業国の王子の首集め
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業国の王子の首集め
経済的に栄えている、業国のある朝。
処刑場で多くの美女が拘束され、裸同然の布切れ一枚で多くの観衆に晒されていた。
彼女たちは今日処刑されるのだ。
それもシンプルなものだった。
血が染み込んでいる木の台と斧が置いてあった。
斬首刑。
美女の顔は恐怖で引きつっている者、泣いて命乞いをする者、死を悟って諦める者など、様々だった。
観衆のほとんどが男で詰め寄っていた。
まずは、大きな体躯をした処刑人が恐怖で引きつっている美女を処刑台へと頭を載せた。
すると、美女の顔が涙で濡れ、やがて、
「やめてッ! 殺さないでッ!」
美女がさらに顔が歪ませながら、暴れ出した。
処刑人は美女の無防備な腹に向けて蹴り出した。
「ゲボッ!?」
美女が舌を突き出し、胃液を吐き出した瞬間、細い首が断ち切られた。
首はゴロゴロと転がり、舌がベロンと地面に垂れたところで止まった。
首を失った身体はビクンビクンと痙攣しながら胸を揺らした。
処刑場は観衆の歓声で湧き上がった。
処刑人は観衆に向けて、不様な顔で事切れた首を掴んで高々と翳した。
観衆はさらに歓声で湧き上がった。
歓声が止むと、処刑人は掴んでいる首をこれから処刑する美女たちに向けて顔を近づけていった。
美女たちが大きく反応したのは言うまでもなかった。
自分の仲間が、痛みで見開いた目と突き出した舌の顔のまま、今やなにも言わない生首になってしまったのだから。
処刑人はその首の舌で美女の頬を舐めさせた。
美女は拘束されているため、避けることができなかった。
美女は大きく泣きだし、小水を漏らし始めた。
処刑人が次の美女へと同じ行為をしようとし始めた時、兵士が割って入った。
「すみません、その辺にせよ、と」
処刑人は溜め息を吐いた。
「わかった。では、この首を魔術師に頼むぞ」
「は、えッ!? 私がですかッ!?」
刑吏たちの動きを見ていると、痙攣しなくなった身体を運んで肛門から首の穴へと貫通するように
「当たり前だろ? 刑吏は今、忙しいんだ。首を持って行くくらい兵士には安いもんだろうが」
「いえ、私は――ッ!」
「つべこべ言わずに持っていけッ! じゃねぇと、テメェのイチモツにこの女の首を突っ込ませるぞッ!」
処刑人は女の首を兵士の顔に突き出した。
女の首の舌が兵士の顔を舐めるようにしていた。
その冷たい感触に兵士は女の首を地面に落とした。
処刑人は再び女の首を拾うと、
「てめぇ、次これを落とせば、脱がせるからな」
兵士はゾッとしながら、女の首を受け取った。
そのまま足早に刑場を後にした。
一方で、刑吏たちは身体を貫通を終え、刑場の端へと突き刺した。
首がないというのに、少なからずの男たちは突き刺された女の死肉に夢中になっていた。
処刑人は引き続き、美女たちの斬首刑を続けていた。
その最中、刑吏が突き刺した身体の近くにさっきの女の首を杭に挿して晒した。
首は血を拭き取られたらしいが、見開いた目と垂れた舌はそのままだった。
その前にいる男たちは首と胴に分かれた美女の死体をみて興奮していた。
その場で射精する者もいないこともなかった。
やがて、処刑が進んでいくうちに、晒される死体が増えていった。
そのどれもが、首と胴が別たれていて、美女だったものだ。
最初に不様な顔を晒された女もそうだとはとても思えないほどだったが、男たちには関係がなかった。
処刑人が全ての処刑を終えると、死体の晒し時間が始まった。
晒し時間は、処刑した死体をさらに近く観覧することができる時間であった。
処刑が終わってから夕方になるまでの間だけだ。
それ以降は、死体は獣の餌にされるのだという。
今回の観衆は多かった。
なにせ、死体とはいえ、美女の裸体を見られるのだから。
その美女の身体に向けて石を投げてくるのは一種の娯楽のようなものだろう。
男たちは固くなるであろう乳房に向けて、石をぶつけるという娯楽を始めた。
その際に疑問を持たれることがあった。
誤って首に石がぶつかっても、傷や痣がつかないのだ。
それを不思議がる者は少なからずいたものの、やはり女の裸体に向けての石投げですぐに忘れる。
陽が沈みかけると、観衆を帰らせ、刑吏たちによって死体は回収される。
刑吏たちが先に杭に挿した首の方から回収を始める。
