まさかの朝②

「そういえば二人はどの科を選択するの?優奈ちゃんはマジシャン科て言ってたけど竜にぃは?」

「僕はブレイダー科にするつもりだよ」

「やっぱりか~、昔はよく、木の棒振り回してたもんねぇ」

恥ずかしい暴露だ、織音と二人きりならまだいいが今は優奈もいるそんな前の話は流石に話したことがない。

そんな僕とは別に優奈と織音は顔を見合わせてくすくす笑いあっている。

「じゃあ竜にぃは軍事学校に入学しても木の棒みたいに刃物を振り回すのかな?」



すごくおちょくってる言い方だ、確実に僕に恥をかかそうとしている。

「でも絶対似合いますよ!!竜人君が刀をジャキンジャキン!!て振り回してるところ!」

そして優奈は一人でテンションを上げている、楽しそうに語って、目を輝かせてる姿はまるでヒーローを見ている幼稚園児みたいだ。

「あ、もう時間じゃん、それじゃ私は先に学校行ってきまーす」



行ってらしゃいと織音を玄関まで見送り扉が閉じる音が聞こえた時、僕はあることに気づく、そう時刻が八時を回っていることに……。

「ねぇ優奈、織音が家を出たってことは……何時かわかるか……??」

「八時ですね……」

「都坂軍事学園の登校時間はわかるか?」

「……八時十五分です」

「学園につくまでに何分かかる?」

「三十分……」




その事実に気づくと僕らは急いでカバンをリビングに取りに行き、家を出る。

もちろん家の戸締りも忘れない。

「優奈急ぐぞ!!」

と、僕は言い優奈をお姫様抱っこする。

「わあ?!急にびっくりしました!!少し心の準備をする時間を……」

そんな言葉を右耳から左耳に流し僕は走り始める。

走るといってもそれは歩きやすいように整備された道路じゃない、僕が走るのは屋根の上だ。

「優奈!!優奈が入学前から練習してたあの魔法をかけてくれ!!大丈夫だ遠いところからかける訳じゃない!!」

「もうどうなっても知らないんですからね!!」

少し不安そうな顔をする優奈、それも無理はない、なにせ実践で使うのは初めてなのだから。

「えぇい!いきますよ!!《速度強化アクセラレーション》!!」

優奈がそう唱えた瞬間、身体の内側から力が湧いてくる。

「お、成功みたいだぞ、それじゃ飛ばすよ!」


僕はさらに早く屋根と屋根を飛び移り優奈にかけてもらった速度強化アクセラレーションの効果を実感する、このスピードなら八時十分には学校につけそうだ。

そんなことを思ってるうちに学校の校門が見えてくる。

「竜人くんもう着きますよ!!」

その声に反応し、近くの人のいない場所に飛び降りる。



「よし、八時十分ちょうど教室まで急げば間に合う」

その場に優奈をおろし、学校に急ごうとするが優奈が立ち上がらない、それが気になり優奈の顔を覗き込むと少し息が荒く肩で呼吸していた。

「優奈?大丈夫か……?」

そう声をかけ、手を優奈の前にだす。

優奈はその手を掴みゆっくり立ち上がる、少し足がすくんでいるが大丈夫そうだ。

「思ったより早くて少し怖かっただけなので全然だ、大丈夫です」

「ごめん、ちょっと飛ばしすぎたかも」

「よし!そろそろ行きましょうか」

そういうと優奈はスタスタと歩き出す。

僕も少し急いで優奈の横に並び、他愛もない話をしながら教室に向かう。

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都坂軍事戦記 鳴瀬楓 @Akairokitune

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