30 その7

マナのダンジョンに再挑戦する「息吹いぶく若草」チーム一同。今回は問題無く順調に探索が進むが、第1階層を1周した所でキリがいいとサウスネクシティに帰還することとした。ダンジョンから出た時に、魔力タンクの腕輪から魔力を抜くといって回収したが、以前生成した魔石(魔力吸引して空の魔石となっていたが)を合成して創り出した大容量魔石ラージマギバッテリーに充填することにしてある。自動で充填する魔道具を創り出しておいた為、一晩放置すればすっかり魔力を抜いておけるという楽ちん仕様だ(手動で抜くにしても色々と面倒なのもあるが、効率よく効果的に魔力を移し替えるにはこうした魔導具でゆっくりと抜いたり充填した方がいいというのもある)

━━━━━━━━━━━━━━━


- サウスネクシティ・探索者ギルド -


「えっと…買取カウンターはこっちでいいんだっけ?」


「あ、はい。量が少なければこちらで承ってます。多いのでしたら倉庫前の受付まで居願いします」


この辺のシステムやカウンターの配置などはマウンテリバーと大差は無いらしい。今回は数時間による狩りの結果、割と大量にドロップ品がある為に倉庫へ回ることと相成った。



「倉庫は…ここか」


「何処のギルドも大差無いな…手抜きっつーかわかり易くて助かるっつーか…」


「迷わないからいいんじゃない?」


「うんうん。迷わないのは正義!」


ギルドの倉庫は出入口から出て壁の外まで出ないで壁伝いに右に沿って行くとある。中庭では大型ドロップ品を査定してる風景が見えるが晴れてなければ倉庫内でやってるのだろう。そんな風景を見ながら倉庫の入り口に来たマシュウらはそんな呟きを漏らしながら受付へと向かった。


「買取をお願いしたいんだが…」


「あぁ、これに入れてくれ」


中年のおっさん…ギルド職員がカウンターの上に標準的な大きさのトレイをどんと置く。


「あ~…すまん。これじゃ足りん」


「あ?…あぁ、アイテムボックス持ちか」


ザックが拾って回った後、各自の紐付き手提げ袋に凡そ50kgづつ分けておいたのだが全然足りなかったので最終的に80kgづつになっていた。合計凡そ320kgのドロップ品だ。数量にすると何個になるのか数えてないのだが…


(多分、小さいのから大きいの全部合わせて千個じゃ足らないだろうなぁ…)


最低限、討伐部位と魔石の2つのペアがあり、それ以外にも素材などのドロップ品からレアドロップの魔導具や武器・防具・道具類があるのだ。殆どは討伐部位&魔石のみだが…


(マシュウさんたちが気付かない内に後ろに回り込んできた魔物とか、僕が倒して回収してたからなぁ…)


その分は「数が合わない?」と思われるので半分くらいストレージに収納し、残りを分配しておいた…「あれ?何か多くないか??」って変な顔されたけど。



待つこと1時間と少し。どうやら受付以外の職員総出で仕分けとか査定とか、物に依っては鑑定とかやってたようで…


「お、お待たせした…」


と、疲労困憊こんぱいの様子。貨幣の詰まった革袋以外にも長細いカードのような物と書類がトレイに載っていた。


「…詳細は書類を見て貰うとして、全部で金貨9枚と銀貨563枚と銅貨93枚だ」


(くっ、殺せ、クソ?)


そんな語呂合わせができそうな枚数で怪訝な顔をするザックだったが、マシュウらは多い報酬で呑気に喜んでいるだけだった…


「はぁ…今度からダンジョン潜る時は事前に申請してくれよな?…毎回資金が足りる訳じゃないからな」


ギルドではドロップ品の買い取りの為に資金を十分に蓄えている筈だが、此処のマナのダンジョンでは短時間に採取・採掘できる品々(薬草とか鉱石とか)を換金するだけの資金しか用意していない。今回は偶々買い上げたアイテム類を捌き終わって金庫には十分な資金が溜まっていただけなのだ。


