08 その5

サンフィールドに無事に辿り着いたザック。だがしかし、案内された客室に夕食を待っている間に疲れて眠ってしまう。そして…翌日、目を覚ましたザックは気付く。

「あれ?…ドアに鍵掛かってて出られないし、ご飯食べてないからお腹減ったし、そもそもトイレの場所とか教えて貰ってないし…」

そう…、溜まりに溜まった小便が膀胱から溢れそうになっている現実に気付いてしまったのだった…。ザックは如何に粗相をしないで客室から脱出できるのか…刮目して待て!(酷過ぎる展開(ぶはっ!w))

━━━━━━━━━━━━━━━


- 膀胱のピンチに喘ぐザック -


「くぅっ!?」


ビクビクと痙攣する下半身に悶えるザック。部屋の中を見回すと、唯一の希望を見い出す。


「…!これだぁっ!!!」


ダッシュで走ると漏れそうになるので…にじりにじりと歩み寄って飾られていたある物を手に取る。それには花が飾られており、中には少量の水が入っていた…そう!


「花瓶ゲット~!」


ザックはゆっくりと中型サイズの花瓶を手に取り、中の花を抜いてベッドへそっと置いた。そして、


「ドライ」


花瓶の水を瞬時に蒸発させて…


(ピー)※検閲しました



「ふぅ…スッキリした…」


強力なクリーンで刺激臭を分解し、ドライで乾燥させる。そして、最初に飾っていた場所へ戻す。


「ウォーター」


中身をウォーターで最初に入っていた水と同量程度に満たすと、ベッドの上に置いておいた花を花瓶へと差し直す。いや、最初の状況より綺麗にしてるんだから大丈夫だと…思う。多分、きっと…



- 落ち着きを取り戻したザック -


「さて、状況を整理するかな…何でこうなった?」



1.ミランダ婦人にサンフィールドの水不足問題を解決する為に探索者ギルドで依頼を(半ば強制的に)請けさせられた

2.1箇月弱掛けてサンフィールドに馬車で移動した(途中、多少トラブルがあったけど)

3.昨日、サンフィールドに到着して客室に案内された。婦人の旦那さんは友好的だったけど、使用人さんたちからは歓迎されてない雰囲気ありありだった

4.夕食…晩餐かな?…を待ってたら疲れてたので寝落ちしてしまい、起きたら翌日だった

5.寝起きでおねしょ寸前だったのだけど、緊急回避した(←今ここ)



「…まぁこんなもんか。トイレの場所を聞く以前に部屋に閉じ込められてるのも問題だけど…」


(閉じ込めるって牢屋だったらトイレくらいある筈だけど無い…ってことは?)



1.トイレの設置を忘れた牢屋→別に鉄格子で囲われてないから牢屋じゃないよな?

2.トイレの設置を忘れた監禁部屋→同上

3.普通の部屋だけど気に入らない奴を閉じ込めてる部屋→正解に近いかも?



「むぅ~ん…3番に近いかもなぁ…。でも、余所者だけど依頼で来た人間を問答無用で監禁するか?」


(そういや客室ってトイレ無いのかな?…まぁ、高級宿じゃないから無いのが普通なのかもだけど…。そもそも、宿屋では共同便所なので部屋にはトイレは無かった。お貴族様の使うような高級宿にはあるそうだけどな…)


「まぁトイレの考察なんてどーでもいいか。いや、外に出られないのにトイレ無し部屋に拘束されてると、また出したい時に困るんだが…」


何度も花瓶を便所代わりにしたら、花もいい迷惑だろうしな…



あれから1時間くらい、部屋の中を探索してみた。流石に「壁を破壊したりドアを破壊して外に出る」というのは最終手段にしたかったからなんだけどね…。ちなみに、途中でお腹が空いたので手持ちの兵糧丸で誤魔化した。常食するようなもんじゃなく、必要最低限の栄養素を詰めた保存食で、遭難した時とか旅の途中で仲間と分断されて止む無く独りで行動するとなった時に携帯性に優れて一定以上の栄養状態を保持でき、危険な場所から脱出可能な場所までの生命維持を目的とした食料、かな。まぁ、作るのに必要な食材とか薬草とか木の実とか異様に多く必要とするし、精錬するのにも魔力がね…。ま、まぁ…住んでる場所からちょっと遠出すれば全部集められるし、人里離れてるなら問題は無い…と思う。回復するのに4シーズンくらい放置しないとダメだけど…いや、本当だよ?…完全に取り尽くしたら回復しないからね。


