第40話 作り上げられた系譜
成徳は、思う。自分の母親が、奴婢でなかったら、後宮の多くいた一人でなかったら。謀反の罠に罹らなかったら、皇帝の座につけたのは、自分だったかもしれないと。瑠璃光は、皇子の座にいた。幼い日、母親が妖であると吹聴され、親子共々、冷宮の身となった。皇帝の母親が、瑠璃光の母親を妖として、暴いてしまい、瑠璃光の母親は、姿を消した。病弱だった皇帝は、悲しみのあまり、逝去してしまった。後々の皇帝の座を巡って、争いは続き皇宮に血の雨が降った。互いが互いを傷つけ合い、後宮の子達も、傷つき、多くが死去した。それでも、成徳が座に着く事はできなかった。隣国に、人質として、生活していた末の皇子を呼び戻したが、不運にも、道中、麻疹で亡くなってしまった。命を受け、迎えにでた成徳は、面差しのよく似た子を探したが、その子は、女子だった。偽の宦官として、側近に着くことで、成徳は、政を裏で操ろうとしたが、またしても、瑠璃光が、成徳の前に立ちはだかった。誰もがそうであるように、風蘭も瑠璃光に惹かれ始めていた。
「このままでは。。。まずい」
おりしも、龍伝河の生贄の話があり、風蘭が標的となり、代役を立てて、難を乗り越える事ができたが、今度は、宿敵となる瑠璃光が、大陸に戻ってきた。
「今度こそ。。」
瑠璃光を葬り去りたい。成徳は、邪に身を染めていた。相手が、龍神ならば、自分は、蛟となろう。姿を変えてでも、皇帝の座は、渡せない。妖の子の瑠璃光が、座するのなら、自分でも可能な筈だ。母親は、違えど、半分は、同じ血が流れているのだから。そこに、現れたのは、聚周だった。いつも、瑠璃光を遠くから、熱い眼差しで、見つめているのを知っていた。瑠璃光に、師匠の妻殺しの濡れ衣を着せて、戻れない様にし、聚周に追わせたのは、成徳。腹違いの兄だった。
「何を手にしたら、協力してくれる?」
成徳は、答えはわかっていたが、聚周に尋ねた。
「瑠璃光が、薫衣様を殺めた訳ではないですね」
そんな事は、聞くまででもなかった。
「誰も、信じてなかったが、妖の子というだけで、人の恐怖を煽った。その結果、皆、信じた」
成徳は言った。
「正体不明の妖の血を引くというだけでお、人は、恐る。生贄を求める龍伝河の主が、叔父であれば、なおさら」
「彼は、皇帝の座を望んでないでしょう。」
聚周は、言った。
「彼が、望んでいなくても、彼を望んでいる者はたくさんいますけどね」
「その彼を渡そう。漢薬の処方箋と一緒にね」
「その見返りに、あなたは?」
「風蘭には、一生、傀儡として生きてもらおう」
「できますか?」
「生きる希望を無くさせればいい。あとは、長年、求めていた漢薬次第」
「文字通りの傀儡にするんですね」
「お互い、手に入れたいものがあるからな」
成徳と聚周の密約は、成立した。
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