「はぁ…毎回あれだけのアイテムを持って来られたら困るんだよ…」


と、愚痴を零して奥に引っ込むギルド職員。


「これから持ち込まれたドロップ品の数々を整理して売り捌く為の緊急会議に入らにゃならん」


と、大きな溜息と共に声が漏れていた。


「はは…大変ですね」


ザックが少々引き攣りながら同情していると、


「ったく。ひなびたギルドはこれだから…」とジャッカル。


「そういうなって。マナのダンジョンは対策を講じてないと長時間潜れないしな」とマシュウ。


「そうね…これもザックくんの貸してくれた魔道具様様かしらね?」とジュン。


「うん!ザックくん凄い!!」と相変わらずのパトリシア。


「あ~…えーと…、有難う御座います?」


ザックは照れながら礼を述べるが、「礼をいうのはこっちだって!」という全会一致の笑顔で頭を撫でられたりぎゅっとハグされるザックは(当然女性陣から)顔を赤らめるしかできないのだった…



そして大金を得たマシュウらはいつもより豪勢な夕食を食べて宿へと戻る。明日は第1階層の大部分を攻略してマップを完成させるとなり、早めに寝ろよ?…といわれて解散する。後は各自で自由行動ということらしかった。


(金貨9枚と銀貨563枚と銅貨93枚…からチーム共有資金分を金貨5枚引いて、残りを5等分で…)


金貨4枚と銀貨563枚と銅貨93枚割る5で、銀貨912枚と銅貨618枚、余り銅貨3枚。


「余りは銅貨3枚ありますがこれはどうするんですか?」


と訊いたら、銅貨を割る訳にもいかないので共有資金に入れておいてといわれてジュンさんに渡してたっけ…。5人で分けて共有資金に半分以上を割いても1人当たり金貨1枚弱もの収入を得たんだけど、普通に考えたら普通グレードの宿で外食を食べても22万日以上も働かなくてもいいなんて…凄い収入だろう。ギルドで買い取りに出した時点で税金も徴収されてるので、これ以上税の支払いで減ることもないのだ。


(まぁ、ダンジョンに出るなら消耗品の支払いや装備品の修繕費と色々と支出も重なるんだけど…)


余程高価な物を買ったり、高価な装備品を修繕したりしなければ足りなくなることもないだろう。ザックは取り敢えず巾着袋に入れる体でストレージに今回の収入を収納した…いや、今は全員外出していてそんなことをせずとも問題は無いのだが…


(癖を付けておかないと、いつポロっとやっちゃうかわかんないしなぁ…)


と、慎重なザックであった。常時戦場と考え、常に備えるのはいいことだろう。



- 翌日 -


「昨夜はお楽しみでしたね?」


ムスっとした顔でザックが突っ込むと、


「痛ててて…、そう責めるなよ…あ痛ぅ~…」


と、マシュウらは頭痛二日酔いで痛む頭を抑えていた。マシュウとジャッカルだけなら兎も角、女性陣2人ジュンとパトリシアも一緒だとは思わなかったので呆れているだけだが…


「はぁ…はいこれ。飲んで下さい」


と差し出した緑色の液体が入った小瓶を各人に手渡して飲む様にと促すザック。ちなみに、HP回復系ポーションは赤。MP回復系ポーションは青。状態異常回復系ポーションは緑色をベースとしている。紫色のポーションも存在するが、HPとMPの回復を同時に行える物であり、上級ポーションなのでおいそれと見掛けることはない。それに加えて状態異常も回復した場合、万能薬エリクサーしか存在しない為にそれに近い紫色のポーションは市井で見掛けることは殆どないといっていいだろう。尚、万能薬エリクサーは白色の液体であり、見た目と味は牛の乳に似通っているらしい。


「こ、これは…?」


痛む頭を抱えたマシュウが片手を出して小瓶を掴みながらその中身の正体を訊く。


「解毒薬ですよ。エールなどのお酒のアルコールも一種の毒ですし、それの分解をしてくれます」


ザックが懇切丁寧に説明すると、初めて知った…という顔をする面々。


「酒が毒…確かに、過ぎたるは毒というし、嘘ではないのかもな」


と、頭痛で笑うのも控えめなジャッカルが一息に小瓶の中身を飲み干す。いつもならゴミ箱に投げ捨てる小瓶だが、これはザックの物と知っているのでそのまま蓋をしてから返却する。マシュウたちもジャッカルに倣い、解毒薬を飲んでから小瓶をザックに返却する。


