デブリアイランズ③
「僕ちんはシロトキオと同等、3柱なんて呼ばれるのも好いてない、わかったね民達よ」
民衆は撃たれた男を見ようとせず、膝をついたままポンドが去るのを待っていた。なんで奴だこの国腐り切ってるな、けどあのポンドって奴使えそうだな。行き先を城からポンド邸と書いてある、あきらかにあいつが住んでいる場所に足を進めた。
2時間くらい歩いただろうか、高い塀に囲まれた場所にたどり着いた。塀沿いに歩いていると大きな扉が現れた。一般人がノックして無事に入れる訳ないよな。しばらく悩んだ末にいい事を思いついた。腰に巻いていた敝衣を身に付ける。ダルトがやっていたように。軽く扉を軽くノックすると少し扉が開き門番らしき人物がこちらをのぞく、目が合うと驚いたのか素早く扉が閉まった。その後10分は待たされただろうか、扉が大きく開いた。
「敝衣の王、ポンド様がお待ちです」
扉から列をなし兵隊が道をつくっていた、その先に、巨大な椅子、深々と腰を下ろしているのは、神輿に担がれていた男だ。被っている布が捲れないようゆっくりとポンドの前まで進んだ。
「本物じゃんか!あの映像本当だったのか、怖っ!僕ちんになんのよう」
ポンドは目を丸くしこちらを見ている。警戒は薄いようにみえるが、兵隊はいつでも剣を抜けるような体制をしている。
「ポンド様、私はあなたこそがこの国の王に相応しいと思っております」
俺は慎重に第一声を発した。ポンドは自分の腹をプルプルと振るわせた。やばい怒らせたか?
「げははははは!やっぱりそうだよなぁ、国連の奴らめ、勝手にシロトキオを王にしゃがって、元々各島に27人王がいたんだ、戦後に王の権威を剥奪され柱と呼ばれるようになり、今や3人、昨日2人に減ったのか、許せん思い出しただけでも、ムキー!!でだ、敝衣の王、国連加盟のこの国でお前は指名手配犯であるわけだろぉ、危険を犯してここに来てそんな事を話すとは、なにか僕ちんが王になる秘策があるんやろ」
ポンドは腹の下から銃を取り出し、俺の身体を銃口で撫でるようになぞって行く。汗臭い。
「もちろん、策はあります。ポンドさん必ずあなたを王にしましょう、もし仮になれなかったとしても私を国連に差し出せば王以上の地位を得れますよ」
ポンドは銃を放り投げる、兵隊に合図を出すと散り散りに元いたであろう場所に戻って行った。
「その策とやら、僕ちん教えてもらおうか」
ポンドに王の討伐計画を話すと、あっさり邸内に俺を受け入れ作戦決行日当日まで、何不自由ない生活をさせてくれた。
決行日当日、ポンドは自分の兵隊1000人を招集し城に向かう。俺が話した作戦はこう、これはこの前宿の主人に聞いた話し、10日後にコモドの葬儀が城で行われ国中の者が参列する。その前日である今日、次の日に備えて兵士の半分に休暇を出し、城は手薄だそうだ。その日を狙いクーデターを起す。これで間違いなくシロトキオ王は倒せると。
「明日には、僕ちんが国王か、敝衣の王、おまえを幹部にして、城に住まわせてやるからな」
ポンドは、城に向かい兵隊を前進させながらそう言った。もちろんポンド自身は神輿に担がれている。城に近づいていくと確かに手薄である。なにより驚いたのが城の門が開いている。
「不用心なものだね。全員突撃」
ポンドが指令を出すと1000人の兵が一斉に城の中に雪崩れ込んでいく、最後尾のポンドも含めあっさりど全員城の中に収まった。
「ありゃ、誰もいない、敝衣の王これはどう言う、あれ、いない!?」
今更驚いても遅い、兵が逃げないよう、門を固定している鎖を外し門を閉めた。いっちょ上がり。中からは、ざわめく兵隊と俺を探すポンドの声だけが聞こえていた。敝衣を急いで脱ぎ腰にまいた。
後ろから馬に乗った兵士達と馬車が近づいて来る。そして馬車の中から、ゆっくりと人が降りてくる。
「カタリくんと言ったかな、君には何度も驚かされるよ、コモドくんの命を奪ったかと思いきや、ブルドくんから生き延び、その後、私にクーデターをポンドくんが企てている、コモドくんも共犯でその為に致し方無く命を奪ったと言う内容の手紙を城に送りつけてた。いたずらかと思ったよ。でも目の前の現実が全てだよ、命拾いしたよ」
馬車から降りて来たのは、シロトキオ王。そう俺は、はなからこのつもりだった、ポンドをはめてシロトキオ王の懐に潜りこむため、嘘の作戦をポンドに吹き込み、シロトキオ王サイドにはポンドがクーデターを企てたと手紙を出しておいたのだ。シロトキオ王は兵士に何か耳打ちをした。兵士は頭を縦に振ると、ポケットから取り出した、花火のような物を城に向け打ち上げた。
「掃除が大変そうですね、カタリさん明日ぜひ城に来てください歓迎します」
シロトキオ王はそう言ってすぐ馬車の中に戻って行った。花火をめがけて、何か黒い塊が空から降りて来ている。そして塊は城の中に黒い雨をふらした。中からは悲鳴が聞こえる。何が起きているのかわからないが、見ている兵士が顔を背けているので、肩をたたき何が起きているか聞いてみた。
「話すのも悍ましいですが、あの花火は千羽鳥の誘引剤です。千羽鳥は肉食の鳥で基本千羽以上の群れで活動し、普段は空高くに存在し滅多に降りてはきません。ですが誘引剤を使う事で地上に誘い、あとは見ての通り、あの鳥は骨になるまで食い尽くすんです」
黒い塊も黒い雨もあれ全部鳥ってまじか。話しの通りなら誰も助からない。シロトキオ王がまさかそこまでする奴だとは思わなかった。罪悪感が胸に込み上げる。悲鳴はしばらくしたら消え静かになり、鳥達は空へ帰って行った。シロトキオ王の馬車と兵士達は沈黙を合図に城に帰って行った。
成功はしたがいい気持ちはしない、とぼとぼと宿を探しながら気持ち整理していた。ダルトならどう思ってただろう。
嘘つき救世主《メシア》は世界を救えない? 黒九 轆轤 @kuroku-rokuro
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