第7話 暁に染まる三華の塔
瑠璃香は、悩んでいた。どうにも、こうにも、紫鳳が、様にならない。あの時、神社で拾った赤子は、瑠璃香の式神として、生を与えられたが、力が何も、ない。とりあえず、間に合わせの様な形で、鬼神達の能力を少しずつ、かき集めたのだが、それが、うまくいかなかった。中和されない。統合されない。どの言葉も、当てはまる。能力がまとまらず、不安定だった。瑠璃光の術で、成長は、早く、少年の姿になっていたのだが、人間としても、不完全だった。虎の尾を持ち、背中には、一枚の翼が生えている。その姿さえ、不安定で、定まってはいなかった。
「んんんんんん」
瑠璃光は、頭を抱えた。魄を戻す訳にはいかず、何とか、人の姿を保つように、本人にも、くれぐれも気を抜かないように、術を重ねた。
「それでも、不安だ」
東の国に渡って、勤めを果たす前に、とんでもない鬼人を作ってしまった気になっていた。一人前の鬼神に育て上げ、やがては、自分の片腕になれるように、
育てあげたいのだが、今一、決定にかけた。
「やはり、無理か」
姿さえも、不安定で、術も使えぬ。
「で、あれば。。。」
瑠璃光は、袖の中から、一本の長い髪を取り出した。
「大事に、しろよ」
瑠璃光が、香と共に術を呟くと、それは、白い光を放ち、一本の剣となって現れた。
「紫鳳。。大事にするんだぞ」
紫鳳と呼ばれた少年は、顔を上げた。まだ、どんな顔になるのか、素材の定まらない顔をしていた。幼い虎の様な、猫に近い表情をしている。
「同じ、青龍の魄から、生まれた。お前に最も近い、十二神将でも、龍、虎、鳥、蛇がお前の表面を飾り、内なる能力は、それ以外に、なっていくだろう」
瑠璃光は、足元の阿吽を見下ろした。
「そうしたら、まずは、剣の練習をしないとな」
「え?」
阿吽は、嫌な予感がした。
「ここから、都まで、少し、こいつを鍛えてもらおうかな」
言い終わるか、終わらない内に、阿吽の姿は、二つの火の玉と変わり、宙に放り出されていた。
「紫鳳。三華の塔までの訓練だな」
「?」
瑠璃光が、ニヤッと笑うと、手にしていた剣は、光を帯、火の玉と化した阿吽を追いかけ始めた。
「あ。。言うの忘れていたが、剣を振るには、力だけではダメだぞ。言い聞かせないとな」
意志を持つかのように、剣は、空に向かい、紫鳳の意志には関係なく、上や下へと暴れ始めた。
「さてと。。。無事に、三華の塔まで、たどり着くかな」
瑠璃香も、後を追うかのように、そこらか姿を消していた。
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