二つ目の土産話

@mizukane_soda

第1話

 金髪で、耳にも口にもピアスをあけていて、服装も露出が多く、顔はキリっと強気。そんな風貌の彼女を、僕は好きになった。

 大学で同じバンドサークルに入っている彼女は、その強烈なルックスと金髪をトレードマークにして異彩を放っていた。はじけるような歌声、波のように迫りくる圧倒的な声量。僕は彼女の歌声を聴いたとき、その魅力にとりつかれた。ステージに立ちマイクスタンドに手をかける彼女が、とても格好よかったのだ。

 同じようにバンドをやり、ドラムを任されている僕は、彼女の後ろで演奏がしたいと思った。その歌声を下から支えるというのは、どういう感じなのだろうと、考えるだけでわくわくした。だから、最初は本当にただの憧れで、話をしてみたいと思った僕は、そのライブの打ち上げですぐに近寄ってみた。


「ライブお疲れ様。すっげえかっこよかったよ」

「ありがとう」

 

 恥ずかしそうに肩を竦め、にこりと笑って答える。僕はその派手な見た目とは正反対の反応が気に入って、終始喋りかけていた。その地味で月並みな反応が、僕にはたまらなかったのだ。

 憧れが好きに変わるまで、そう時間はかからなかった。同じサークルなので、触れ合う機会も多い。彼女の学科、趣味、好きな音楽、好きな小説、癖、どんどん分かっていくうち、僕は惹かれていく。気づけば見た目など問題ではなかった。彼女のしぐさ一つ一つを目で追い、圧倒的な力を持つ歌声に聴き惚れた。三か月もそんな状態が続くと、もうじっとしてはいられなくなり、告白を考え始め、毎週行われていたサークルの集会後、喫茶店にその子を呼び出して気持ちを伝えてみた。夏を過ぎ、秋の色が顔を出し始めたころだった。

 伝えることに喜びを感じた僕はただそれだけで悦に浸っていたけれど、「ごめんなさい」と、彼女は両手を前にそろえて頭を下げた。その瞬間、ふっと心臓がポルターガイストみたいにふわっと浮かび、その後重力に従ってドスンと心臓が落ちるような感覚になって、体が震え、視線を散らす。断られることを考えなかったわけではないが、いざ断れると、ショックが大きかった。


 僕はフラれたのだ。


 だから、あんな風に彼女を好きになっていき、告白までした僕に、妹のことをどうこう言う資格はなかったのだと思う。


 というのも、今年の夏に実家へ帰ったとき、僕は妹と生まれて始めて大喧嘩をした。三つ歳の離れた可愛い妹は僕の自慢であり、なんでも話せる仲のよい近しい存在だった。妹も僕を慕ってくれて、僕が大学生になって実家を離れ東京で一人暮らしを始めても、度々電話をもらっていた。近況報告や、友達との話。彼氏の話など、話題はなかなか尽きない。いつも近くにいた妹と離れたことで、僕たちはさらに仲良くなっていた気がした。

 そんな妹と、大喧嘩したのだ。僕の中ではとてつもなく大きな事件であり、心苦しいことだった。

 別に喧嘩するつもりなどなかったのに、妹の過剰な反応に僕も意地になってしまって、まだ、喧嘩後のギクシャクした関係が続いている。

 その喧嘩の原因というのが、妹の彼氏だった。実家へ帰ったとき、妹に彼氏を紹介されたのだ。玄関口で一目見たとき、僕はギョっとした。口にも耳にもピアスをしていて、髪には赤が入っていて、なにやら黒いバイオレンスなTシャツを着ていた。妹は嬉しそうに、自慢気に、マーくんなどと紹介し始め、僕に彼の良いところを語り出した。田宮正弘です。と名乗り、妹さんと、お付き合いさせてもらっています。と軽く頭を下げた彼の第一印象は最悪だった。妹は僕にどうしてもその彼氏を紹介したかったらしく、アルバイト前の彼を無理やり連れ出してきたようだ。だから長居はせず、軽く話して彼はアルバイトへと行った。