「今日の処刑は一段と盛り上がったよな」
「美女が多かったからな。仕方ないんじゃないか?」
「こいつら、確か強姦殺人者だよな?」
「ほんと、なんで首を刎ねられるようなことしたんかね」
「最初に晒された首なんて、酷い顔のままだぜ。同情したくはないけどさ」
刑吏たちが話し込んでいると、刑場に小さな足音が近づいてきた。
刑吏たちはその足音に目を向けた。
その人は顔が少し幼く見えるが、死んで晒された美女に負けないほどの美貌と体格を持っていた。
首輪とイヤリングにぶら下げられている青い宝玉を揺らしながら、刑吏たちに一礼した。
「皆さん。いつもご苦労様」
その人の挨拶に、刑吏たちは少し慌てて頭を下げた。
「いえ、ご足労いただきありがとうございますッ! 魔術師様ッ!」
その挨拶に、魔術師の女は困った様子を見せた。
「あ、あの、わたしはまだ王宮に勤めて短いのですから……」
兵士たちに頭を上げさせようとしどろもどろに言葉を出している。
「あ、そうだ。あの、早速ですが、それらを回収しに来ました」
魔術師は刑吏たちが持っていた首にむけて指差した。
刑吏たちは納得しながらも、困った顔を見せた。
「いえ、かまわないのですが……。包むものがございません……」
刑吏は仲間たちに向けて確認をするが、「俺も」という声が周った。
その間、魔術師は杭から外されたばかりの最も肉付きが大きい身体に目を向けた。
それが他の死体と分けられたのが気になった。
「あの、この死体は?」
「えっと、確かこの首だったような」
「いえ、なぜ分けて置かれているのかを訊いたのですが」
「あ、ああ。実は、獣園でコヨーテが出産したのはご存じですか?」
「ええ。確か、餌が足らなくなるかも……。ああ、なるほど」
「そのためのものです。もっとも、切り分ける必要がございますが……」
魔術師はふと閃いて、刑吏たちに何枚もの風呂敷を刑吏たちに渡した。
「それで首たちを包んでくれると助かります。代わりに切り分けますので」
「えッ?」
刑吏たちが驚いている間に風の音が響き、そして風の刃が一瞬で女の身体が部位ごとに切られていった。
女の身体は肉塊へと変えられていった。
魔術師は頬に飛び散った血を長い舌で舐めた。
「うげ、あいつの真似してやるんじゃなかった。ペッ!」
魔術師は長い舌を突き出して舐めた血を吐き出した。
刑吏たちがそんな魔術師の顔に見惚れていた。
すると、大きな足音が近づいてきた。。
「おい、てめぇらッ! ぼやぼやすんなッ!」
処刑人だ。
刑吏たちは慌てて、処刑された女の首を風呂敷に包み始めた。
魔術師は、処刑人の登場に溜め息を吐いた。
「はぁ。あなたが来る前に済ませようと思ったのに……」
「俺の楽しみを奪うんじゃねぇよ」
「死肉の胸や尻を触りながら解体するような変態趣味とは会いたくないの」
「ほう、その割には女の首を集める変態趣味とは心を許すのにな」
魔術師は処刑人に向けてあっかんベーと嫌がった。
「あいつはあいつ、あなたはあなた。変態趣味の相手なんて一人で充分よ」
「そうかい。ま、俺も人の女を取るような外道には走らんさ」
「どっちも外道だとは思うけどね」
「じゃあ、その外道に手を貸してるお前さんはなんだ?」
魔術師は大きな胸を揺らしながら、フンと身体を張った。
「わたしは、極めて天才美女な魔術師よ」
「自分で言うかね?」
「誰も言ってくれないもん」
そんな中、刑吏たちが首たちを風呂敷で包み終えた。
「終わりましたッ! 魔術師様ッ!」
「ありがとうございます、残りのお仕事、頑張ってくださいね」
魔術師はウィンクしながら刑吏たちに礼を述べた。
それに心動かされた刑吏たちは、
「あの、できればもう少しお手伝いいただきたいのですが……」
「こらぁッ! 俺の楽しみを奪ってんじゃねぇッ!」
それを止めたのは処刑人だった。
「はぁ、あなたの解体に付き合いたくない、って言ってるみたいだけど?」
「ふん、知るか。お前はとっとと持ってってあげな」
「あなたに言われるまでもないわよ。さよなら」
魔術師は大量の首が入った包みを持って、刑場を去っていった。
刑吏たちは揃って、顔を揃えて溜め息を吐いた。
「さあ、とっととその肉を持ってこいッ! 楽しい解体の始まりだッ!」
刑吏たちの憂鬱は続いた。
この後、身体の方は獣園の獣の餌として加工されるのだ。
一方で、首の方は――。
