わざるを得なかった…

━━━━━━━━━━━━━━━


- マウンテリバーサイド -


「此処が貴族街の商店街かぁ…」


ザックと執事部門一同は…コナンは仕事があるので屋敷に居残りである…マウンテリバーの貴族街へとやって来ていた。普段は買い出しに使っている幌馬車でメイドと雑務役の2~3名でやって来るのだが、それでは示しが付かない…というよりは門前払いを喰らう可能性があるということで、立派な2頭立ての6人乗りの馬車と馬ゴーレムを新造したのだった…無論、全て土から創ったのだが、外観は生きているような馬ゴーレムに木製のような豪奢な馬車である(そんな立派な物は見たことがないのでコナンに絵を描いて貰い、何度かイメージを修正しながら外観を創り直したのだった…)尚、御者兼、馬車の留守番としてリュウもお供に付いていたりする。



「へぇ~…色々…って程じゃないけどある所にはあるんだねぇ…」


まずは高額商品しか書かれてなかった家具を見に家具屋に来たザックたち。ザルツとダナンに案内され、「これとこれと…」と指差された物を一瞬収納して簡易鑑定した後に戻す。時間にして1秒未満の早業だった為に従業員らが余所見をしていればバレないだろう。


(結果をメモ欄に移動してっと…これで後で参照できるかな?)


何時まで残っているか不明な為、屋敷に戻ったら紙に書き写しておいた方がいいだろうと思いつつ、ザックは家具類全てのデータを取り、次の目的地へ移動する。但し、アクセ類などを扱っている店には行かないのだった…w



「後は…まぁケチる訳じゃないけど、全部買ったら金貨100枚だしねぇ…」


という訳で1つしか買わない物も含め、医療用の器具やら物資を扱う店へと移動して全て単品での購入と…


「え?…最低5つから?」


「はい、申し訳ありませんがバラ売りはしてないんですよ…」


…という物があったので、最低限の個数を1つづつ買って帰るのだった。流石に医療用手袋1つとかマスク1つとかでは売ってないらしい(コスト割れするからだろう)


「ま、まぁ…それでも金貨25枚に収まったからいいじゃありませんか…」


「まーねー…」


重い物を運び込むのはリュウに任せ、ザックたちは軽い物を持って馬車に乗り込む。


「…あ、窓のカーテンを閉めて貰えるかな?」


「あ、はい」


シャッ…と閉められたのを確認し、ザックはストレージに運び込んだ軽量の医療用の器具やら道具を仕舞い込む。


「何度見ても不思議ですね…」


「あぁ…」


ダナンとザルツがそんな会話をしている中、ザックはストレージの中で錬金術「複製」を実行していた。その前に例の砂から物質変換を行使して複製する物の素材を創り出す必要はあるが(砂から直接変換して複製すると非効率な為、複製の効率を上げる為に一旦複製する物の素材を用意しておくといいと最近気付いた(MP的には非効率なのは確かだが複製個数が増える))


「えーっと…これは100箱必要って書いてあるな…」


リュウが搬入作業をしている間、ザックはメモを見ながらストレージに仕舞い込んだ物の複製作業に勤しみ、元となる1セットを除いてストレージから取り出してザルツ、或いはダナンに渡していく。何も無い所からぽこぽこと先程購入した商品が増えて湧き出す様を見た両人は最初、ポカァ~ンとしながら眺めていたが…


「あの…ザルツ?…ダナン?…これ、馬車のカーゴスペースに置いて来て欲しいんだけど…」


と、困惑気味のザックに突っ込まれて、「はっ!?」…としながら慌てて外に運び出していた。


「じゃ、次が出来たらそれも宜しくね?」


そういうと、2人とも「申し訳ありません!」と謝罪しながら運び出して行くのだった…



こうして、アイテムボックス機能を持つカーゴスペースに次々と荷物を運び込み、後は屋敷で増やせばいいと判断したザックは馬車を出して貰う。最後はディアナの衣類だが…


「すぐには持ち帰れませんので、発注しに行くだけで宜しいかと…」


とはダナンの言だ。基本、平民は出来合いの古着を買うものだが貴族は大抵はオーダー物しか買わない為だ。一応ディアナの体のサイズは測ってデータはある為、今日発注すれば早ければ1箇月後。遅くとも3箇月後にはでき上っているという…


「ふぅ~ん…。じゃあどんな物か見るだけでいいかな?」


普通は2~3着を纏めて発注するそうだ。一応、ジャックソン奴隷商会に居た時に買った衣類があるので着た切り雀…という訳ではなさそうだが。


「…それも錬金術って奴で、ですか?」


「まぁ…着れた物になるかはやってみないとわからないけど、ね?」


嘘である。唯、自分の着ていたのは男向けの物だったので女性はまた勝手が違うかも知れないので、ダナンや他の使用人で試して貰う必要があるかも知れないが…駄賃として創造した衣類をプレゼントするといえば、引き受けてくれる者も居るだろう…そんな打算もあったのだが…はてさて?



