29 その6
マナのダンジョンから死んだ探索者たちの遺体と遺品を持って帰ったら殺した犯人にされそうになった事件…の結末。結局犯人ではないと認定され、身の潔白は証明された訳だけど(証拠不十分だったし)女性陣の下着は返らず。そして激オコなパトリシアが何処かに手紙を送った後…後日談となるが…サウスネクシティの探索者ギルド職員は…準男爵だったらしい…その爵位を剥奪されて平民に落とされ、ギルドを追放処分されたとか。そして翌日となる今日は、ようやくマナのダンジョンに再び潜る「
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- マナのダンジョン再び -
「準備はいいか?」
「おう。っていっても、一昨日は殆ど消耗してないからな。弁当の補充くらいだろう」
「貰って来たよ、お弁当!」
「取り敢えず2食分でいいのかな?」
マシュウが出発の準備ができたか訊き、ジャッカルが応える。そのタイミングでジュンとパトリシアが宿で2食分…全員の分で10食分を貰い受けて来た。
「じゃあはい!…ザックくんの分ね?」
と、パトリシアがザックに2食分の弁当を渡してきた。これはマウンテリバーの探索者ギルド直営宿の厨房で作った弁当箱を
- マナのダンジョン入り口 -
凡そ1時間の後、一行はマナのダンジョンに到着していた。実は昨日の呼び出しの後、気を使った
その時、ザックが「1部だけじゃ無くしたりチームを分けた時に困りますよね?」といって「
・
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「はぁ…色々あったが、今度こそ、だな」
マシュウがしみぢみと漏らす台詞に、ジャッカルがうむと頷く。
「本当よね…じゃ、今度こそ稼ぎましょ!」
ジュンが金庫番らしい台詞を口にするが別に金庫を持ち歩いている訳ではない。
「よっし!…行こうみんな!!」
パトリシアが1番乗りだといわんばかりに叫んで入り口前で石に蹴つまづいてコケていた。ザックが苦笑いしながら怪我している
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「あれは…スライムか?」
「ああ…マナを存分に吸収して水属性の魔法を撃って来る…な。気を付けろ!」
ジャッカルが視認した先の粘液質の物体を見て誰ともなく訊くと、マシュウが警告を発する。次の瞬間、狙いを定めない
「
ザックが叫んで土壁が生成され、水弾が防がれると前衛たちがスライムに襲い掛かる。
「「喰らえ!」」
マシュウとジャッカルが獲物を構えてスライムコアを狙う。マシュウは盾で圧し潰して破壊に成功したがジャッカルが当て損ねて追撃を喰らってしまう!
「ぐああっ!?」
吹っ飛ばされたジャッカルを他所に、ジュンが弓矢でコアを狙うが矢張り外れてしまう。面で攻撃できる盾と違って、線攻撃の剣と点攻撃の矢では難しいようだ。
「~~~♪」
パトリシアのデバフ歌がようやく効果を発動したようだ。スライムたちはやや動きが緩慢になり、水弾の攻撃間隔も開いて来た。マシュウが次のスライムを圧し潰し、ジャッカルも起き上がって次に狙っていたスライムのコアを両断する。だが、点攻撃の矢はコアの端っこを掠めるだけでなかなか命中はせず苦戦している。
「…仕方ないですね。
ザックがジュンにバフを掛ける。ほぼ無詠唱でコマンドワードだけを唱える簡単なお仕事なので2秒後にはジュンの身体能力が上昇し、その恩恵で集中力と視力が向上。次の射撃は見事にスライムコアを撃ち抜いた!
「…す、すごい」
やや呆けたジュンが自らの攻撃結果に驚いている。
「ぼやぼやするな、ジュン!」
「そうだ、まだまだスライムは増えてるんだぞ!」
ジャッカルとマシュウの檄に、ジュンは「はっ!?」として次の矢を番え、次々と撃ち込むのだった…
・
・
「…えっと、収納っと」
ザックが歩きながらドロップ品を集めて回っている。マシュウたちは疲れたのかその場で座り込み、手渡された水筒と一口サイズの菓子を口にしている。菓子とはいえ、失われたカロリーを補充する意味では十分だ。栄養素こそ不十分だがそれは次の飯時にでも補充すればいいだろう。
「…よし、これで全部かな?」
とことことマシュウたちの座っている場所に歩いて戻るザック。本人は十分に戦えると主張していたのだが、こうして事後の作業を任せる意味でも戦闘補助に徹して貰っていたのだ。通常のダンジョンではドロップ品は1日は残っているが、このマナのダンジョンではルールが変わっている可能性がある。何しろ生還者が少ない此処は情報が少ないのだ。もっと浅い場所で採取している者などは生還しているのだが…
「潜ってからどれくらい経ったかな?」
パトリシアが何となく、誰ともなく訊いてみた。
「さあな…もう3~4時間くらい経ってるんじゃないか?」
「え、そんなもん?」
ジャッカルが答え、ジュンが驚く。
「あぁ…俺の腹時計に依ればな?」
がっはっは…と笑うジャッカル。
(そういえばもうそろそろ昼時かな?)