「有難う御座います」


後で洗えばいいかと小瓶を巾着袋に放り込み、


「すぐには利かないので…そうですね。後30分くらいしたら出掛けましょう」


ということで、各自ベッドに寝転んだり忘れ物が無いかチェックをしたりと過ごすようにしたようだ。その間、ザックは宿の厨房で弁当を手配したり、朝食も外で食べられるように軽食として弁当のようにして貰うことにした。ダンジョンで使用する消耗品はギルド内の購買で買うことにし、それ以外は商店街に寄って買うように進言しようかなと考えるザックであった。



- 30分後 -


「体調…というより頭は大丈夫ですか?」


「おいおい…それじゃ頭がおかしい奴に訊いてるみたいじゃないか」


苦笑いするマシュウ。ジャッカルは「違ぇねえ!」と笑っているが。


「あはは…ごめんなさい。で、ジュンさんたちは…」


流石に女性陣の部屋に立ち入るのもどうかと思ったのだが、まだ出て来ない2人。


「寝坊か?…物音もしないしそうかも知れんな」


マシュウが聞き耳を立て、そう判断してドアまで行ってノックをする。


「おーい!2人ともそろそろ出るが、起きているか?」


返事が無い。唯の屍のようだ…じゃなくて。


「…返事が無いようだな。寝てるんじゃないか?」


マシュウの問いとノックに無反応なドアに対してジャッカルが極真っ当な反応を示す。ザックが探知で部屋の中を調べてベッドらしき影に2人が横たわっていることを確認し、うんうんと頷く。


「ったくしょうがねーな…」


部屋の中のドアは鍵が掛からないとはいえ、女性の部屋としているので踏み込むかどうか悩んでいたマシュウだが、


「っとそうだ。ザック、中に入って起こしてくれないか?」とマシュウ。


「おお、そりゃいいな。1つ頼まれてくれんか?」と賛成するジャッカル。


と、無理難題?を押し付けられるザックであった!w



「う~ん…もう食べられない」


「ザックくぅ~ん♪ぎゅぅ~!!」


一体何の夢を見ているのやら…ジュンはお約束の寝言を。パトリシアはザックに抱き着いているらしい夢を見ているらしい。


「うわ…下手に接近したら抱き着かれてミイラ取りがミイラになりそう…」


取り敢えずどうやって起こそうかなと思案するものの、穏便な方法では無理かなと結論付ける。では、穏便ではない方法でなるべく穏便な方法はというと…


「えっ!?」


「きゃあっ!?」


がば!…と飛び起きる両名。その瞬間にナニかがその場から消え失せる。そして飛び起きたジュンとパトリシアというと…


「「き、気持ち悪い…」」


と異口同音に嫌悪感100%の表情をして部屋から出て来てそのままトイレにダッシュするのだった。


「…何となく想像は付くが…一体何をやったんだ?」


マシュウがザックに訊く。ジャッカルも汗を流しながら黙ってはいるが聞きたいようだ。


「あ~…ちょっと2人が嫌がるモノを思念に乗せて送っただけです」


「思念?…そりゃ魔法か?」


「えぇ、まぁ…生活魔法ですよ。念話ってありますよね?喋れない、耳が聞こえない人用にあるんですが…それを使って虫が目の前に一杯現れたイメージを送ってみたんです」


「「うわあ…」」


女性陣は2人とも虫の類は苦手としていた。魔物にも虫の形態をしている種類はあるが、成りが大きいので虫とは思えず何とか対処できたようだが、ザックが送り込んだイメージは普通の小さい虫が目の前に現れて体を這いずるようなイメージだ。要はショックで目覚めるようにと考えていたのだが…


(おい、どうするよ…これじゃ2人とも今日は使い物にならんかも知れんぞ?)