- 使用人奴隷たちは遠慮をしなかった… -


「どーしてこーなった…orz」


「自業自得かと…」


「うんうん…」


ザックの疲労困憊の台詞にコナンが情け容赦無い突っ込みにザルツの生暖かい表情の上にコクコクと首肯。何故こうなったのか、解説しよう!…それは今から2時間程前のことだった…



「「「ええ~っ!?…お洋服の試着ですかっ!?」」」


平メイドシスターズである(いつからそんなグループ名がっ!?w)


「マジですか?…いえ、本当ですか?…ご主人様っ!?」


「本当に試着するだけで着た服を頂けるんですかっ!?」


「…っていうか、好きなデザイン画を描くだけで本当に作って貰えるって本当ですかっ!!??」


メイドたちが普段根城にし…いや、待機している準備室でそんな話しをすると、姦しく詰め寄って来たのだ!w


「あ、うん…ちゃんと着れるかどうかわかんないけどね…女性向けのきちんとした服なんてそんなにやったことないから…」


そこにそれまで黙っていたイブがニナソラミルムを腕の一振りで黙らせる。3人は、まるで魔法に掛ったように静止して口を閉じる。


「ご主人様…3人の…いえ、わたくしを含めた4人のメイド服の…」


「5人です」


「はっ…メイド長!?」


「5人分です。宜しいですね?」


「は、ははーっ!!」


…という訳で、メイド長を含むメイド服の新作と希望があれば普段着を人数分×3着を作らされる羽目になり、その様子を廊下から見ていた他使用人が別の使用人にいい触らし、「我も!私も!俺も!」…と、ディアナを含まない全員の服も作ることとなったのだった…いや、もう、いいけどさ…どうしてこうなったっ!!!(野郎の分も作るとか…いい触らした奴、見つけたらトイレの罰掃除1箇月だっ!!←清浄化クリーンの魔導具で掃除レスだったのを道具を使って掃除させる罰という訳だw)


ちなみにご老体3人は(料理長のテツジンも含む…36歳だけどな!)声を上げてはいないが、その鋭い視線で「作るよな(ね)?」…と無言の圧を掛けて来ていたので、止む無く作る羽目になりましたとさ…トホホ~…orz



「はぁ…ようやく全員の希望する服のデザイン案と身体データが揃ったか…」


いや、ザックはデータが揃うまで、唯ぼ~…っと待ってた訳ではなく、管理地域であるノースリバーサイドの領域を見て回ったり、依頼があればダンジョンの雑魚掃討(いや、それは嬉々としてマロンが奪って潜ってたので未だに更新階層が3階までとなっているのだが…orz)…殆どの仕事は屋敷の位置するノースリバーサイドやマウンテリバーサイドを繋ぐ石橋の様子を見るに留まっていた。そして3日が経過したその朝に、


「データが揃いまして御座います」


とコナンから報告があったという訳だ。ザックはデザイン画と身体データを書き込んだ用紙をストレージに収納し、ざっと読み込んだ。


「服の素材は…?」


「絹…とまでは申しません。頑丈な魔物素材で宜しいかと…」


キリリとした目で進言するコナンに、


(え…それって普通の絹より上等な魔物素材を使えと?)


と思ったザック。確かに魔物素材なら上部で長持ちなので長い目で見ればコストダウンとなるだろう…シルクスパイダーなどの糸は確かに丈夫だ。だが、ドロップ品を狙うにしても1~3階層では出現しないの…あ゛。


「確か、マロンの行ってる階層だと…」


「居ますな。8~9階層ならば」


そう…それを見越してコナンはああ進言したのだった!w


(…というか各階層のモンスター分布とかドロップ品を把握している?…流石ダンジョンが存在する町の支配階級に所属していた元執事…侮れないなぁ…)


