とある日曜日に発射された謎の飛翔体

絶坊主

第1話


とある夏の日の話。


私は暑い時好になると毎朝出勤する時にコンビニの機械で作る180円のアイスコーヒーを買う。


いつものコンビニに入り、入り口のアイスボックスから氷が入ったカップを取る。


レジまでの数歩の間に氷って固まっているカップを握り潰し、おサイフケータイでお支払いする。


この一連の流れが、夏の毎朝のルーティン。


「いらっしゃいませ!」


その日は日曜日ということもあり、入店した時にお客は私1人。いつものおばちゃんの店員ではなく、高校生くらいの純朴そうな男の子が商品を陳列しながら元気よく挨拶してくれた。


アイスボックスを開ける。


いつもは、ほぼ満杯入っているんだけれど、猛暑のせいか残りのカップは3個しかなかった。アイスボックスの底の方にあるため、手をいつもより突っ込んでカップを取る。


この時点でコンマ数秒のロス。


そして、いつものようにカップを握り潰し・・・握り潰し・・アレ?


底の方にあったからか、カッチカチでいつもの握力では潰れなかった。


レジまで数歩。


いつものルーティンを乱したくなかった私。それでなくても、既にコンマ数秒ロスしている。


握力のレベルを最大MAXに。


次の瞬間。












ボッファーーーーーーーーーーーーーンっ!











穏やかな日曜の朝に相応しくない、バイオレンスな音とともに氷の塊がカップの蓋を突き破り発射された。


私の握力に忠実に正比例した氷の塊は、大きな放物線を描いて宙に舞う。


一瞬、スローモーションになり、純朴な店員と私はその飛翔体を見つめていた。


そして、その飛翔体は地上に落ち、無残に砕け散った。純朴そうな店員と私は、この非日常的な出来事に思わず顔を見合せて笑った。


「す、すいません!固かったもので、ついつい握りすぎたみたいで!」


恥ずかしさとオモロさで笑いが止まらず、笑いながら言った私。


「こんな人います?いないですか?」


何故か自分の犯した罪を棚に上げ、他にも同じような人間がいる事によって自分の精神の均衡を保とうとしていた私。


「いない?いる?いない?」


純朴そうな店員は笑っていた。


どうやらいないらしい。


「あ、新しいの持ってきます!」


純朴そうな店員は、満面の爽やかな笑顔で言った。


「ごめんなさいね、悪いのは自分やから、2杯分払いますわ。」


「いえ、1杯分でいいです。」


「いやいやいや、2杯分払いますよ。」


このやり取りを数度繰り返した。


「いえ、本当に大丈夫ですから!」


店員の爽やかさと頑な返答に甘えた私。


「すんませんね。ありがとう!」


そう言って、アイスコーヒーを入れ終わり車に乗った。


でも、やっぱり気持ちが落ち着かなかった私は200円を握りしめ店内へ。


「いらっしゃいま・・・あ・・・。」


先程と同じく元気よく挨拶をして、途中で私と気付くと爽やかな笑顔に。


「募金しときま~す!」


「あ、そうして下さい!ありがとうございます!」


いつもと変わらない日常。


しかし、ほんのちょっとしたハプニングで、話しをした事もない二人がこんなにもお互い笑顔になれるなんて・・・




改めて、人生って楽しいなと思った出来事。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある日曜日に発射された謎の飛翔体 絶坊主 @zetubouzu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