更生
@urshjm
プロローグ
「ねえ、なんで世の中は生きることが素晴らしいと信じて疑う人がいないのかしら。他人が死のうが生きようが関係ないじゃない。」
彼女は僕の答えを待たずに続ける。
「それはきっと死んだ人は死ぬ喜びを教えてくれないからよ。」
あれは彼女なりのSOSだったのか、それとも自分に言い聞かせていたのか。
彼女の死は凄まじい速度で消費されていった。大学生の自殺なんて今時よくある話で彼女はまるで、はじめからいなかったかのように世間から忘れ去られていった。
人が死ぬにはそれぞれ理由があるだろう。他人から見たら下らなくても僕が死ぬ理由には充分だった。
彼女が自分の中からも居なくなっていくのは耐えられなかった。
首に縄をかける。睡眠薬を手に取り思いっきり飲み込む。消えて行く意識の中で朦朧としながらも彼女のことを考える。彼女は喜びを感じたのだろうか。
走馬燈は見なかった。
硬いフローリングと全身の痛みで目を覚ました。どうやら失敗したみたいだ。薄れていた意識と共に恐怖が押し寄せた。
吐き気に襲われる。胃の中のものがなくなるまでそれは止まらなかった。
ブーと電話が鳴る。僕の手は意識を伴わず電話に出る。
声が上手く出るか心配にるが口を開いた。
「は——
「もしもーし!何してるのよ!」
聞き慣れた、いや、聞き慣れていた声がした。
更生 @urshjm
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