第4話 父の母、つまりは祖母

「もしもし杉山ですけど」

「ばあちゃん、私だけど」

「なんだい急に。詐欺電話かと思ったよ」

「やめてよ。今警察から電話来たんやけど」

「ああ、来たんかい。あんたんとこにも」

「知ってたん?」

「そりゃあ、親だからね。で、なんだって?」

「父さんの遺体引き取りに来いって」

「そうか……」


 いつも勝気な祖母からは、覇気が感じられない。女を作って離婚し、家とも絶縁したとはいえ、祖母にとって父は大切な長男だった。それは決して、私や母の前では言わなかったが、いつも感じてはいた。だから今回、父が孤独死したのを聞いて私に言わなかったのもきっと私に気を遣ってのことだろう。ただ本音はもう分かっている。


「あんたんとこからでも行くのは大変だろ」

「そうやね。遠いわ。でも、ばあちゃんは行けないでしょ」

「そりゃ無理な話だ。足も悪いし」

「そうやね、知ってる……」

「骨送ってもらえんのか。金払ったら」

「無理やって。まったく、同じこと考えたわ。……まぁ、仕方ない。行ってくるわ」

「そうか……。悪いね、あんたには……」

「ええよ。またどうなったか、電話するから」


 祖母は今年74、父は54か……。自分より自分の子が先に逝くというのは、どんな気持ちなのだろうか。私には想像もつかないことだ。そしてこれだけ話しても、私にはまだ父が死んで、そしてその遺体を引き取りに行くという実感など欠片もなかった。

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