(だなぁ…取り敢えず戻って来たら様子を見て、それから考えるか…)


と、男性陣はザックのやり過ぎを非難はしないがもっと別の方法を考えてくれとやんわりと大量虫地獄は禁じ手と説明するのだった…南無>女性陣



- 結局休暇扱いになったジュンとパトリシア -


「えと…ごめんなさい」


「あ~いいっていいって。あたしらが悪いんだからさ…」


「あ、うん。今度はもっと別の方法にしてくれると助かる、かな?」


女性陣はマシュウらが危惧した通りトイレでロッパーした後、気分が回復せずに調子が悪そうな顔をしていた…ということで今日は大事を取って休ませることになり、野郎だけでダンジョンに行くこととなった。尤も女性2人が抜けた状態でも何とかなりそうな木がするザックではあったが…


(ジュンさんとパトリシアさんは牽制とバフだから、戦力としては余り役立ってる気はしないんだよね…今はアイテムボックスがあるから、荷物持ちという意味でも役に立ってるかは不明だし)


しかし、それをいってはお終いということでザックは黙っていた。2人は既に女性部屋に引き籠っており、既にベッドで横になっていることだろう。


「じゃ、むさいかも知れんが行くか?」


「うむ。まぁ気を使わないから楽だと思うけどな」


ジャッカルとマシュウがそんな台詞を口に出すが、まだ部屋を出てないのでいわない方がいいんじゃないかな?…とザックは思いつつも、


「あ、はい。行きましょうか」


と肯定して頷く。野郎3人組は部屋を出て、鍵を掛ける。部屋の鍵を掛けただけで内側からも開錠できるし女性陣にも鍵を1つ持たせてあるので問題は無いだろう。そして宿を出た3人は消耗品の補充ととある買い物を済ませる。何を買ったのか…


「馬も居ないのに荷馬車を何で買ったんだ?」


「えと、説明するので町の空き地まで移動するの手伝って貰えますか?」


馬車を売っていた店舗は馬も取り扱っていた為に町の外れに位置していた。馬が数頭だけだが飼うにはそれなりの土地が必要だからだ。そこにあった壊れかけの荷馬車をザックが格安で買い付けた訳だが…


「それにしたってよ?…車軸はやや湾曲してるし車輪だって壊れる寸前。荷馬車の台車部分だって半分腐ってるんじゃないか?」


「あぁ…無事なのは御者台くらいだろ、これ」


「御者台なんて大層なもんじゃないだろ。荷台から板が伸びてるだけだし…」


と、散々な評価な荷馬車だった。流石、銅貨100枚…銀貨1枚ぽっきりな価格付けの荷馬車だろう。通常なら新品の荷馬車であれば、最低限銀貨10枚で売れるのだからどれ程安いのかわかるというものだ。


(修理用ってことで格安で資材だけでも売って貰えたのも幸いしたし…先に修理リペアした方がいいかな?)


まだたらたらと文句をいっている2人を他所に、ザックは荷馬車を見て修理後の姿を予想しながらコマンドワードを唱える。


木操作ウッドクラフトからの木工製品修理ウッドリペアー!」


ウッドリペアーは本来ならもっと長い名前が付いていたらしいが、長い間に省略形が正式なコマンドワードとして定着し、そのままでも発動するようになったらしい。勿論正式な方でも発動するのは変わらないが、どちらでも大差は無いということらしい。


「「おお!…マジか?」」


荷馬車は仄かに光を帯びて修理用資材が溶けて荷馬車に吸収されていき、幌が無い簡素な荷馬車が新品同様に成り、その上で骨組みが台車から伸びて幌を覆う為の半円のアーチを描いた。車軸も頑丈そうなやや太い物になり、それに合わせて軸受けも大型化して外からはわからないが板バネ式の衝撃吸収の仕組みが組み込まれた。車輪も元の物より大型化して安定して回転するようにと以前サンフィールドの馬車と同様のゴム製の車輪カバーが取り付けられた(接地してる地面から土を素材として使用。こっそり、土操作アースクラフト土紐作成アースロープクリエイトを行使したらしい)他、台車も荷馬車には無い座席が追加され、御者台も荷馬車には相応しくない立派な物になっていた。当然、馬と馬車を繋ぐくびきも頑丈な物になっていた。1頭立てなのは変わりはないが…


