第61話 瑠璃光と草原の王

パウダは、草原の王、シンの正面に膝魔付くと重々しく、口を開いた。話すのは、瑠璃光の事だった。

「正統な後継者とは、聞きますが、ただ・・・」

言っていいものかと顔色を伺う。

「母親が、妖、もしくは龍神との噂があるとの事か?」

シン王がこれから言おうとしていた事を知っていた事に驚いた。兵士が、戦意を喪失しないように、伏せてはいたのだが。

「魔道士というのは、本当か?」

「はい」

シン王の反応は、さほどだった。

「お前達、シャーマンとは、どう違うのかな」

「影武者がおります。式神と呼んでいるそうですが、瑠璃光が召喚し、鳳凰となって、戦い、身代わりにもなるそうです」

パウダ自身、興味深げに話している。

「ますます、珍しい。幅広い人材が眠っている様だな」

「シン王様」

全く動じない。

「確かに、私は、術は使えない。が、試したい暗器は、幾つか、ある」

「漢薬書にあった、暗器を作り上げたのですか?」

冥国の王室から消えた漢薬書は、山を越え、草原の国、アルタイ国の渡っていたのだ。

「元々は、冥国の王室の物だ。中身が何かは、知っているだろう。どう応戦するかで、対応策がわかるというもの」

「それと、少し、厄介な事が・・・」

「まだ、あるのか?」

シン王は、そばで、話が終わるのを待ていた弟のロッシに下がるように手で合図する。

「あまり、あいつの前で、戦さの話は、したくない。」

ロッシが外に出ていくのを確認すると、パウダは、口を開く。

「陽の元の国から来た、海賊達が、手をつけれれず、それらを率いるのが、珍しく妖の姫らしく・・」

「陽の元の国の妖の姫?」

「人ならず、者らしく」

「ふむ」

シン王は、顎を少し撫でた。腰に刺した円刀で、床を叩くと、扉の向こうから、体の大きな色の黒い大男が入ってきた。目つきは、鋭く、全身にピアスや鎖を巻きつけている。

「おや・・・この方は?」

どう見ても、草原の民ではない。

「冥国の魔道士とやらだ」

シン王に声を掛けられ、大男は、恭しく頭を下げた。

「唐華と申します」

「これは?」

「漢薬書を届けた道師ではないか」

冥国の王室で、紛失していた漢薬書は、道師の手により、国外に流出していたのだ。

「これで、瑠璃光とやらに対面できそうだ」

シン王は、瑠璃光と対決する事を心待ちにしている様だった。

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