第3話 孤独死の経緯
父は長年勤めていた夜勤の仕事を11月に退職。その後自宅にいたと思われる。部屋に残されていたのは血圧等のお薬、直接的な死因は腐敗が酷かったため判明出来なかったものの、担当した先生からは高血圧悪化による脳出血または狭心症発作等であろうとのこと。診察券など見当たらなかったため、受診している病院は判明しなかった。
そして退職後、約一か月ほどで自宅にて死亡。引き落としが出来なくなった家の管理会社が父の遺体を発見したのが先々週らしい。死後すでに二か月ほど経過していた。
「それでですね、ここからが本題なのですが、ご遺体を引き取りに来ていただきたいのです」
「え、やだ」
「まさかの即答」
「え、だって、そりゃあねぇ」
「ああー、急に言われて混乱されているのは分かります。今、ご遺体の方はこちらの警察署で安置させていただいております。このまま娘さまがお引き取りになられない場合、ご遺体は市の方で火葬させていただき骨も市の共同墓地に埋葬という形になります。ですが、こうやって親族の方がいる場合は、やはりお引き取りになっていただきたいなと……」
「はぁ」
私の反応に警察官さんは。しどろもどろだ。
普通の親子関係ならきっと、泣くかすぐに引き取りにという展開なのだろう。しかし私と父の関係はただの血縁関係でしか、もはやない。遠くの身内より近くの他人とはよく言ったもので、それぐらい私の中では遠くの誰かの話をしているとしか話は入ってこなかった。
「父とは母が離婚してから一度も会ってないし、それを引き取りに行くなんて……。あ、焼いた後に骨だけ送ってもらえないの?」
「さすがにそういうのは……。だいたい、宅急便で骨って」
「デスヨネ」
「デスネ。すみません」
「んぁー、急に言われても一人ではちょっと決められないので。明日直電してもいいです?」
「えっと、警察署に電話して、僕を指名してくれればOKです。安置してからもすでに日数が経過しているので、早めにヨロシクです」
「指名! りょーかいデス」
通話を切ると、私はその場にしゃがみ込み大きくため息をついた。ただそんなに悩む時間は残されていない。私は急いで父方の祖母へ電話をかけた。
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