「はぁ…やっぱ問題は味かな…」


むぐむぐと噛むと何ともいえない濃い味が口の中に広がる。我慢できない訳じゃないけど、かなりの食材と薬草をごちゃまぜにしてあるので最早薬を噛んでる気分になる訳で…


「んぐ…やっと飲み込めた」


ピュアウォーターを口に中にコップ半分くらいの量を飴玉サイズに圧縮して産み出し、徐々に零れ落ちるように調整する。水玉って呼んでるけど…まぁ水でできた飴玉みたいなもんかな?…味はないけどゆっくり飲む時とか重宝してる。温度調節もすれば冬は暖かく、夏は少々冷たく、それ以外の季節では常温でと便利だよ。


「さて、腹ごしらえと水分の補充もできたし…」


部屋の調査を再開するも、矢張り芳しくない。目視確認じゃここまでかなと思い…


「探知」


(…穴は無さそうだな)


異様に分厚い壁と表面上は木製のドアなんだけど、中身に鉄板のような金属板で補強…というよりは頑強なドアってことはよく理解できた。手で軽く叩いても、木の軽い音ではなく、重厚な頑丈なドアっぽい響きが聞こえた気がする。


(これ、かなり中身が締まってるよね…下手な火炎魔法くらいじゃ貫通できなさそう)


一応、壁とか窓とかも手で小突いてみたけど、何となく同じ感じ。窓なんて見た目は普通の窓なんだけど、なぁんか魔力で強化されたっぽい雰囲気があるんだよね…


「もっかい探知」


ちょっと力んで部屋の中だけじゃなく、領主の館?…の全体を探知してみたんだけど…


「あれ?…真っ白。魔法探知を妨害されてる?」


ノイズが掛かったみたいに、部屋の外で探知可能な部分は白く塗ったくられていた。時々、影が動いているから…


「人の持つ魔力が動いてるのが見えてるのかな?…これ」


後、部屋に掛かってる防御魔法みたいな膨らみとか、魔道具らしき物がある部分も何か膨らんで見える。多分、さっきの推測は合ってるっぽいけど…


「おう…何か1つ魔力がこの部屋に向かって移動してるっぽい」


(多分廊下を走るか急いで歩いてるっぽい感じ。さっきの探知魔法がバレて、いよいよ殺しに来たのかなぁ?)


などと、ぽややんとしながら考えてると…


「ザックくん、無事!?」


と、バーン!と唯一の出入り可能なドアが思い切り開かれて…


「ぐはぁっ!?」


思い切りドアに吹き飛ばされた僕が、見事なアーチを描いて鼻血を吹きつつノックアウトされました…


「うう、しどい…がくっ」


「しっかりしなさい!ザックくん!」


がっくんがっくん頭を揺らされて、辛うじて残ってた意識ロスト。


「はっはっは…奥様!…って、トドメさしてしまいました?」


ミランダ婦人を追いかけていた使用人の女性がようやく追いつき、現場を見て一言漏らした。


「はっ!?」


その時メイドは見ていた…婦人が依頼人を殺害する瞬間を!…う~ん、ちょっち長いか?



「う~ん…母ちゃん、後5分…」


「わたくしはあなたの母では無いのですが…」


お約束だった。


「奥様、例の下手人たちを捕らえておりますが如何致しましょうか?」


「そうですね…その者たちは今までも?」


「…そのようです。何が目的かまでは頑として漏らしませんでしたが…」


「ふむ…領主様にも伝えて指示を仰ぎなさい」


「はい…」


使用人は部屋を出て行き、静かになる…


「やれやれ、使用人たちの再募集を掛けねばなりませんね…」


そこで僕は目覚めた。


「ん…ここ…は?」


「おや、目覚めたかい?」


「…ミランダ…婦人?」


「そうだよ?…大丈夫かい?…その…顔だけども…」


視界に映ったミランダ婦人は鼻に手を当てて訊いて来る。


「鼻?」


右手で触れると、何か鼻の穴に突っ込まれていた。それと、塗り薬が少し鼻に塗られてる感覚。


「あ…そういえば…ドアが………」


開かずのドアとなっていたドアが顔面にクリティカルヒットして、ぶっ倒れたことを何となく思い出す。どうやら気絶してしまったようで…まぁ、現在に至るってことなんだろう。


「首とか痛くないかい?」


心配そうな顔で訊いて来る婦人。


「え?…えぇ、まぁ大丈夫じゃないかと」


いわれた首やら体をあちこち擦って検査してみたが、特に痛みなどは無い。ダンジョンで仕事をしていれば、小さな傷とか打撲なんてしょっちゅうだったしね。


「そう…ですか」


ホッとした様子で背もたれに背を預けるミランダ婦人。心配してくれたのはいいんだけど、訊きたいこともあるんだよね…今、訊いても問題無いかなぁ?