ザックは密かに戦慄せんりつし、「隙を見せたら|殺られる!?…」などと、勝手に恐れおののいていたw



「あ、マロン!」


「む?…どうしたあるじ


夕方、ダンジョン帰りらしい(正面玄関ではなく、勝手口たる物資搬入路から入って来た)マロンを見つけてザックは声を掛ける。


「いや…ダンジョンの8~9階層を潜ることってあるよな?」


「うむ。1~9階層が担当階層だからな」


何時の間にそんなことに…いや、あの時からか。ランクCは1~10階層までが探索許可がされている。というか、普通は半日で第9階層まで行って日帰りできるものじゃない。だが、実力ある者にとっては無理な強行軍ではなくまさに散歩するが如くなのだろう…


「そっか…じゃ、頼みがあるんだけど?」


…という訳でマロンに依頼をするザック。褒美は何がいいか訊いた所…


「そうか。では、我も皆と同じモノを頼もうか…」


と、返答が…


「え?…みんなと同じって。獲って来て貰うスパイダーシルクとか類似のドロップ品から創る服だけど…。それで、いいの?」


うむ、と鷹揚に頷くマロン。そんな彼女が着てるのは、体が動かし易い膝上スカートで袖も短い…メイド喫茶などで見るような現代風のメイド服だ…何処で作ったのかは知らないが、この世界にはメイド喫茶などは存在しないと思われる。訊けばデザインなどは今着ている物と同じであればいいという…予備が後1着しか無い為、数着作って欲しいとお願いされた。


(ど…どんだけ着潰してるんだか…)


いわれてみれば、ダンジョンに行くようになってから、偶にメイド服をボロボロにして戻って来ることもあり、その度に着潰しているのだろう…


(しょうがないな。素材を獲って来て貰うんだし、みんなの服を創った後、残りの素材を多めに投入して創ってあげるかな…)


だが、ザック謹製のマロン戦闘服は滅多なことでは壊れなくなった為に在庫がだぶつくという事実は後になって判明するのだが、そんなことになるとは誰も気付かないのだった…



- ディアナの服縫製が本番です -


そしてあれから1週間。使用人たちの服素材であるスパイダー糸素材が揃い、野郎共からやっつけ仕事で錬成して行く。体格は別として着心地などは勝手知ったる同性の為に割と簡単に仕上がって次々とコナンたち経由で渡されて行くのだった…


「どう?」


「喜んでいるみたいですよ」


「そっか…じゃあ次は女性服だね」


「できあがりましたら、お声を掛けて下さい…では」


コナンに使用人たちの声を訊くと、予想から然程離れていないようだった。不満も無いようなので、まずはダナンとメイドたちの服へと取り掛かる。ダナンの服は仕事着であるスーツだ。但し、女性向けに胸や腰周りには多少の余裕を持たせなくてはならない。彼女はそれ程ボリューミーではないが…いや、これ以上はプライバシーに関わるので控えさせて頂く(寧ろ、命の危険に関わる為に断固公表を控えさせて頂く!w)


(はぁ…その次はメイド服か)


これも仕事着だ。本来なら統一デザインにした方がいいのだが、別に外注してコストが掛かる訳ではないので好きにデザインをして貰い、余り派手な部分はメイド長のメビウスが添削して駄目出しをしており、無難なデザインの中でも自己主張をしているといった感じにまとまっていた(ダナンの執事服であるスーツは見た目には標準から殆ど変わってなかったが…内ポケットがやや多いくらいか?)


(メイド長のは元々着ていたメイド服を素材だけ変えるだけでいいと…)


サイズその他はそのまま。可能なら容量は少なくていいからアイテムボックスを…か。指定はここだな…重くなると不自然になるし、重量軽減機能も付けておくか。流石に時間停止まで付けると国宝級になるらしいからそれは止めておくと…


他、メイド長補佐も容量を最低限にした劣化バージョンにして、平メイドたちの物はデザインを希望通りにする代わりに頑丈なだけにしておいた。全員に共通する仕様は汚れても軽く洗うだけですぐ汚れが落ちることと頑丈な魔物素材を使用したことにより、1着で数年は使いまわせることくらいだろうか?…つまり、軽く洗うだけですぐ乾くので休日以外は着た切り雀になってるように見えるということだが。


(それもあって、デザイン違いを1着づつ、か…)


普段着を含めれば4着要求された訳だ。まぁ、それくらいはいいが…


(マロンだけ同じデザインで10着か…いやまぁ、今着ている物を複製するだけで済んだんだけどね…)


