第12話
季節は冬を過ぎ、春になった。
「お前、結局彼女できたんだな~。」
大学1年生で一緒に時間を共にした友人とは、今年度も一緒に登校していた。
「別に…頑張って気持ちを伝えただけだし。」
未だに恋愛話に慣れない俺は、友人の方を向かずに口ごもった。
「いやぁ~…俺も恋したいな~! 彼女欲しいな~!」
「彼女欲しいって思っているうちは、彼女できないって知ってるか?」
「いやいや、あれはきっと迷信だ。次は俺が恋愛の神様に助けてもらうんだ!」
友人は、気合い充分のようだ。新年度で気持ちが弾むからかもしれない。
「とりあえず、今年度もよろしくな。」
「おう、新城もよろしく。」
俺達は、顔を見合わせて頷いた。
「お待たせ、加藤さん!」
「新城くん! 今年度もよろしくね。」
新年度の授業ガイダンスの後、俺は友人と別れて集合場所へ向かった。
そこには、楽しい時間を共有することができる、最高の彼女がいる。まだ名前で呼び合うことはできない程距離は遠い…が、自分達のペースで進めたらいいなと思う。
「じゃあ、カフェでも行こうか、加藤さん!」
「うん! 新年度一発目のカフェだね。」
俺と彼女は、ゆっくりと歩き始めた。まだ空は日が傾いておらず、綺麗な青空が広がっている。
―――恋愛は辛いこともある。だけど、それは美しい景色を見せてくれる。
「今日はいい天気だね。」
「うん、新年度にピッタリだ。」
彼女との他愛のない話は、そんな景色をより色づけてくれる気がした。
終
加藤さんは、恋愛が嫌いだ。 キコリ @liberty_kikori
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