「…訊きたいことがあるんですが、いいですか?」


「えぇ、そうね…わたくしもいうべきことがあるの…」


まぁ、何となく予想は付く。それからゆっくりと、角が立たないように気を付けて質問し、そして…まぁ謝罪をされたんだよね。ふぅ…予想通りかぁ…大変だね。領主さまってのも………



- 改めて朝食をいただきます -


「ごちそうさまでした!」


一通り用意された豪勢な朝食を食べ終え、食後の挨拶をする。いや、お貴族様の正式なやり方とか何て呼ぶのかは知らないんだけどね…


「さて…落ち着いた所でだ。すまなかったね、ザックくん」


「あ、いえ…こうして無事に救助されたので、僕としては問題無いです」


ミランダ婦人からは既に謝罪され、受け入れたのでこの場では無し。本人にもいってあるしね。ドアでの頭部強打の件も、特に後遺症もないのでそちらも謝罪されて一件落着とさせて貰った。


「うちの使用人に問題のある者が居たようでね…詳しくはいえなくて申し訳ないが」


「そう、ですか。大変ですね…領主さまってお仕事も」


「あ、まぁ、そうだね…偉くなると色々と反発も出たりしてな…はは…」


ミランダ婦人に今回の下手人たちのことは簡単に聞いたけど、他言無用といわれたので口には出さなかった。町の水不足を解決しに来た人間をどうにかしようって、普通に考えたら裏切り者扱いだよねぇ…自分たちだって水源が枯れてしまったら生きていくのが困難になるのに…


(ひょっとしたら…あ~、でもこれ知っちゃうと面倒事に巻き込まれるよな…うん、いわんとこう!)


どちらにしても、ギルドランク最底辺な探索者の手に余ると思うので、さっさと仕事をこなしてとっとと帰るが吉と!


「では、今日からでもお仕事に掛かりたいと思います。今回の件ですが、少し報酬に上乗せしてくれれば。それで結構ですので」


「…そうかい?…それで済めば助かるのだけれどね…」


(されたことといえばトイレが無い部屋に監禁一晩だけだからね。漏らす寸前だったことを除けば被害は無いし。まぁ、せいぜい銅貨2枚くらい増えたらラッキーかな?)


…なんて気楽に考えてたんだけど、後で報酬を貰う段階になって驚くことになるんだけど、それはまた後日ってことで。



- さて、水を生み出すだけの簡単なお仕事開始! -


僕は貯水池という名のだだっ広い穴に案内されていた。見た感じ、底と側面は踏み固められた粘土質っぽい土で水が漏れ出すのを防いでいるって感じなんだけど…


「密閉されてないんですね?」


「はぁ…。だから、満水にしても、数箇月で干上がってしまうんですよ…」


案内してくれたのは貯水池の管理をしているという中年のおっさんだ。


「せめて、壁と屋根を付ければ水の蒸発を抑えられますけど?」


正確には2重にして間に断熱効果を上げる為に熱を通しにくい素材を挟むといいんだけど、なかなかそういう素材ってないんだよね…。冷気を出す魔物の皮とかの素材があるといいけど、相当金が掛かりそうだし…難しいよねぇ。


「はぁ…造るにしても、膨大な予算が必要になりますからなぁ…。それに、雨季に水を溜められなくなりますからやねはちょっと…」


「ですよねぇ…」


世知辛いことに、何するにしても掛かるのは金。特にここは砂漠地方だから、幾ら使っても金が掛からないのは砂なんだけど…。後、屋根を開閉式にすれば雨水も溜められるっていおうと思ったけど、見ると近くに干上がってる川があるから、雨季には川が洪水で溢れ、その水も溜めてるのかも知れない。そーすると、壁も無い方がいいんだろうか?


