第27話 死の舞を踊る娘達
瑠璃光の脚は、次第に速くなって行ったが、歩き方は、不思議な形を踏んでいた。
「兄さん、師匠は、もしかして、韻を踏んでいるんですか?」
兄さん、師匠との単語が出て、紫鳳は、面食らったが、しばらく、触れないで、おくことにした。
「そうだな。俺達の気づかない間に、どこかに迷い込んだのかもしれないな」
と言うより、何者か、得体のしれない者達がずっと、後をつけている気配だけは、紫鳳も感じていた。瑠璃光は、軽い足取りで、魔を巻く韻を踏んでいる。
「嫌な気配しかしない」
青嵐は、先程、目にした景色が余程、衝撃だったのか、気分が悪くなった様子だった。
「俺。。休みたい」
青嵐は、川縁にある大樹の根元に腰を下ろそうとするが、大樹の影から、歌声が聞こえてくる事に気が付き、そちらを覗き込んだ。
「あぁ!」
木に寄りかかり、覗き込んでいたが、やはり、興味が湧き、飛び出していった。
「青嵐。おい」
紫鳳は、止めようとするが、構わず飛び出してしまい、瑠璃光の顔を振り返った。
「何かを感知したのか?ただのばかなのか」
瑠璃光も、青嵐が飛び出していった方向を、覗き込む。そこには、太鼓や様々な楽器を手にし、踊る衣装も鮮やかな若い娘の一団が見えるではないか?
「ふむ」
特に女性に興味のない2人は、顔を見合わせ、青嵐が飛び込んでいった一団の様子をしばらく、ここから、みている事にした。
「気のせいか、やけに楽しそうだな」
瑠璃光は、呆れながら、一緒に踊り出した青嵐の姿に、やや呆れながら覗き込んだ。一緒に踊る娘達は、特に際立って、目立つ程、美しい訳ではないが、素朴な村娘達に見えていた。しばらくぶりに、普通の娘達と、会話を交わす事ができた青嵐は、太鼓の音に合わせながら、飛び跳ね、軽く腕を回し、笑いながら、辺りをくるくる回っていた。
「お兄さん、どこからきたの?」
村娘が、青嵐に合わせながら、踊り、青嵐の背後に回っていた。
「うん。向こうから」
青嵐は、あっちと、指で川向こうを、振り向く。
「お姉さん達は、何か、祭りでもあったの?」
無邪気に聞くが、村娘達は、何も、答えない。
「無くなってね」
1人がポツンと言う。
「何が?」
「。。。人がね」
青嵐の跳ねていた足が止まった。
「人が亡くなったの?」
変わらず、娘達は、踊りながら、話し出すが、その表情は、笑っていたが、目は、悲しさを物語っていた。
「兄さんも、父さんも亡くなった。村には、誰も、いない。私達以外
」
側で、踊っていた村娘が、青嵐の耳元で、囁く。
「一緒に、踊りましょう。供養しないといけない」
青嵐は、呪文をかけられたように、また、踊り始める。
「いかん!泣き娘か」
瑠璃光が、懐から、香を出そうとするのを紫鳳が慌てて、止めた。
「主に気づかれる。青嵐なら、大丈夫。」
紫鳳は、もう少し、青嵐の様子をみておこうと、瑠璃光に合図した。
「それも、そうだな」
術にかかった青嵐が、どう対処するのか、しばらく見守る事にした。
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