結局、より頑丈に作成したマロン服…否、専用メイド服はミスリル系合金製の軽装鎧より頑丈に…1着メンテ無し(要洗濯)で1年はもつというチート仕様になり、何処からか聞きつけた服飾店から「売ってくれ」とか「譲ってくれ」と問い合わせが殺到したらしい…マロンにw(無論、本人に売ったり譲ったりする気は無いので全て無力化して返り討ちにしたらしい…乱暴な(苦笑))尚、本人は1回ダンジョンから戻ってくる度に着替え、専用メイド服を休ませて長持ちするように気を使ってるらしい…んで、見分ける為に番号を振ってるらしいが…流石に魔物素材で完成した時に防御力上昇の永続魔法を掛けたせいで針が通らず、番号を縫い付けた洋服カバー※で誤魔化しているらしい…(苦笑)


※クローゼットで保管する時に使う埃カバー


…そして、他の使用人の服も希望通りに全て作り終えて当人たちに行き渡る。但し、「目が飛び出る程の高額で譲ってくれといい寄られても売るなよ…」と、「何処ぞの芸人みたいなフリじゃないからな?…」と念を押すことも忘れない。尤も、本人以外が着用できないようになっているし、本人から一定距離離れる(専用のクローゼットに保管する場合を除く)と基本は屋敷のとある部屋に自動帰還するように仕掛けが施してある。売る側としては痛んで何度も購入してくれる安物の方が旨味があるが高く買い取ってくれる貴族などにはそれこそ目玉が飛び出る程に高額で売れるだろうし、魔導具を研究している者にとっては恰好の研究材料となる。今すぐ再現できる物ではないだろうが、いずれは解析が進んで劣化品となるだろうが複製コピー品が出回るかも知れない…


(それはいいけど、「どうやって作ったんだ!?」ってしつこく聞いてくる輩がいるかもだからなぁ…)


面倒はノーセンキューなザックだった!



- それはそれとして、練習台を経て本番ぅ…? -


服…貴族向けの衣装を発注してから1箇月が経過。練習台として使用人たちの作業服やらメイド服やらスーツに似た執事向けの服を作成してからは大体2週間が過ぎた。ディアナの衣装はデザインを考えるのが面倒なのか、「任せるわ」の一言だったので服屋に「そんなに派手ではなく、それでいて流行を外していない物を何点か見繕ってくれ」と、実に面倒臭い注文をして丸投げにしておいた。要は貴族向けのデザインは使用人の中にはわからない者が殆ど存在しておらず、唯一わかりそうな当人がこちらに丸投げして来たのだ。毎日接している本職に丸投げした方が無難といえば無難だろう(その分、デザイン料と称して通常の1.5倍くらい金は掛ったが…本当、奴隷の身分から脱却する意志は無いのだろうか?)


「では、普段着用のドレス3点と貴族向けの医療用白衣1点。下着各種を3点づつで御座いますね?…〆て…」


平民用の作業着と普段着と下着とお出かけ用のちょっと小洒落た服を同じ点数だけ用意したとする。すると、こちらは銀貨だけで済むのだが(金貨1枚に満たない)…ディアナの服全部の金額は、その数10倍を軽く凌駕している。デザイン料を含めれば、更に水増しするのだ。貴族とは…金持ちとは…どれだけ贅沢をすれば気がすむのだろう?


「じゃ、コナン。支払い宜しく」


「…は」


実際にはその場で現金である金貨銀貨を支払うことはなく、専用の紙片に数字を書いて渡しているだけである。月末に纏めて集金しに来るらしく、それも専任の回収業者が集金して回っているらしい。店舗は月末に回収業者に紙片を渡し、手数料を差し引いた金銭を受け取って店舗の収益とする。回収業者は一通り契約した者たちから紙片を引き受けて少額の手数料を得た後、紙片を持ち、買い物をした貴族や商人たちから代金を回収して回るという仕組みだという…。後でコナンに訊いた所、紙片の名前は手形といって、ひとまず金銭の授受はこの手形という紙片に数字を書き、月末に纏めて支払う約束をする…という。別名「約束手形」ともいい、約束を反故にすると信用を失い今後は現金のみでしか受けつけられなくなり、下手をすると商売や商品の売り買いにも支障が出るらしい…信用は大事だということだな。尤も、その場で現金で支払ってもいいのだが、貴族階級ともなると妙な見栄というか箔付けというか…無駄に金が掛かる方法で支払わなければならないらしい…いや、うちって爵付けされてからそんなに経ってない新人もいいとこなんですけどね…屋敷の金庫にも大金貨1枚すらないっていう…orz