「人件費も馬鹿になりませんしねぇ…」


「はぁ…」


まぁ、正に人件費を使ってお仕事する僕がいうのも何だけどね。正確には前払いに当たる3箇月のギルドの宿代は既に受け取っている。まぁ、懐に入る物じゃないけどね。早く終わらせて帰れば、残りの期間はタダで宿に住めるので美味しいことには変わりないけど。


「ちなみに、これって拡張する予定は?」


屋根も壁も作れないなら、溜めておける量を増やすしかない…と思って訊いたんだけど。


「予算が…」


「そ、そうですか…」


うん、無いない尽くしだなぁと…苦笑いを返すしか無かった…



「じゃあお仕事しますんで」


「わかりました。終わったら声を掛けて下さい。あっしは事務所で仕事がありますんで」


事務所という名の掘立小屋に戻る管理人。多分、ここの見張り以外にもやる仕事があるんだなと頷いて見送る。まぁ、今は殆ど枯れてしまっていて、取水するにしても水道管が底に届いてないんだけどね…


「多分、今回買って来た水を配給して繋いでるんだろうね…」


今回買って来たのは20リッター入りの水瓶が206本。1本は割れちゃったし数本は馬用に使ったのでもう少し少ないんだろうけど。他の人たちも別の地方から買い集めてるだろうし、もっと多いんだろうけどね…道中で奪われたり割ってなきゃ、だけど。


「う~ん…お仕事の内容は「水不足で困っている、何とか水を…」という内容だけど、この貯水池に水を満水まで溜めるだけ…でいいのかなぁ?」


確かに今満水分の水が確保できれば、雨季まで何とか繋げるのかも知れない。でも…


「水が足りなくて困ってるんだし、取り敢えず水で満たす方が先かな?」


でも、「今できる善策」はやっておいてもいいよね?…それで困る人は居ないんだし!…ってことで、できることはやっておこうってことで!!



「ふぅ…こんなもんかな?」



・貯水池の深さは取水の為の水道管も考えてそのまま

・面積を拡大。具体的には元の大きさの9倍くらいに…縦横3マスづつ増量

・底と壁の材質を変更。粘土質の土壁を硬質化した石壁にし、隙間無く埋めた

・もし、ヒビが入っても交換が簡単になるように1m×1mの大きさの石板になっていて、予備も1万枚くらい用意した(重さもそれ程じゃないので大人の男性ならば数人で作業可能)

・蒸発を考えて壁と屋根を設置。雨季には雨を取り入れられるように天井の一部を開閉可能にしておいて、雨が降って来たら開放すればいいようにしてある

・川の洪水を貯水池に溜めるから採水口にて貯水池に誘導して溜める方式に変更。また、天井と採水口にはゴミを除去する魔導式フィルターを設置。消費魔力は例の如く、空気中のマナを自動採取して使用するようにした



以上の設備を、砂漠の砂を物質変換して製造した(かなりの砂を消費したけど問題ないよね?)…自分の魔力が枯渇するかと思ったんだけど、この砂漠の砂って凄い魔力というかマナを含んでて…これ、魔石に変換したら売れるんじゃないかな?


魔石ってのは通常は魔物を倒すと心臓付近を抉ると得られる、魔力を内包した魔道具なんかに使われる魔力電池とか魔道具そのものを創る材料になるんだけど、当然魔物を倒すか天然の魔石の鉱脈を探して採掘してこなければ得られないんだよね。で、魔力操作に通じてれば、魔石から魔力を補充できるから…魔法使いは魔力タンクとか電池として1つや2つは持っておきたい貴重品というわけだ。


「それが無尽蔵に近い程にあるとなれば…」


濡れ手に粟?


「うーん…試してみたいけど。まぁ2~3個くらい作って終わりにするかな?」


僕は砂を両手一杯に掬い、砂から魔石を創るように脳裏に思い描きながら、


「…物質変換」


と唱えた。両手の中にある砂はゆっくりと光を帯び、徐々にその形を変えて行って…


「できた」


手の中には魔石が1つ。大きさは中型サイズの透明な魔石でクリスタルっぽい感じだ。まぁ、単に「魔石できろ~」って思いながらデザインも考えないで創ったんだけどね。大体幅5cm×高さ15cmくらいの水晶と思えばいいかな?


