第5話 現金って大切
昨日の警察官、橘さんへ引き取りに行くという前に私はまず交通費を検索した。飛行機だと三万弱かかり、新幹線なら二万円以内だ。往復を考えると、新幹線が無難だろう。ただこの先他にもお金がかかるはず。差し当たって必要なのは、死亡診断書代と住民票、あとは家賃に火葬代くらいだろうか。
ざっと見積もってもおそろしい金額になりそうなことだけはわかった。
「ご遺体を引き取りに来て下さるのですね。ありがとうございます。それでなんですけど、まずは葬儀屋さんのご手配をしていただかなくてはなりません。葬式を行わなくとも、ご遺体を火葬場まで運ぶには、葬儀屋さんしか出来ないんです」
「えー、まぁタクシーに遺体乗せるワケにもねぇ」
「デスデス」
そうか。誰かに運んでもらうわけにもいかないし、焼くとなれば棺桶と骨壺も必要だろう。一番安い、簡単なのといっても、行ったこともない土地だ。とりあえずネットで探すしかないな。
「あとすみません。お父様の所持金等はこちらでお預かりしているのですが……」
なんとも歯切れの悪い言い方だ。でもまぁ、だいたい想像はつく。
「空っぽ?」
「小銭ぐらいですかね。通帳もあったので、念のためにこちらで通帳記入も行っております」
「うわぁ、ホントになんて親やねん」
「まぁまぁ、そう言わず」
やはりというかなんというか……。父のお金はあてにならないということだ。想定範囲内なので、これぐらいは大丈夫。
「あとですね、お亡くなりになってから発見されるまでの光熱水道代が、約三ヶ月分ほど溜まっているそうですので、そちらを役所で火葬届をもらうときに払って欲しいとのことでした」
「雪だるま形式で増えていくのは気のせい?」
「あー、いやぁそれは……。あと、死亡診断書ですが、今回は検死をしているので死体検案書となります。あとでクリニックの住所等教えますので、まず福岡にご到着されたらそこで死体検案書をもらってきて下さい」
死亡診断書や死体検案書は基本、自費診療だ。そのため金額は各クリニックによって、独自の金額が設定出来る。相場としては、死亡診断書が一万なのに対し、死体検案書はだいたい三万ほどだ。それでもクリニックにより差があるので、あとで電話をして確認をしないと。
個人クリニックが担当したとなると、まずクレジットカードは使えないと考えた方がいい。
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