第6話 和歌山

 自分が五歳の時に和歌山に移り住んだ。それから、27歳の時にバイトで入った保温工の手元になって、人間関係、と言うより、健康面で怖くなって、逃げ出すまで和歌山で暮らしていた。

 いや、その前に、うちの母親が経営していた飲み屋の客に紹介されて、茨城県鹿島の鉄鋼会社の孫請け会社に放り込まれて、逃げて帰るまで、和歌山だった。

 鉄鋼会社の孫請け会社、協力会社とは名ばかりで、現場は危険な所だった。自分の目前、一メートルの所に熱いインゴットの塊が落ちてきた時に、正月休みに帰ったら、バックレようと考えた。

 熱いものだから、五トン以上のものを磁石でくっ付けても、クレーンの具合で落ちるのだ。

 和歌山で良い思い出は幼稚園から小学校四年生までだった。

 前にも書いたが、自己破産した残り金とコネで旅館を買ったは良いものの、上物だけで地主ともめて追い出された。

 追い出されて、止せばよいのに、父親の本妻が暮らしていた家に住むことになったが、アレは止めておくべきだったと思う。

 そこも、上物だけで地主は隣に住む一家のもので、毎月、地代を取られていた。

 それならば、そこの所有権を返して、元の小学校に通えば良かったのだが、そこまで知恵の回らない母親は、その家にしがみつき、最後にはそこを最初に出て行った。

 その馬鹿な典型の母親は父親が亡くなって、45年後に、朝飯を食った後、心筋梗塞を起こして、亡くなった。

 大往生だと人は言ってくれるが、残された自分は残った荷物の処分に明け暮れている。

 和歌山の話から外れたが、又の機会にする事にする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とうに夜半も過ぎて まる・みく @marumixi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