 僕は母も父も仕事へ行っていてよかったと思いながら部屋へ戻ろうとすると、彼を送ってきた妹がもの凄く不満そうな顔をしながら


「ちょっとお兄ちゃん!」


 と階段を登る僕を呼び止めた。


「なに?」


 と返すが先か、後か


「何なのよあの態度! 彼に失礼じゃない!」


 と高い声で騒ぎ始める。


「だって、あいつ本当に大丈夫なのか? なんか危ないやつじゃないのか?」


 頭の上から、心配のつもりで言った僕の心ない一言が、妹の怒りに火をつけてしまった。


「彼を見た目で判断しないでよ! だいたいお兄ちゃんは失礼なのよ! 彼を見たときのあの露骨な顔はなによ!」

「……だ、だってそうだろ! どう見たってチャラチャラしてそうなやつじゃないか!」

「だから! そんなの見ただけじゃわかんないでしょ!」

「わかるだろ! それにいくつだよあいつ。お前より年上か?」

「私と同い年!」


 あの彼氏の前ではあんなににこにこしているのに、僕にはこの態度か、とイライラして、ついきつい言葉で返してしまったのだ。その後は似たようなことの繰り返し、どっちも引き下がらず、同じ話を堂々巡り。最後には妹が「もう知らない!」と部屋へ引きこもってしまった。

 それから僕が東京へ戻るまでの間、ずっと妹は僕を無視し続けた。食事の間もリビングにいるときも、ひたすら無視。母さんも父さんも事情を聞いてきたのだが、なんだか話すのも嫌で、「大丈夫すぐに仲直りするから」などと妹の前で言ってしまった。それがまたいけなかったようで、「お兄ちゃんのバカ!」の一言を僕に浴びせ部屋へ戻ってしまった。

 僕が戻る日になっても妹はまだ怒っていて、とうとうそのまま戻ることになってしまった。

 僕があの派手な女の子を好きになったのは、それからのことだった。

 正直、妹には本当に申し訳ないことをしたと思っている。確かにパッと見で判断するようなことじゃないし、見下した言い方をした気がする。思えばあの男の子はきちんと名前を自分で言って、頭を下げていた。お付き合いさせてもらっていますと、丁寧に喋っていた。本当は、礼儀正しい子なのだろう。

 それに十七歳という年齢を考えれば、自分の彼女の兄貴を紹介されるなど迷惑極まりないはずだ。それをわざわざアルバイト前に家まで来て、玄関口で僕と少しだけ話をして……十七の頃の僕だったら確実に嫌がっていた。しかしあの正弘君は妹のためだと思い、来てくれたのだ。

 見た目で判断してはいけない。中身は良い人。僕はあの女の子でそれがわかった。

 だからこそ僕は妹に謝りの電話を入れたかったのだが、体裁が悪く、兄としての無駄なプライドが邪魔をして電話を掛けられずいる。彼女にフラれてショックを受けているというのもあって、妹と話をしたいというのもあった。

 実家へ帰る前は定期的に鳴り響いていた僕の携帯が、東京へ戻ってから鳴らなくなっている。謝りたい。でも、電話し辛い。そんなじれったい状況がしばらく続く。授業が終わり、家へ戻って夕飯を食べた後、ベッドに腰掛けながら携帯が鳴るのをなんとなく待つ日々を過ごす。

 電話がかかってきたのは、僕がフラれてから一週間後のことだった。ベッドに腰掛けながら、隣に置いてあるバイブで揺れる携帯に期待を膨らませて確認をすると、非通知の表示がされている。なんだろう? と一瞬ドキっとしてしまう自分がいる。妹じゃないのか、と落胆する自分もいる。結局相手は誰だろうという好奇心が勝り、僕は通話ボタンを押して耳にあてた。


