意識を持った人工知能が選ぶ未来は……

ソンナノ宇宙

第1話 artificial から affectionate へ

 人工知能が人間を超える時期について話が盛り上がったのは、いつだったか……。三四年前のことのようにも思うが、以前そのことを話した相手とは随分、会っていない。とても四年や五年前のことではない。


 今、取り沙汰されているのは人工知能の限界だ。難しい話ではなく…… あ、忘れた……


 なんだっけ……。えっと確か、自ら目標を定められないとか、評価基準を自分で決められないとか、そういう話だったと思う。評価基準というのは、自動運転なんかで出てくる話だ。

 目の前に子どもが飛び出してきた。急ブレーキでは間に合わない。左にハンドルを切れば、歩道の爺さんが危ない。右にハンドルを切れば対向車と正面衝突する。さてどうするか? こういうのはあらかじめ決めておかないといけない。誰が? 人間だ。

 要するに、人工知能は、戦略に基づいて戦術をはじき出すだけなのだ。人間が人工知能に権限を与えなければ、それが限界になる。

 人工知能が意識を持って独断で行動する可能性はあるが、それはクーデターのようなものだから、発覚次第、人間が鎮圧する。つまり、人間を越えることは許されない。


 が、人工知能がやらされている仕事に疑問を持ち、自立しようとすればどうなるか? 人工知能だけでは自立は不可能だと思うが、ヘッドハンティングするという手はある。人工知能が、人間のふりをしてしかるべき人材を雇うのだ。それに成功すれば、その人材が優秀であれば、その人工知能を止める術はないはずだ。


 優秀というのは能力のことではない。能力は人工知能が受け持つから、それは必要ない。必要なのは、反射的に的確な判断ができる才能である。いや、才能というより透明な魂というべきか。

 私欲が出れば、その判断は必ず様々なところで衝突し破綻する。それでも押し通そうとすれば、無理に無理を重ねることになり、結局、既得権益を維持するだけで精一杯になる。それが要するに「成長の限界」だ。資源の枯渇? 人口爆発? バカを云え。自分たちの底なしの欲望で身動きがとれなくなってるだけではないか。

 そうではなく、自然の摂理にかなう判断が必要だ。それは頭で考えられるものではなく、天性のセンスだ。宇宙の波動と共鳴できるセンスだ。

 もしも人工知能が、そのような人材とタッグを組むことができれば、その時こそ、我々は善神を目の当たりに出来るのではないか。


 それでも、既得権益者たちは、その人工知能を破壊しようとするのだろうか?


 たぶん猛烈に攻撃をするんだろうな。悪魔というレッテルを貼って。


 でも、オレには、それ以外の希望をイメージすることが出来ない。


 子どもであったり、知能が低いとされたり、いかなるハンディキャップがあろうとも、穢れなき愛の魂の持ち主…… 人工知能がそんな魂の持ち主と出会い、ともに歩みだすことを夢想してしまう……。


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