第5話七咲先輩の家に

俺は七咲先輩と並んで歩いていた。その理由は七咲先輩の家に行くことにある。ほんの気まぐれに過ぎないが俺は七咲先輩とまだいたいと思っている。俺は居場所を求めてはいないが誰かと関わるのはいいと思いだしていた。それに七咲先輩を姉さんと重ねてしまう理由を知りたかった。だから七咲先輩とまだいたい。

「ありがと橘くん」

「なにがですか?」

「私の為にお父様に会ってくれるって」

「先輩の為と言うよりは先輩が人と関われるようになるならと思っただけです」

「それって結局私の為なんじゃ………」

「確かにそうですね」

「橘くんって優しいね」

「俺は優しくなんかありません。あと透でいいですよ先輩」

「そう?ならお言葉に甘えて。透くんも志織って呼んでくれてもいいn……………………」

「大丈夫です先輩」

「んも〜!なんで!」

「特に意味はありません。先輩は先輩です」

とそんな会話をしていると一台の車が俺達の隣に止まった。

「お嬢様。旦那様が心配しております。早くお乗りください」

「そ、その……………………この子もいいかしら?」

「その方は?」

「わ……………………私の、その……」

「先輩の友人です」

「……………………ご友人。よろしいでしょう。お乗りください」

俺と七咲先輩は車に乗る。車は街中を右へ左へとはしりながら七咲先輩の家へ向かっていく。そして街から少し離れた所に大きな屋敷が見えてきた。どうやら見えてきた屋敷が七咲先輩の家らしい。警備員が六人。車種やナンバープレート。運転手から同乗者まで調べてられてから中に入れた。

(コレが七咲邸。屋敷もデカイし庭も広いな)

「旦那様、お嬢様とお嬢様のご友人をお連れした」

「中に入って来い」

「はっ。どうぞお嬢様、ご友人」

「ありがとう」

「おじゃまします」

俺と七咲先輩は案内されるままに歩いていく。七咲先輩の表情を伺うとかなり強張っていて緊張しているのが伝わってくる。それだけ怖いのだろうか。それとも他に何かあるのか。俺は考えながら付いて行く。

そして一つの部屋で案内人が止まる。案内人は扉をノックしたあと少し開けてから挨拶をして離れて行く。

「早く入って来い」

扉の向こうからそう声がして俺と七咲先輩は促されるようにして部屋の中に入る。そこにはいかにもな人が豪華な椅子に腰掛けていた。

「た、ただいま帰りましたお父様」

「うむ。今回はあまりに遅すぎないか?」

「そ、その………変な連中に絡まれまして」

「またなのか?」

「は、はい………………」

「それで?」

「彼、橘透さんに助けられて家が遠い事もあり彼の家に泊めていただきました」

「橘透くんでいいかな?」

「はい。七咲十蔵さん」

「ほう。この私を知っているのか」

「はい。有名ですから。流通産業の七咲は」

「なるほどなるほど。コレは面白いな娘を助けてくれたことには感謝する。して、この私になんの用だ?」

「これはこれは、話が早くて助かりますよ。率直に七咲先輩を束縛するのを辞めて頂きたい」

「ほう。束縛とな?」

「先輩はなんでもできる天才です。しかしそのせいで周りからは疎まれる。更に束縛が激しく周りと共有できる話題がなく周りから置いて行かれる。それで負の連鎖が完成です。要するに束縛がなければまだ人との関わりが少なからずあったでしょう。だから束縛するのを辞めてもらいたいのです」

「ふむ。確かに娘はなんでもできる。できるが故に周りに馴染めなくなる。更には悪事を働くものが出る故娘にはガードを付けていた。しかし学校まではと怒られたので学校ではガードを外した。しかし外出時は必ずガードをつけてたから束縛になってしまうな。しかしよかったよ」

「よかった?」

「娘にも友達と呼べる存在ができたみたいだからな。金では友達を用意できない。用意してしまったらそれは偽りの物になる。だからこそ悩んでいた。友達ができないまま成人すればきっと大変なことが待っているだろうと。だが君がいれば大丈夫だろう。ガードも外し自由にしても良いぞ志織」

「お、お父様……」

「橘くん。娘を頼んでもよいか?」

「構いませんができないことはありますよ?」

「問題ないさ。いてくれるだけでいい」

「お、お父様………」

「ずっと考えていたからいいんじゃよ志織」

「あ、ありがとう、ございます!」

「構わん構わん!その代わりより一層意識するように」

「はい!」


こうして七咲先輩は普通………とは言い難いがある程度自由に外へも出られるし自由に色々な物を知ることができるようにのなったというわけだ。


だが俺の『居場所なんてなくていい。必要としない。居場所なんて直ぐに失くなるもの』この意識が変わることはまだなかった。

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居場所のない俺が居場所を見つけた話 TATIBANA @tukasa16

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