ギルドを出た時は確か町の中央にある時計塔が8時の時刻を示していた記憶がある。町を出て1時間でマナのダンジョンに着いてれば潜り始めて3時間とすれば丁度お昼時くらいだ。
「じゃ、お昼にしましょうか?」
「お願いできる?」
「はい」
ザックが提案するとジュンが準備を請い、了承するザック。まず、結界の呪符を専用のカプセルに封入してカプセルから伸びた杭を地面に打ち込む。勿論、ここは硬い岩の地面なのでしっかりと木槌で叩く。
(はぁ…土の地面なら手で押し込めばいいのになぁ…)
風が吹かない場所なら手頃なやや大きめの石で呪符を押さえるだけでも構わない。この呪符は魔物を遠ざける忌避の魔法陣が込められているので一定以下の強さの魔物は近寄ってこないのだ。カプセルは大きい釘といった見た目で、呪符を入れるカプセルが杭の中央付近にある物で道具屋などで販売されている。呪符は魔道具を扱っている店で販売されているが、低級魔物向けの物なら代理販売もされていた。
「よし…呪符起動」
コマンドワードは何でもいいが、基本的には呪符の魔法陣を起動するという意思を込めていれば発動する。今回は3箇所に呪符を設置してそこを頂点とした三角形の結界領域を構築した。
「じゃあ用意しますね」
土壁を水平に発動して座る場所を用意する。そのままだとでこぼこしていて座り心地が悪くなる為だ。巾着袋から出す体でストレージからシートを引っ張り出し、ばさぁっ!と広げる。ついでに木の繊維を細かくして編んだ座布団のような物を敷く。土で椅子をその都度作ってもいいが撤去するにも魔力を浪費するのは良くないだろうと思って創っておいたのだ。土壁はもう慣れた物だしやや厚みのある段差にしか見えないので放置しておいても問題無いだろうというのもある。
「じゃあ弁当は各自で出して食べて下さいね。水は出しますので空の水筒があったら預かります」
はい!…と差し出された水筒を1つづつ受け取り、少量の純水で洗ってからウォーターで中身を満たす。順繰りに繰り返して全員の分を終えてからザックは自分の弁当を出して…
〈げぎゃっ!〉
ゴブリンが現れた。が、結界の効果に阻まれて近寄れないようだ。ザックはそれをちらと横目で見てから…弁当を出して自分の座布団に座って食べ始めた。
〈ぐぎゃあっ!〉
ゴブリンは無視されたとわかると怒り出した!…が、近寄れずにどーすることもできない。何しろ、接近も無理なら小石を引っ掴んで投てきしても届く距離ではなかったのだ。ザックが横目で観察していると、何歩か退いてから走って勢いを付けて投げていたがフォームが悪いのか全然届かないでいた。結界は意識に働くタイプで物理結界は展開してない為、例えば弓矢でも持っていれば届いたかも知れないがこの辺りに出てくるゴブリンは武器といえば素手か、持っていても粗末なこん棒程度だ。知恵が働けば今のゴブリンのように小石を投げてくるだろうがそもそも知恵が回らないので投てきフォームが悪くて距離が出ないのだ。
「「「ごちそうさま!」」」
マシュウたちが弁当を食べ終える。弁当箱を洗うのはザックの役割(マシュウたちが洗っても綺麗にならないのでザックがやるといい張ったw)なのでザックの横に弁当箱が積まれていく。
「いつもすまんな」
「それはいわない約束ですよね?」
「だな」
何処かで聞いたようなやり取りをして、マシュウたちは戦闘の準備を始める。
「
「おお、ありがとよ!」
「助かる」
「「ありがとね!!」」
結界を出るマシュウらに食べながらバフを掛けるザック。それに応えるマシュウたち。結界の効果範囲外には最初は1体だったゴブリンが数体に増えており、蹴散らす為にマシュウたちは往く。
・
・
「ご馳走様でした…う~ん、やっぱり肉料理は美味しいけどこう毎回だと飽きるよねぇ…。何か料理のレパートリーを増やして貰わないとなぁ…」
食べ終えた後、ぶつぶつと「改良策は無いかなぁ?…」と呟きながら弁当箱に
(マシュウさんとジャッカルさんの物はそれとは別の機構を採用してるんだけどね)
2人の腕輪の別の機構とは…それは、2人が戦士系の職業に就いていることに関係する。2人は多少ながらも魔力を使うスキルを持っているかも知れないが、主に
(あの2人は元気過ぎると色々と困ったことをするからなぁ…)
程々に回復するように微調整されている模様w
・
・
「お疲れ様~」
「おう」
「片付け、終わったか?」
「「お疲れさま、ザックくん!」」
(いや、そっちの方がお疲れでしょ!)
