第37話 皇子の血脈

瑠璃光の動きは、素早い。聚周は、瑠璃光の腕の動きを制しようとしたが、案の定、紫鳳と入れ替わった。召喚され、炎の翼を翻す、姿に聚周は、一瞬怯んだが、負けずに、鴉を召喚し、応戦した。

「おぉ!」

同じ炎の術士、青嵐は、初めて見る紫鳳の姿に心躍った。

「まだまだ、俺は、発展途中だな」

矢の雨を降らせる兵士達に、炎術で、応戦しようとするのを、瑠璃光は止めた。

「兵士は、巻き込むな!」

「またかい!」

青嵐の掌で、燃え上がった炎が、小さくなった。

「そんな事言っていると」

辺りを見回すと、龍伝河の主達が、冷ややかな目で、見ているのがわかった。あくまでも、人だけの戦いの様だった。

「2人だけを抑える」

瑠璃光は、紫鳳に聚周を任せ、印を結び、呪符を飛ばす。四方に散った呪符は、中で、燃え尽き、同時に銀龍が姿を現した。

「龍とな」

梨王は、小さく笑った。

「少しは、我らの血が流れております故」

白蓮が、低い声で呟いた。

「それ故、人の世界には、過ごすことはできない。いくら、皇子の血を引いても」

銀龍は、瑠璃光を頭にのせ、数えきれない鱗を、宙に散らしていった。上に下に、体を拗らせ、成徳を追い詰めながら、兵士達を、夢の世界に誘う。

「ここに、人を巻き込むな」

「人でもない者が、気を使うな」

成徳は、笑った。

「力をつける前に、消してやろうと思っていたが。。」

成徳の持つ剣が、白く光っていた。

「瑠璃光。大陸に戻らなければ、そっとしておいたのに」

白い剣は、弓のように曲がり、予測のつかない動きをしていた。

「あれは。。」

「龍神の持つ物ではない。。。邪神の。。」

「水蛇の剣か!」

縦に横に曲がりながら、瑠璃光を追う。その剣は、1本だけではなく、2本、3本の別れ、触れる物を石へと変えていった。

「成徳。お前も、ただの宦官ではないな」

「だから、お前の血の匂いに気付いたのだ」

白い剣を操る成徳も、もはや、人の姿をしていなかった。少しずつ、体が変化していく。剣の力が大きい為、人の姿をとどめておく事ができない。

「また、蛇かよ」

紫鳳が、うんざりな顔をした。

「とことん、蛇に縁があるな!」

「だから、蛇姫を連れてこようとしたのか?」

「だとしたら、風蘭と面倒な事になるだろう」

風蘭の名前に一瞬、瑠璃光が怯んだ。銀龍が、向きを変え、宙に体を投げ出す形になってしまった。


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