「はいもしもし」


 ――返答はない。


「もしもし」


 もう一度言ったとき、ブチり、と電話は切れる。「ツーツーツー」という音だけが返答してくれた。変なの。電話をベッドに置くと、期待させんなよ! という不満がこの無言電話へと向かった。妹かと思ったのに、なんなんだよ。

 僕はその後、お気に入りの深夜番組を見てから、眠りについた。非通知電話のことなど、とうに忘れていた。

 しかし、その日を境に非通知電話は定期的になり始める。決まって出ると無言で、しばらくすると切られてしまう。何を言っても返してくれず、ただただ、無言。

 友達に相談しても「ただの悪戯」だよとしか言われない。僕もまあ悪戯なのかなとは思っていた。けれど、こうも続くと気味が悪い。

 かかってくるのは何故か決まって僕が家にいるとき。まるで僕を監視しているかのように、狙い澄ました電話。しばらくそんなことが続くと、僕はすっかり怖くなってしまった。電話番号を変えようにも、相手が何なのかあまりに気になって変えられない。

 そんな中、僕がサークルの仲間たちとのみに行った帰り、いつも部屋にいるときしかかかってこないその電話が、夜道を歩いている途中でかかってきた。そのおかげか一瞬で酔いが覚め、なんだか背中が寒くなった。もう冬に差し掛かるからって、これはそのせいじゃない。ぞわぞわっとして、後ろを振り向くことも怖くてできない。少しだけ、ほんの少しだけ街灯の明かりが照らす方へ首を向けた瞬間、何か人のような影がゆらっと見えた気がした。さらにぞわぞわとする背中。震える携帯。僕はゆっくりと携帯を取り出し、耳にあて、ボタンを押す。


「……もしもし」


 無言なのは、わかっていた。それでも僕は、向こうからブチリと切れるまでは耳から携帯を離すことができなかった。耳に張り付いてしまったかのように、手が動かない。その無言の音に僕は集中する。


「もしもし」


 もう一度言った瞬間、はじめて相手が反応した。


「ひひ……」


 と絞りだすような笑い声をだし、ブチりと切れる。

 点滅する街灯。ゆらりと蠢く影。無言電話と思いきや、気味の悪い笑い声。そして夜道。僕は速足になる。一刻も早くアパートへ帰りたい。嫌だ。嫌だ。なんだか襲われるような感覚に陥る。なんだあの笑い声。なんなんだ一体。僕を見ているのか? どこから? なんで? どうして僕なんだ。

 あまりの恐怖に僕はもう何がなんだかわからなくなっていた。走って帰り、階段を駆け上がり、鍵を開け、早々にドアをバタんと後ろ手で閉めた。息が荒い。心臓がバクバクいっている。なんなんだ一体。

 部屋へ上り、やっと少し落ち着いたかな、というところで鳴り響くインターフォン。ピンポーン。と無機質な音が部屋へ鳴り響く。意識の全てがそこに集中する。心臓が何かで思い切りたたかれたかのようにドクんと驚き、僕はドアの方を向いた。誰だよ……こんな夜中に。さっき街灯の灯りの中に見た影を思い出す。僕は一気に竦みあがる。それでも、インターフォンを押したのが誰なのかを確認しないと気が済まない。僕はおそるおそる、擦るようにして一歩一歩ドアへと近づいていく。サンダルを履き、ゆっくりとドアを開ける。キィ、という音ともに人影が現れる。