と内心突っ込むザック。勿論、ジュンとパトリシアにだが敢えて口にはせずに何ともいえない笑顔で応える。
「あ、はい。片付けは終わってます。このまま出発しますか?」
「そうだな…一応、マップ見せてくれるか?」
と、いわれるだろうなと思って探知で得ていた情報を元に描いた地図を取り出して見せる。
(これって思い浮かべた似顔絵もそのままのイメージで紙に写せるから楽過ぎるよね…)
魔力を利用した似顔絵描きとかで食っていけるだろう。尤も、魔力が無尽蔵にあればだが…
・
・
あれから数時間が経過し、入口からぐるっと壁沿いに歩き通して1周した。戦闘時間や袋小路を戻って分岐先を何回か曲がる時間を含めて10時間以内に回れる所を見ると、それ程広いという訳でもないようだ。
「丁度入り口に戻ったことだし、今日はここまでにするか」
「「「応!」」」
と、全会一致した所でマナのダンジョンの外に出る一行。無論、「吸引停止」のコマンドを実行することも忘れない。
「じゃ、魔石の魔力を抜くので返却をお願いします」
指輪も念の為回収するザック。ザック本人は指輪無しでも腕輪の機能を使いこなせるが、「指輪とセットじゃないと機能しないので」といい含めてあるのだ。加えていうと吸引機能は安全装置を施してある。でないと本当に干乾びて死んでしまう為だが…敢えて脅すことでポカミスをしないように気を引き締めて貰っているのだ。
「…はい。これで全部です」
巾着袋に全部突っ込む体でストレージに収めるザック。中では空の魔石に魔力充填を自動でやって貰っている。専用のスペースを構築して、マナのダンジョンから帰還したらやろうと思って用意しておいたのだ。これで、ザック自身の魔力を空の魔石に充填する労力を使うことなく補充できるだろう。
(空の魔石を合成して大容量の魔石も創ったし、これに魔力充填も
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・
「じゃあ、ギルドに行くか」
「つってもよ、まだダンジョン出たばっかだぜ?…怠い…」
「「怠い~…」」
「あはは…転移ゲートとかあればいいんですけどね?」
「「「それだ!」」」
「…って、第1階層突破もしてないのにある訳ねーよ!」
マナのダンジョンの外でわいのわいのと騒ぐ一行。腕輪の効果で体力はほぼ満タンのままだが疲労感は拭えない。主に精神的な方向で…
「まぁまぁ…じゃバフ掛けますね?」
と、ザックが
「じゃ、行くか。ありがとな、ザック」
「おお!…いつもすまんな、ザック」
「「ありがとう!ザックくん!!」」
と、恒例の有難うコールを笑顔で受けるザック。
「いえいえ…じゃあ行きましょう!」
とのザックの号令に「「「応!」」」と元気良く応えた「
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そして、
備考:
探索者ギルド預け入れ金
金貨950枚、銅貨1617枚(変化なし)
ストレージ内のお金
金貨170枚、銀貨108枚、銅貨163枚(変化なし)
財布内のお金:
金貨2枚、銀貨57枚、銅貨80枚(変化なし)
今回の買い物(支出金):
なし(弁当とか消耗品はチーム共有資金から(以下略))
ザックの探索者ランク:
ランクC(変化なし)
本日の収穫:
マナのダンジョンの第1階層のドロップ品各種。現れた魔物はスライム・ゴブリン・コボルド・ウルフ・オーク・ゴースト・スピリッツなど、ファンタジー然とした低位の魔物が一杯でマウンテリバーとは違って混然とした物だった。ギルドで換金するけど全部詳細を明記するのは面倒なので合計額だけ記述すると思いねぇ!(江戸っ子か?w)
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