「魔力は内包してるかな?空っぽだとあんま意味は無いんだけど…」


空の魔石そのものは補充できる技術を持ってる人が少ないので、2束3文で道具屋とか魔道具屋で売れる。で、魔力を再充填してお店に並べられるんだけど、再充填が下手くそだと値段が高い割に内包魔力が雑魚というコスパが悪い代物になっちゃうんだよね…。要は、当たり外れもあるギャンブル要素のある商品って訳だ…話しが逸れた。


「結構魔力消費したからなぁ…手持ちの魔石も魔力空っぽだし」


1回使えば半分くらい回復する大物(といっても中型サイズ)を持ってたんだけど、今は空っぽになっている。ダンジョンで偶々拾った奴で、当時は空っぽだったから少しづつ余裕がある時に再充填した取って置きなんだよね…緊急時には重宝してるんだけど、また再充填しないとなぁ…


「さて…魔力吸引」


水晶みたいな魔石を両手で持ち、自身への魔力充填の魔法を唱える。この魔法を使うにも最低限の僅かな魔力は消費するんだけど、残りゼロな魔力なら回復はしないから空っぽかそうでないかは体感でわかるってもんだ。ちなみに魔力を持っている人や魔物に対しても一応有効だけど、生物からの吸引は拒絶されたり抵抗があるせいか、こういう無機質の魔力を内包する物からの方が効率はいい。所謂「魔力譲渡」も効率が悪いらしいから、似たようなもんなんだろうね。物には魔力抵抗はあっても拒絶とかはないだろうし?


「…う~ん、大体小型サイズの魔力くらいは内包してたのかな?」


細かい数値ではわからないけど、取って置きの中型魔石の1/3から半分に掛けて回復したような感触だ。なら、バラツキがあるとしても、最低限あと5回くらい使えば全回復するかな?…ってことで、電池入手の為にも少しだけ量産しとくかぁ…どれくらいの耐久値あるかは不明だけど(何回使えるかの目安。通常、天然物の魔石や10数回で粉々になり、魔物産は数10回はもつらしいよ?)


「…物質変換×10」


手で持ち上げて創るのも面倒臭いので、目視確認でその辺の砂地を対象にして魔石モドキを創造…いや、物質変換だけど…した。砂地が淡く光ってずずずと穴が広がってって(中で水晶に形を変えながら沈み込んでるんだと思う)光が納まり、ささっと砂を避けると水晶が見えてくるという…割とシュール?な光景だった。


(う~ん…これって物質変換で簡易的に創ってるけど、他の方法も模索しないと大量生産なんて無理だよねぇ…単に熱して押し固めてもできるのかな?)


取り敢えず出来上がった10個の魔石モドキの水晶を回収し、5個だけ魔力吸引して全回復しようと思ったけど、4つ目で全回復した。どうも内包魔力量は安定しないっぽい。


「うーん…まぁ回復したからいっか」


取り敢えず、水を貯水池に入れておくかと貯水池の中に入る。あぁ、底まで降り立ったのではなく設置したドアを開けて入ってね。壁は貯水池ギリギリに作ったんじゃなく、10mくらい離して余裕を以て建ててあるんで。一応ドアを閉めて外に音が漏れないようにした。いきなりこんな壁ができてたら大勢人が来て大騒ぎになるかも知れないし…


「さてと…じゃあお仕事の本番、いきますか!」


新生貯水池の大きさは上から見てになるけど…



・深さ5m×横150m×縦90m(水面の長さ)

・最深部は横120m×縦72m

・満水時の貯水量は48,600立方メートルくらい?



「えっと…リッターに直すとその千倍だから48,600,000リッターか…」


(余計わからなくなったわ。数字が大き過ぎて…。重さで言えば、1リッターが大体1kgだから…1000kgで1トンか)


これなら0を減らすだけだし、わかり易いかな?…と思い、6桁の0を消して見ると…


「48.6トンか。うん、重さからじゃ何日もつのかわからんや…」


後で訊いた所、大体人が1日に消費するのは4リッターの水で、砂漠地方ではもう少し増えると聞いたんだけど、仮に6リッター消費するとなれば1人なら8,100,000日で消費仕切る量となり、この町には大体15万人弱の人々が生活してるらしいので、単純計算で54日もつと…あれ?


