第7話 温かな人たち
その日はとても空の高い晴天だった。福岡駅に降り立った私は、とりあえずタクシーに乗り込む。まずは死亡診断書を取りに病院へ。
事前に連絡を入れてあった病院には、受付の妙齢なお姉さんが待機してくれていた。興味津々に私と父の関係性を聞きかがる彼女を手土産にて静かにしてもらった後、現金でお金を払い後にする。
①手土産 千円 これは出来れば必須。要は気持ちです。
②死体検案書のコピー代 50円。原本は役所に渡してしまうため、数枚は必須。
③駅~病院~役所までのタクシー代 3千円。地味に痛い……。
「すみません。お電話しておきました杉山ですー」
「杉山さん? 急いで」
役所のカウンターをお訪れるなり、中にいた数名の職員さんたちが慌ただしく動き出す。溜まっている水道代の払いを代理人として払う手続きの紙、住民票の請求、そして先ほどの死体検案書を渡して火葬届けをもらう。
なにせ書く書類が多いうえに、本日中の火葬のため職員さんたちも時間を気にしてくれているのか流れ作業だ。
「はい、次これ書いてー」
「はいはいはいはい」
「ここハンコ抜けてる」
「こっち、お釣りしまって」
「はいはいはいはい」
有難い。とても有難いのだが、イマイチ自分がどこまでなにをしているのかは把握出来ていない。それでも現金を払い、全て領収書をもらっておく。
「すみません、イロイロありがとーございました」
そう言って頭を下げる頃には、すでに役所へ来てから小一時間経っていた。
「いえいえ、こちらこそ助かりました」
職員さんたちのこの言葉もまた本音だ。もし私が父を引きとならなければ、市のお金で父の火葬や全てのことをしなくてはいけなくなる。ただでさえ予算が決まっている役所などでは、こういた費用が多いととても大変なのだ。
ただそれでも知らない土地で、こうして何から何まで世話を焼いてくれるのはただの親切心に他ならない。それが今はとても嬉しい。
私は徒歩でも行けると言われ持たされた地図を見ながら、警察署へと急いだ
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