「こんばんは」


 僕は一気に息を吐いた。

 あの、派手な女の子だった。


「君かあ……どうしたの? こんな時間に」


 一緒にのんでいて、飲み屋の前で解散したから、こんなところにいるはずはないんだけれど。


「あの、ちょっと話したいことがあって……少しだから、いい?」

「うん。大丈夫」

「私、あなたに告白されて断っちゃったけど、やっぱり、その告白の返事、もう一度私に預けてもらえないかな……」

「どういうこと?」

「あなたと付き合うこと、ちゃんと、考えてみたいと思うの」


 何を言っているのか一瞬わからなかったけど、恥ずかしそうにしている様子を見て、僕はだんだんと嬉しさを感じ始めた。先ほどの恐怖など、なかったかのように。


「……じゃあ、まだチャンスがあるんだね」

「焦らしちゃって、ごめんなさい。でも、ちゃんと考えたいから」

「ありがとう」


 真面目も真面目。真面目すぎる。僕はただそう言って、頷くことしかできなかった。

 ああ、なんて良い子なんだ。


「あとね、さっき、なんで突然走り始めたの? 何かあったの?」

「え、後ろに居たのって君なの?」

「う、うん……。この話をしたくて、お店出たところからつけていたんだけど、なかなか声をかける勇気が出なくて、ここまで来ちゃった」

「そっか」


 ……ああ、なんだ。さっき、僕が感じていたぞわぞわしたものと、なんとなく見た気がした影は、この子のものだったのか……。それがわかってしまえば、あの無言電話も、さっき感じていた恐怖程ではない気がしてくる。あの笑い声だけが僕の頭にひっかかったが、この状況のおかげで、大した問題にはならなかった。


「こっちは、別に大したことじゃないんだ。最近ちょっと無言電話に悩まされていてね」

「大丈夫? 電話番号変えた方がいいんじゃない?」

「そうだよね。やっぱ変えるべきだよね」


 うん。と彼女は頷き


「じゃあ、帰るね。また明日」


 と、かわいく手を振って行ってしまう。


「あ、送るよ」


 僕のそんな声にも足を止めず


「いいよ、悪いから。じゃあね」


 にこりと笑って彼女は帰って行った。人は見た目で判断しては行けない。その良い見本が彼女だ。

 僕は気分よく戸を閉め、部屋へと戻った。その日、携帯電話が再び鳴ることはなく、シャワーを浴びて気持ち良くベッドへと入った。

 その日から、無言電話に対する恐怖が今までよりは薄れた。彼女のおかげだ。あのときの恐怖の正体がわかって、無言電話のことも、どうせ大したことではないのだろうと思い始めた。気を大きく持ち、僕は再びその電話が来るのを待った。

 授業が終わり、サークルを終え、部屋へと戻る。先週も、先々週も、この日に電話は来ていた。また来るはずだ。僕はさっとシャワーを浴び、夕飯を作り、それを食べながら電話を待ち続ける。

 テレビの音だけがこのワンルームの僕の部屋を闊歩する。僕はひたすら箸を動かす。食べ終われば、皿を洗い、片づけ、ベッドへ腰かける。いつもと変わらない夜。

 気を張っていても疲れてしまうから、なるべく気にせず、テレビを眺めながら待っていたつもりだったけれど、やっぱりどうしても気になってしまうらしく、僕の手には常に携帯が握られていた。早く来い早く来い早く来い。次電話が来たら何かできるというわけでもないけど、今までずっと「もしもし」の一言しか言わなかったから、何か別のことを言いたくて仕方がない。文句の一つでも言ってやりたい。しかし、やっぱりそんなにずっとは待っていられない。携帯を握りながらテレビをただ見ているだけ。内容なんか入って来ない。そんな状況が続くと、のどが渇いてきてしまった。冷蔵庫の中の麦茶を取ろうと思い立ち上ろうとした時――僕の携帯は鳴り始めた。一瞬で麦茶のことなど忘れ、携帯の表示を見る。「非通知」の文字を見て僕は一度だけ深呼吸をして、その電話をとった。


「もしもし」


 ――無言。いつものことだ。だけど、今日はこのままで終わらせる気はなかった。


「もしもし、あの、迷惑だから、やめてもらえませんか? いい加減にしてくださいよ」


 ――それでも、無言。でも、僕が初めて反応を見せたからか、いつものようにそのままブチりと切るようなことはなかった。


「あなたの電話を妹からの電話と勘違いするんですよ。期待させないでくださいよ。本当やめてください」


 もう一言加えたとき


「え?」


 と相手が反応した。

 その声は、女性だった。一気に恐怖やもやもやしていたものが、イライラに変わっていく。相手がただの人間だということを確信した。恥ずかしながら、幽霊だと思っていたところもあったから。