「全然足りないんじゃ?」


満水してなみなみの水面を見たけど、計算結果にがっくりとorzする僕。トボトボといわれた通りに事務所に向かったんだけど、管理人のおっさんがびっくりしてたけど、どうにもならない悲壮感に打ちひしがれてたんだけど…


「あら、早かったのね?」


「えぇ、まぁ…でも、あれ1つでは次の雨季までもつかどうか…」


と、暗い顔で報告したら…


「えぇ、あれ1つではとても足りないの。だからね?」


「え゛?…」


聞いてませんよ…ミランダ婦人。貯水池が、後…


「残り99個もあるんですか?…それってマジですか?」


「えぇ…マジって意味はわからないけど、真面目な話しよ?」


あ~、まぁ…蒸発して失われる量を考えれば、数で補うのはわかるんだけど…


「それで、今日向かった貯水池はどれくらい水を補充できたのかした?」


「ええと…元の水量の9倍…かな?」


「え?」


取り敢えずお昼ごはんの時間帯だったので食べた後に案内することに…いや、僕よりは詳しいんだけどね?


「こ、これは…」


「一体!?」


婦人は言葉を失い、領主様は公務で不在だったので来なかったけど、代わり?に来た使用人の女性(いつ名前教えてくれるんだろうか?)も驚いて叫ぶ始末。ま、まぁ驚くか、普通は…


「生活魔法でちょちょいと…」


「生活魔法で…?」


「できる訳ないでしょ!」


あー、まぁ、普通はそんな認識だよね?…まぁ僕はできちゃうんだけど…。ま、そんな訳で、まさか全部で貯水池が100個もあるとは思わなかったので…うっかり拡張工事と蒸発防止措置と中の壁の改良もやっちゃったんですが、


「報酬は弾むから専属にならないかしら?」


という、貯水池専門メンテナンス要員なんてブラックそうな依頼を押し付けられそうになったけど…丁重に拒絶しておきました。その代わり、残りの貯水池も同仕様に改良して、交換メンテナンス用の石板も1つの貯水池に対して1000枚用意する羽目に…。交換時のノウハウも説明書を1つ用意しましたとも!(複製は面倒なので丸投げしたけど)…あ~、石板は仕様だけ教えて、無くなったら石工にでも作ってと丸投げしました。一応材質は切り出ししてる山に行けばあるような普通の石材だしね(名前は知らない)


こうして…結局最初の予定通り、1箇月をフルに活用して残り99箇所の貯水池の改良工事を行い、水を溜めて回って…全部が全部、雨季に洪水を起こす川の傍にある訳ではなかったので、そういう所だけ取水口は作らなかったけど…今日、ようやく1日ゆっくりできる休日を堪能してる所、です。いや、流石に28日オールで仕事はしてないよ?…週に1回は休みを取ってたし…だから、24日くらいかな?…仕事してたのは。


「はぁ~…1日平均4~5箇所だったか…つっかれたなぁ~~~………」


(現場が隣接してる地区なら兎も角、離れてると2箇所くらいしか回れなかったりもしたし。間に合わせる為に半休にして強引に作業した週もあったっけ…)


「最早、水を溜めるだけの簡単なお仕事じゃなくて、完全なブラック土木業だったよなぁ~」


(何処で間違えたのか…って、完全に自分の失態かぁ…あそこで余計なことを考えないで放水して、はい終わり!…で済ませとけば良かったのに…はぁ)


これで賃金がちょっぴりだと悲しいけど、まぁそっちは期待していいって聞いてるし、帰りは馬車に金貨を積むほど貰えたり…はしないか。水の買い出しで結構資産が削れてるって話しだしな。それより、問題は…


「雨季に溜まる水量ってどんくらいなんだろうな?」


貯水池全てが満水になるなら、例え15万人が1日6リッターを消費しても、5400日…1週間が7日。1箇月は4週間…28日となる。1年は12箇月で336日。5400日は…あれ?


「16年くらいはもつのか…半分でも8年とか余裕?」


勿論、完全に蒸発を防ぐことは無理だけど3割くらいは蒸発で消えてしまうとしても…


「一旦満水になれば10年ちょいは余裕じゃんか。エライもん作っちまったか?」


仮に人口が増えても倍の30万人になったとしても、5年は余裕ってことは…


「…ま、まぁ。そんなにもっても貯水池の水が変質してしまうから、なぁ…」


難しい問題が発生してしまったかも知んない。浄水器作ってくれって仕事が回ってこないよな?


「それは、魔道具作りに人間に丸投げだな…うん」


取り敢えず、今日は1日お休みだから仕事が無いことを祈りつつ、自室のベッドで寝直す僕だった…おやすみなさぁ~い…


━━━━━━━━━━━━━━━

お疲れ様!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る