次期国王として才がある切れ目の王子は、今日の分の書類に目を通し終えた。
王子は仕事を終えると、陽が沈んだことに気づいた。
王子がそわそわしている。
尿意や便意のためではない。
しばらくして、ノックが聞こえ、待っていた声がドア越しに聞こえた。
「わたしよ、入るわよ」
「待ってたぞッ! 入れッ!」
王子から許可を取り、魔術師が部屋に入った。
大きな風呂敷を王子の机に置いた。
「はい。今日のプレゼントよ」
「ああ。楽しみにしていたぞッ!」
王子が何重もの風呂敷を解いてはゴロゴロと美女の首たちが露わになった。
どれも生前のような美しさを保ったままだ。
王子はその内の一つ、唇の厚い女の首を持った。
「いやぁ、どれも惨めなものだな」
王子は唇と歯をこじ開けては舌を摘まみだして舌を出させた。
舌を軽く握ると、唾液が出てくる。
それを見ていた魔術師は見慣れたものだが、
「女の首をそんなに集めて楽しいものかしら?」
王子に苦言を呈した。
「収集に理由はないさ」
魔術師は王子の言葉を聞きながら、部屋中を見渡した。
どこへ向いても、一個は女の首と目が合ってしまう。
壁には盾に女の首を飾っている。
どれも死後二週間以上は経っているのだが、腐っていたり損壊はしていない。
むしろ、生きているかのように美しい。
唇からペロッと舌が出ているのは王子の趣向だろう。
それらを見て、魔術師は実感する。
「わたしが王宮魔術師になってから、一年は経つのね……」
「そういえば、そうだな」
首が保管できるようにしたのは、王宮魔術師である彼女による魔法のおかげだ。
王宮魔術師になるための最終選考に勝ち残った彼女は、最終審査の自分だけの魔法の披露をした際に、二年もの費やしてできた『ものを腐らない魔法』を披露し、腐った果実を艶の出て美味しそうな状態へと変化させた。
これには多くの審査員の顔を示したが、王子だけは違った。
王子は彼女の手を握り、処刑場へと向かった。
魔術師は殺されるのか、と身構えていたが、王子が死にたての罪人の美女の首を掴み、
「さっきの魔法をこれにやってみせてくれ」
魔術師は状況が状況だけに断れずにやってみた。
すると、魔法は成功し、美女の首は腐らないようになった。
それから、王子によって王宮魔術師に任命され、美女の首集めが始まったのだ。
今日までで、数えきれないほどの罪人の美女の首を保管できるようにしたのか。
少なくとも、こういうことのために魔術師は研究していたわけではない。
そして、王子に喜々として首弄りをさせるためでもない。
「うぇ~」
魔術師は王子の行動に対して、気持ち悪いと舌を出した。
「おい、大丈夫か?」
「誰のせいだと思ってんの~?」
魔術師は心配する王子に対して軽蔑の舌を出した。
魔術師が王子に対してこういう態度を取るのは自然だった。
最初は無礼だと思って直したのだが、王子が「それがいい。これからもそう接してくれ」と言ったのだ。
それから、短い付き合いなものの太い絆で紡がれた感覚が互いに感じていた。
王子が持ってきた女の首の全部の舌を摘まみだすと、最初に処刑された女の首が目に留まった。
保管できるようになったとはいえ、瞼を目いっぱい開き、大きく口を開けて舌を垂らしている。
「なあ、この顔と同じ顔してくれるか?」
「気に入るとは思ったけど、わたしに強要してくる?」
「頼むよ。ここには滅多に人が来ないだろうし」
それは美女の首とはいえ、人の顔で埋もれている部屋など、変態か魔術師ぐらいしか来たくないだろう。
「え~。舌を出すだけじゃダメなの?」
魔術師も魔術師で、人前で舌を出すことに抵抗はない。
舌癖が強い。とは、王子が言うほどだ。
無意識に舌を出すことが多い。
それどころか、舌を出すことに関しては恥ずかしさはない。
「顔だけ。顔だけで頼むよ」
王子が懇願する。
魔術師は一度、その女の首を見る。
流石にこの顔はできない、と断ろうとした時、
「今日の夜、下になっていいから」
「えッ?」
「いつも上だと疲れる、と前から言ってただろ?」
魔術師の思考は一時止まった。
王子と魔術師は、女の首を手に入れた時の夜は性行為をするのだ。
王子が新鮮な女の首を見て興奮するのを魔術師で発散するのだ。
その最初でよくどっちが下になるのかで揉めているのだ。
大体はジャンケンが強い王子が下になるのだが、王子の提案に心を揺さぶられた。
その結果。
