4話 帰り道
ホームルームの終了と同時に下校時刻のチャイムがなり、各々好きなように解散していった。
部活に行く者、遊びに行く者、様々な用がある者達がいる中、蓮はというと暁斗達と教室で別れたあと、靴箱へ行き校舎前へ向かっていた。
そこにはもうすでにホームルームが終わり、蓮を待っている小雪の姿があった。
待たせているかもしれないので、蓮は急いで小雪の方へと向かっていく。
「小雪。待った? 」
「いえ、今来たばかりです」
ある程度近づいて名前を呼ぶと、蓮の存在を認識した小雪がこちらを振り向いて、微かに微笑んだ。
あれ? 意外と普通なのか?
朝のとは違って落ち着いた様子の小雪が見受けられる。もしかしたら、気を張りすぎたのかもしれない。
至っておかしな所もないし、問題ないのだろう。
「じゃ、帰ろっか」
「はい」
蓮がそう言うと、いつものように二人で歩き始めた。道の途中、小雪がちらちらと此方を見てくる様子がとても気になる。
やっぱり何かしていただろうか。
疑問が蓮の頭をよぎり続ける。今までは、会話をしている時がほとんどなのでそこまで視線なんか気にしてはいなかったが、今日は会話が少なく、小雪からの視線が必要以上に気になってしまう。
「あの……小雪さん。どうかしました? 」
「?? 何のことです? 」
立ち止まって蓮が、小雪に聞くと小雪は首を傾けた。
「あーなんかいつもより視線を感じるなと」
「え!?私そんなに見てました? 」
「まぁ……いつもよりかは」
どうやら、無自覚だったらしい。
いや、もしかしたら少しは自覚があったのかもしれないが、それでも気づいたのは蓮に指摘されてからだった。
「す、すみません……そんなつもりじゃなかったんですが」
「いや、朝の件といいこっちもごめんな」
「いえ、それに関してはもう怒ってないですよ。さすがにそこまで器はちっちゃくないですよ」
恥ずかしかったのか色の白い頬を少し赤らめて、蓮に弁明する。
そんな気まづさからか、蓮の方も朝からのことを謝罪した。
幸いな事に小雪は怒っていないようだった。
むしろなぜまだ怒っていると思ったのか疑問に思うくらいだ。
「それに、なんで謝るんですか。朝許したじゃないですか」
「そうなんだけど……朝走って校舎まで行くし、さっきからなんか気まづいというか避けられてるというか」
不安そうな声で蓮が言ったのを、小雪は瞳を一瞬揺らがせて、聞いていた。
今日の朝の様子をもしかしたら、一日中考えていたのだろうか。
小雪の頭の中にはそんな考えが浮かんでいた。
自分の事をこんなふうに思ってくれている人がいると思うと、嬉しくなった。
「別に避けてたわけじゃないですよ。ただ……いえ、この話はまた今度にします」
「なんじゃそりゃ。」
何かを話そうとして、途中でやめた小雪に対して蓮がツッコむ。
でも、まぁいいか。
今まで通りにすることができるなら、蓮はそれが一番だと考えた。
「帰りましょうか」
「そうだな」
帰り始めとは逆で次は、小雪がそう言ってまた二人で歩き始めた。
小雪を家まで送り届けてからその後、蓮はまた通った道を戻って自分のマンションまで歩いていった。
恋は淡雪の降る日から たこすけ @kotapi
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