第6話 B1
壁は案外簡単に開いた。一回小突いただけでゴゴゴなんて言うもんだから、拍子抜けしたのはここだけの話だ。
しかし当てもなくあてどなく進むには、ちょいとばかり広すぎやしないか。
というのも、かれこれ1時間はぐるぐるぐるぐるしているのに、なかなか出口に辿り着かない。唯一の救いは罠がないところだな。というかこの世界は死んだらどうなるんだ。そもそもこの世界に死はあるのか?ザオリクとか死者蘇生とか、そう言うものがあると安心するけど、けど…
松明が揺れる。揺れて、揺らぐ。
まあ逃げるが勝ちとも言うしな、そもそもこんな細い茎だか腕だかで殴ったとして、果たしてこれから出くわすであろう野郎に太刀打ち出来るのだろうか。いや、ない。
取りあえず当分か一生は逃げるというコマンドしか選択出来ないだろうな。
逃げるし恥だし役立たず。
さて随分と歩いた気もするが、一向に出口がない。私は一向に構わん!が流石に鬱。と言うわけで地面に根を張っている。
なんかこう、石の隙間に足が嵌まったと思ったら根付いていた。何を言ってるか分からねーと思うが、俺も何を言っているのか分からねー、これが植物の本能なのか。あとさっきから力が滾ってやばい。漲ってきた。すごいみなぎってきた。
食物だからなのかなんなのか、植物の時と比べて空気の違いが分かるんだよな。さっきから歩いてるから何だろうけど、体力が失くなるのと同時に体力が増えていくのが確かに感じる。
この感覚には覚えがある。夏に凄い走った後にポカリを飲んで、喉から胃に流れるような感覚に似ている気がする。あの夏だ。
まあこんなとこで爽快になってる暇なんてないんだけどさ。いや、ないんだけど。まあ元気も出たし歩くか。というかあれだな、これ地面に潜れるんじゃないか?そうだよ、毎回地理の授業の時に、直線なら最短で行けるのにって思ってたんだ。飛行機は何が良いって、何にも邪魔されずに最短距離かつ最速で目的地に行けるから便利なんだ。
とすると、壁を無視出来る可能性のある壁抜けがベストなんじゃないか…♦️
急がば回れだかなんだか知らないが、これ以上迷宮をぐるぐるするのも飽きたところだったんだ。このまま直進して地上にまで出てやる。
そう決意したはいいが、この進化の証である口が大きすぎるあまり地面潜れないことを、この時はまだ知るよしもなかったのだ。
転生して草 @yutaka4240baker
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