「あ、幌はどうしよう。規格がわからないから大人の男性が立ち上がっても問題無いくらいの大きさに骨組みを伸ばしちゃったけど…」


後で自作すればいいかと思い、突然の雨で濡れても面白くないので布地色の結界で覆うことで代用した。そして自分を含めた3人全員に身体強化フィジカルブーストを掛けるザック。


「じゃあ、お願いします」


「お、おお…」


「わかった」


ジャッカルが台車の右に。マシュウが左に腕を掛け、ザックが軛を持って進行方向を調整することになった。そしてゆっくりと荷馬車を曳いて…もとい、押して歩く3人。目標は馬を放牧している放牧地の隅だ。そこは土が露出していて多少土を貰っても問題は無いように見えたからだが…



「はぁ、はぁ…」


「ちょっちきついぜ…」


「はい、体力回復薬スタミナポーションです」


既に残り本数も僅かだったので物質複写マテリアル・コピーで創った複製品だ。魔法自体は生活魔法・金属性だが問題無いようだ(尤も、調理した食べ物などは無理なようで、区別の線引きが不明な為にザックも検証が必要だなと考えている)


「おお、助かる」


ぐびぐびと飲んで小瓶を返却しようと手に持った小瓶が、自らの使命を全うしたとばかりに細かく砕けて消滅する。


「「ぬなっ!?」」


2人ともびっくりして手の中にあった小瓶を探すが残ってる筈もない。


「おいおい…いきなり砕けて消えちまったが?」


「あぁ…これは一体…」


ジャッカルとマシュウがそう話してザックを見る。


「あ~…今の体力回復薬スタミナポーション、実は…」


と複製品だと説明すると、何故か納得される。


「…驚かないんですね?」


と逆に質問すると、


「あぁ…以前、物質複写マテリアル・コピーでコピーしたポーションを飲んだことがあるんだ。軍の依頼とかでダンジョンのスタンピードを防ぐって奴でな。参加人数が多くてコピーした劣化品を支給されたことがあるんだ」


マシュウが当時を思い出しながら目を瞑って話し出す。


「あぁ、あったな。そんなのが…当時はまだパットが来る前でな。ジュンが紅一点でまだ初々しくてな…」


ジャッカルもにやけた様子で話しを引き継ぐ。その話し、長くなるんだろうか?…とザックがジト目で見ていると雰囲気を察知したマシュウが話しを切り上げるように続きを話す。


「ま、まぁ…それで軍から支給されたポーションを飲んだら同じ現象を見たって話しだな。いきなり砕けて消えたからびっくりしたが、魔物の群れと戦闘中でそれどころじゃなかったしな」


「そうだな。そんなことで呆けてたら死ぬ所だし、それどころではなかったな!」


…ということで、既に体験済みだったということだった。ザックは大して体力消耗してないが同じく複製品のMPポーションを飲んで魔力を回復した。


土操作アースクラフトからの…土人形創造ゴーレムクリエイト!」


基本、地面が土なので生成されるのはクレイゴーレム。そして成されたのはクレイゴーレムの馬だった。


「んでっと…」


ストレージから濃縮魔石を取り出す。ザックの手にはメインコアとなる中型の魔石が1つ。魔力タンクとなる小型の魔石が2つ。中型の魔石はゴーレムのコアで命令を処理する演算部分と記憶を司る記憶領域が収まっている。小型の魔石は単純に魔力タンクと空気中と接地している地面に含まれているマナを吸収して魔力変換する魔法陣が収まっている。その3つを確認したザックは、馬ゴーレムの心臓部分に魔石を3つとも手を突っ込んで埋め込んだ。そして追加でコマンドワードを唱える。


再設定リ・デザイン


ある程度充填しておいた魔力タンクの魔力を消費して、馬ゴーレムの見た目が変貌していく…クレイゴーレム然とした見た目は、焦げ茶色で右目の部分がワンポイントで白い人懐こそうな馬へと…。本当の馬とは違い、水も馬草も必要としないが、見た目だけなら本当の馬のように呼吸もするし体温もある、ぶるるっといななくお馬さんへと!(デザイン元はギョショさんの荷馬車を牽引していたお馬さんだ。白い逆パンダの目元のアクセントは無かったが焦げ茶色の馬体の体毛はそっくりだといえるだろう)


「名前はどうしようかな…体毛が焦げ茶色だからダークブラウンか…。ダブランとか」


それって気に入るんだろうか?…といったネーミングだが所詮馬ゴーレムで拒否反応は見られなかった。若干、嫌そうな雰囲気を漂わせているが逆らえないといった感じだろうか?