(〆て金貨13枚、銀貨90枚かぁ…クソ高っか)


昔から女性の服は男物より高く掛かるとは聞いていたけど、まさか普通の素材を使っただけの服代だけでこんなに掛かるとは思わなかったザックは、思わず心の中でそう思っていた。


(ま、まぁ…後は魔物素材で複製してこれらはストレージの肥やしにする予定だしな。壊れるとは思わないけど複製元として大事に保管しなくてはな…)


寧ろ、魔物素材であるスパイダーシルク等で創り直した方がお高くつくこととなるのだが、それはまた別の話し。マロンが獲って来た魔物素材は元手はタダだ。その価値には永遠に…否、暫くは気付くことはなかったのであった。そして、屋敷に戻った後、ザックは自室に引き籠ってディアナの衣類を複製し、翌日に渡すこととなる。いよいよ、運命の日が…やってきたのであった!



「ディアナ」


「何で御座いますか、御当主さま」


ディアナは癖なのかザックをそう呼んでいた。使用人毎に呼び名がまちまちで、最初は呼ばれていることに気付かなかったりしていたのだが…今では慣れた。


「頼まれていた服を用意した」


「まぁ…」


という訳で、ダナンとメイドたちに後を任せたザック。流石に子供とはいえ、女性の着替えを見て楽しむ度胸は流石に無いのだ!(変態と呼ばれそうだし、ディアナは某F男爵にセクハラをされていたのもあるしな!!)



何時間か経過し、ふと廊下でばったりと会うディアナとザック。思わず足を止める双方だが、ザックから声を掛けることとなる。


「ディアナ、その…服はどうだっただろうか?」


「えと…はい…その、有難う御座います」


見た所、2着用立てた白衣を。その下には仕事着用の上下を着ている。医者なので下はスカートではなくズボンだが違和感は無いと思える。ちなみに全部真っ白で汚れればすぐに目に付くのだが…


(スパイダーシルク製で防汚仕立てなので全然汚れが付かないんだよな…)


仮に大出血してる患者を処置しても、軽く水で流せば付着した血は最初から無かったことになるくらいには…。わざと刃物を突き立てて斬ればその綻びに少し付くだろうけどね。斬れれば、だけど…


(確か防塵防刃仕立てでもあったかな?)


流石にハンマーで殴られるって想定はしてなかったけどね。


「気に入って貰えればそれでいい。後は…」


ニコっと微笑みながらそういうと、


「…っ!はい!…誠心誠意頑張ります…命に替えても!!」


と、そのまま頭を下げて振り向きざまに走って…逃げるように去ってしまうディアナ。


「おーい…廊下は走らないようにな?」


と、その背中に投げ掛けるように声を上げるザック。ザックは気付かなかったようだが、ディアナの顔は何故か赤く染まっており…


『あーあ…マスターの恋敵が増えちゃった…みたいな?』


とシャーリーが念話で呟き、


『恋?…あの人、まさか…え?』


と、レムが今更ながらに気付いたように返す。


『はぁ…レムもマスターも鈍感よねぇ…』


溜息を吐くシャーリー。何処にザックを好きになる要素があったのかさっぱりわからない者には永遠に正解には辿り着かないだろう…多分、きっと。


━━━━━━━━━━━━━━━

作者にもようわからんですとばい。女心と秋の空…(最近はその秋もあっというまに過ぎ去るので空を見上げる暇も無いですが(苦笑))


※貴族向けの衣服代金は貴族として売買したのでああいう対応を。普段メイドたちが買い出しに行っている食料等は平民向けの商店で購入している為、その場で金銭の授受を行っています(物語中で月末のタイミングで差し引こうと思ったけど作者が忘れそうなので差し引いておいたってだけです(苦笑))



備考:

探索者ギルド預け入れ金:

 金貨712枚、銀貨802枚、銅貨1667枚(尚、両替を希望しなければ貨幣単位で加算される一方となる)

ストレージ内のお金:

 金貨282枚、銀貨1020枚、銅貨781枚(変化なし)

財布内のお金:

 金貨2枚、銀貨78枚、銅貨80枚(変化なし)

総額(両替した場合の額):

 金貨1015枚 銀貨25枚 銅貨28枚

屋敷の備蓄額:

 金貨563枚、銀貨55枚(ディアナ服代金は月末徴収だが差し引いておく)

今回の買い物(支出金):

 ディアナ服(金貨13枚、銀貨90枚)

ザックの探索者ランク:

 ランクB

本日の収穫:

 なし

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