第62話 出陣
瑠璃光は、聚周を従え、皇宮を後にした。目指すは、アルタイ国の本陣だったが、真正面から行けば、道中の地形から行って、挟みうちに合いかねないので、紗姫達の軍と二つに分かれた。慣れない異国の地での、戦いは、さぞ、苦戦するだろうと誰もが、陽の元の国を案じたが、人とは異なる軍勢の為、快進撃を続けていた。瑠璃光と聚周も、地形を利用し、アルタイ国の後ろから攻め入る予定だった。士気は、高く、瑠璃光が先頭にいる事で、安心していた。
「一つだけ、不安があるとしたら」
紫鳳は、聚周に言った。
「この戦いが終わったら、また、お前達が、心代わりするって事だな」
紫鳳は、冷ややかに言う。
「それは、どうかな?そもそも私の位置が、守られているなら、何もする事はなかった。私の位置と変わらないか?」
先頭に立つ瑠璃光をよそに、左右で、聚周と紫鳳とが、揉めている。最初は、黙って馬の足を進めていた、瑠璃光が、馬足を止めた。
「いい加減にしないか?子供の喧嘩か?」
瑠璃光は、ため息をついた。
「喧嘩する相手が、違うし。落ち着いたら、我らは、また、旅に出る。風蘭には、そのまま、玉座を守ってもらうつもりだ」
「成徳は、どうするつもりですか?あいつは、自分がなりたいんですよ」
「なればいい」
瑠璃光は、言う。
「周りの国が、こうして狙っている。守り切れる王ならば、その玉座についても、構わないと思うが」
「だめでしょう」
聚周は、否定する。
「周りは、認めません。可能であれば、あなたを傀儡にするのが、奴の考えですから」
「私?が、傀儡か・・・」
瑠璃光は、笑った。
「私を縛り付けておくなんて、できるものか。自由でいたい。紫鳳の姿こそ、私の願いだった」
「私?」
紫鳳は、突然の告白に、キョトンとした。
「自由に空を飛べる翼があるという、それだけで、羨ましい。」
「召喚してくれないと飛べませんけど」
「羽があっても、飛べないんじゃ、鶏と同じだ」
聚周が、バカにして笑う。
「何を!」
紫鳳が顔を真っ赤にして、起こり始める。
「ええい!止め!」
瑠璃光は、香を一掴み取り出すと、掌に載せた。
「アルタイ国にも、シャーマンがいる。大きな獣人もいると聞く、紫鳳、先回りして、様子を見てくるように」
香は、瑠璃光の口元から立ち上り消えていった。紫鳳の背中に広がった翼は、風を切り、宙に舞い上がる。
「変な事はするなよ!」
聚周に捨て台詞を吐くと、東の空に向けて、去っていった。
「そう言うなら、期待に沿わなきゃな」
聚周は、そう言いながら、紫鳳の背中を見送った。
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