「あれ、気に入らない?…ん~…じゃあどうしよ」


余りネーミングセンスが良くはないと自覚しているザックが悩みだし、その間にマシュウたちは馬具を追加購入しに店へと走り、説明を聞いてから戻って来ていた。悩んでうろうろしている間に馬具を馬ゴーレムへと装着し、荷馬車へと繋ぎ終えていた。


「こいつ大人しくて助かるな」


「あぁ…流石馬ゴーレムだな」


と話している間もザックは悩んでいた。


「なぁ…こいつ、ゴーレムだからダンジョンに潜っている間は荷馬車の護衛とかもできるのか?」


ジャッカルがザックに質問すると、うろうろを止めて答える。


「えーとまぁ、事前に命令しておけばそこそこ戦闘もこなせますよ。ベースが土ですから、余り強い相手だとやられちゃいますけどね?」


「そうか…」


とはいえ、生きている馬よりは強いし耐久力も比べ物にならないだろう。最悪、結界で覆ってしまえば手出しされることもない訳で。魔力を探知できる探索者でも居ない限りは光学迷彩な結界で覆ってしまえばほぼ、発見されることもない。


「後な」


「はい?」


ジャッカルがまた名前で悩み始めそうになるザックに声を掛ける。


「名付けならあいつらが得意だから、任せてみてはどうだ?」


どちらかといえばパトリシアが得意らしい。「万人向けのセンスかどうかは不明だが…な」と追加説明されたザックは不安に思ったが、(僕よりはマシかな?)と思い直して暫定で「チャクロ」を仮称とした。単純に茶色から黒の中間の色合いだからという理由で付けた訳だ。


「じゃ、行くか」


「はい…あ、馬具のお代は…」


「俺らで折半して出しておいた。何、気にするな」


「おう!これから世話になるんだからよ。荷馬車にもチャクロにもな!」


という2人に押し切られるザック。恐らくマウンテリバーに戻ればお役目は終わり、別れるというのに人のいいこの野郎たちは笑顔で馬具の代金を肩代わりしたのだ。


(はぁ…。この荷馬車の維持って僕が居ないと無理だよね。大丈夫かな?この人たち)


一応はメンテナンスフリーになるようにと所々弄ってはあるが、所詮無機物なので壊れたら修理しないといけない。が、魔道具扱いなので普通の馬具屋や馬車屋では無理だろう。格安で修理するとなればザックがやればいいだけなのだが…


(僕はこのチームに残るつもりないからなぁ…う~ん)


取り敢えず、別れても暫くは問題無いくらいには稼ぐしかないかな?…と、今日も頑張ろうと思うザック。荷馬車は御者の経験があるというマシュウに任せ、荷台の椅子に座…らないで寝っ転がるのだったw


「いいなこれ。俺も寝とこう!」


ジャッカルも右に倣えと寝っ転がり、マシュウから文句が飛んで来たが我関せずと寝っ転がる2人だった!ww


━━━━━━━━━━━━━━━

ドライブに出て、運転手以外が寝てるとイラっとしますよね。あれと同じですw



備考:

探索者ギルド預け入れ金

 金貨950枚、銅貨1617枚(変化なし)

ストレージ内のお金

 金貨170枚、銀貨1020枚、銅貨781枚

財布内のお金:

 金貨2枚、銀貨56枚、銅貨80枚

今回の買い物(支出金):

 ボロ荷馬車代(銀貨1枚)

ザックの探索者ランク:

 ランクC(変化なし)

本日の収穫:

 ボロ荷馬車×1(修繕…魔改造済み)、馬ゴーレム(クレイゴーレム製。仮称「チャクロ」)×1体

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