「べろ~ん」
魔術師は白目を剥き、大きく口を開けて舌を垂らした。
王子はすぐさま、その顔を、顎を掴んだ。
魔術師が女の首の死に顔を真似して数分が経って、目を戻した。
「これで、いいんでしょ?」
舌を出したまま王子に問いかけた。
「うん。問題ない」
魔術師が訝しげに王子に問いかけた。
「約束は守ってくれるわね?」
「大丈夫だ。今夜は俺が上になる」
王子は魔術師の顔を手にしながら約束した。
その夜。
「うひぃ~」
魔術師が白目を剥き、舌を垂らして、ベッドに涎の染みをつかせた。
王子は魔術師の顔を見て、「またかよ」と愚痴を漏らした。
「まだ、五分も経っていないんだけど、一年も経つから、少しは持ってくれよ……」
王子はそんな魔術師を見ながら、行為を続けた。
魔術師があられもない顔を晒しながら、気絶しているのは王子にとっては興奮をおこすものだった。
彼女の豊満な乳房からは乳液が漏れ出ている。
王子が魔術師の右乳を味わうと、
「ぐへへぇ~」
白目から瞳が戻り、乳首を弄る度に瞳がぐるぐる回っている。
逆に左乳を味わうと、
「レロレロレロレロ……」
彼女の舌が淫らに動き始めた。
彼女の乳液を味わった王子が一言。
「牛乳のような味だな」
そういいながら、右乳を叩くと、彼女の瞳がルーレットのようにぐるぐる回って、内側に向けて焦点が向けた。少しずれてしまったが。
「やはり、こいつの舌の方がいいな」
王子が彼女の顔に近づけると、彼女の舌が蛇のように動き始めた。
「本当に、昼と夜では違う顔を見せるんだな」
王子は彼女の顎を掴み、彼女の口の中を弄り始めた。
舌に邪魔されるが、それも一興と思った。
しばらくして、ずれた彼女の瞳を見て興奮して唇を奪った。
そして王子は彼女の中へ解き放った。
朝が近づき……。
王子と魔術師が裸のまま横に寝ていた。
魔術師は正気になり、王子は自分に背を向ける彼女を見ていた。
「また……なのね……」
「お前、催淫されてるんじゃないのか?」
「そんなことないもんッ! だって、あなたが……」
「いや、俺は特に普通にセックスしただけだぞ? お前が毎回早いんだよッ!」
「そんなこと言ったって、わたしあなたにしか抱かれてないのよッ!」
「こんなんじゃ、不安だッ!」
「なにが不安よッ!?」
魔術師と王子はいつの間にか上半身を起こして喧嘩し合っていた。
王子は魔術師の豊満な乳房を両方掴んだ。
その瞬間、彼女の両目が上に、口から舌を長く突き出した。
「うげッ!?」
「こういうところだぞ」
王子は彼女の首をトンとチョップして、彼女は意識を戻し、王子を見つめ、彼の手のひらに顎を載せて傾けて舌を垂らした。
「だったら、わたしを殺す? あなたにとってわたしの首は弱点になるわよ」
王子は彼女の顎を撫でた。
彼女もそれが心地いいと感じていた。
彼女は大きく口を開けて喉を晒してみせた。
「どう?」
「殺すものか。俺に付き合ってくれるなんてお前しかおらんだろうよ。それに――」
王子はしばらく黙っていた。
「なに?」
「こんな風に生きている首なんて、どこを探したって見つからんだろうさ」
魔術師は照れて、口を閉ざして舌を左右に揺らした。
だが、目を逸らせば、
「まぁ、女の首に見られながらセックスできる女なんてわたししかいないわよね……」
目を逸らせば、いつかの女の首と目が合ってしまう。
運がいいのか悪いのか、それは焦点が合わない、昨日の女の首だった。
「わたしも、いつか処刑されんのかな……」
魔術師がふと呟くと、王子は困った顔を見せた。
「それはさせない。護ってやるよ」
王子の目が真剣なのは彼女に伝わった。
「じゃ、どう証明してくれるのかしら?」
魔術師は長い舌で唇を塗り始めた。
王子はなにも言わずにそのまま彼女の唇を奪った。
魔術師はそれも望んでの舌と絡み合った。
長い時間をかけて王子の口の中へと舌を入れた。
しかし、彼の舌を押し出している時に噛まれ、彼から口を離し、長いキスは終わった。
魔術師は長い舌を突き出して噛まれた場所を視認した。
「ひどい……」
「一生弄ってやるよ。お前の舌」
「……馬鹿」
これは業国の王子と王宮魔術師の人生の一途。
やがて、王宮魔術師が妃として結ばれるのは先の話。
業国の王子の首集め @WaTtle
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