第5話 MOTHER

母といえば、わたしの母以外に思い浮かぶのは「MOTHER」。


小学生の時からはまっていたゲームだ。


当時の私は学校というものがとにかく嫌いだった。スクールカーストでいうなら、私は下位組の方。いじめられこそしなかったが、小学生でもマウンティングはあるもの。学校という場所、人、勉強、運動も、とにかく好きじゃなかった。興味がなかったに近いかもしれない。人生で一番自由で気楽だったと当時の同級生はいうが、私からすると人生を一番無駄に過ごした時間だった。


小学生ながら冷め切った子供だったし、他の同級生が一生懸命行う課題も、なんでこんなこと一生懸命やっているんだろうと思ってた。それを一生懸命やって、できるようになったことを報告(自慢)してくる。やれやれ、聞く側の身になってくれよっとうんざりしていた。


学校に行くのが毎日億劫で、登校しようと靴を履こうとすると吐き気がした。遅刻も忘れ物もたくさんした。なんとなく居場所のない学校に対して「爆発してなくなんないかな」と本気で思っていた。


そんなわたしでも一生懸命、没頭するものがあった。それはスーパーファミコン。


ゲームが好きになるきっかけであり、枯渇した学校生活から帰った後の唯一の癒しでありオアシス。


ファミコン・スーファミのゲーム機が好きなら大抵の人は知っている。

不朽の名作、「MOTHER2」。ネスという少年とその仲間たちが宇宙から来た侵略者を倒し世界を救う。RPGにはよくある話。単純だが、個性的なキャラクターとその名言に不思議な温かみが詰まっている。ストーリーも落ちも知っているが、今でも何度も何度も繰り返してやってしまう。


その主人公は決して話すことはない。自分自身が主人公だから。そのキャラクターの人生に思いをはせる。


「かっこいいと思うものは?」


と「MOTHER2」と始める際、設定する項目がある。


安室奈美恵が好きな家族の影響で「アムロ」と設定する。


すると自分の必殺技の名前が「PKアムロ」になる。PKとはPsycoKinesiss(サイコキネシス)の略らしい。


意味は解らなかったが、幼いながらにかっこいいと思い、

苦手な人に会うと心の中で「PKファイアー!」か「PKアムロ!」をよく唱えていた。


不思議とスカッとしてパワーが湧いてきたのだ。行きたくなかった学校も不登校にもならず、嫌々通えた。


小学校の中での私には、自分を守ってくれる人も、優しくしてくれる人もいなかった。


クラスの中心の子に嫌われないようにやり過ごす人。マウントをとって優位立ちたい人。そんな人たちばかりでつまらなかった。


孤独な方だったと思う。


「必死になって幸せを探すなんて幸せじゃないよね」


なんとなくこの言葉がすっと入ってきて、学校で頑張るのをやめることをやめた。嫌いな人にへつらうのも、無理して周りに合わせるのも。

登校するときの吐き気はなくなったかな。



ゲームにどっぷりはまった私は深夜までやっていた。

わたしの「母」にはよく怒られた。












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砂漠のオアシス 日永 ふらり @spaceinvader

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