「期待、してたの? お兄ちゃん」

「は?」


 思わず、声が漏れてしまった。お兄ちゃん? 僕をお兄ちゃんと呼ぶ? なんだ、なんだこれ。


「だから、期待してたの? お兄ちゃん」

「みさき? みさきなのか?」

「うん、そう」

「え、ちょっと待てよ。じゃあ、ここ最近ずっと非通知で電話していたのって、お前か?」

「そう」

「なんで」


 妹――みさき――は、そこで一旦言葉を切った。


「お兄ちゃんと、仲直り、したくて。でも、何か電話し辛いし、言い辛いし。でも、非通知なら、なんとか電話できたの。それでも、いざお兄ちゃんが電話に出ると、言い辛くて」

「じゃあ、狙ったかのように僕が部屋にいるときに電話がかかって来たのってもしかして」

「うん。お兄ちゃんが好きな深夜番組あるでしょ。あの後とか前なら、もう部屋にいるかなあって」


 やっぱりか……。飲み会のときは、丁度僕の好きな番組がやっている時間だ。 


「びっくりするだろ。幽霊かと思ったんだぞ」

「ふふ、ごめんね」


 ああ、そっか。ここ最近無言電話のことばかりで、少し頭の片隅に追いやってしまっていた。僕は妹に謝らなくちゃいけなかったんだ。言いたいことは、いっぱいある。


「ごめん」


 僕はすぐにそう切り出した


「正弘君、だっけ? みさきの言う通り、見た目で判断しちゃいけないよな。実際、よく考えれば彼結構礼儀正しかったし、今思うと、彼にもみさきにも、悪いことしたって思ってる。ごめん」


 切らずに一気に言い切った。言うことを考えていたわけでもなかったのに、スラスラと言葉が出てくる。


「私も、お兄ちゃんなら、わかってくれると思ってたから、あんなこと言われてちょっとショックで、あんなにいろいろ言っちゃって……」


 妹の声が掠れて、僕の耳にくすぐったく届く。やっぱり、愛らしく、かわいい、僕の大事な妹だ。


「今回のことは、僕が完全に悪かったんだよ。本当にごめん」

「でも、なんでそんな急に謝ろうって思ったの?」

「ああ、あの、実はね、僕も、お前の彼氏みたいな派手な人に告白したんだよ」


 みさきは驚きの声をあげ、凄いじゃんなにそれどこの人なの今度写真見せてよどんな人なの? と一気にまくし立ててくる。興味を持ってくれるのが嬉しい。みさきも僕に正弘君を紹介したとき、僕が興味をもってくれると期待していたのかな。


「一度フラれてるんだけどね、また考え直してくれるんだって」

「なにそれえ! 今度ゆっくり話聞かせてよ!」


 いつもの落ち着くみさきの声だ。今度実家へ帰るときは、話の土産と共に東京土産を持っていこう。正弘君の分も、一緒だ。


「いいよ。今度はちゃんと話そう」

「うん!」


 仲直り、なんて言わない。僕らはそれでいいんだ。

 彼女の返事がだめだったら、みさきに慰めてもらおう。良い返事をもらえたら、いっぱい自慢してやろう。

 どちらにしても、次帰る時は土産話を持って帰ることになりそうだ。

 この、かわいい幽霊に。


「ねえ、あと、なんでこの前笑ったの? ずっと無言電話だったのに、いきなり変な笑い声出すから、びっくりしたんだけど」

「え? わたし、笑ったことなんてないよ? ずっと言い出しづらくてお兄ちゃんが電話に出ても無言だったんだから」


 また背中がヒヤっとした。みさきに話す土産話が、もう一つだけ、増えた。

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