vol.2


初めに・・・

最後に重大(?)発表がありますので

最後まで読んでいただけると幸いです…!


========



 「この夏、俺は袖ヶ浦さんに自分の思いを伝えようと思うんだ」

 「……市川氏、そういうのは私や弟クンに言わず、さっさと深愛っちに言ったほうがいいと思うが?」

 「それができたら大事な夏休みに2人を呼び出すわけないだろ、察してくれ!」


 8月も中旬を過ぎようとしていたある日のこと。

 俺は市川大地に呼び出され、渋々以前行ったカフェに来ていた。


 「まったく、弟クンまで呼び出すとはちゃんと深愛っちの許可はもらったのかい?」

 「え、悠弥くんを呼ぶのに袖ヶ浦さんの許可必要なの……!?」

 「……いらないですよ」


 深愛姉に許可をもらう(イコール強制的に付き合わされる)のは後にも先にも俺の隣に座るこのクソ女だけだ。


 「それで、どうやって深愛っちに告白するんだい?」

 

 琴葉は大地の方へ身を乗り出していた。


 「今週の土曜の夜に花火大会があるだろ? 袖ヶ浦さんを誘って、いい雰囲気を作って最後の最後で告白を!」


 大地は顔を真っ赤にしながらも握り拳をつくって振り上げる。


 花火大会は毎年開催されているものでショッピングモールの広場を使って行われている。

 モール内のテラスや駅のロータリーからも見ることができるので開催中は駅周辺が人でごった返すほどだ。

 

 「まあ、悪くはないんじゃないか? というか、そこまで決まってるなら私たちに言わなくてもさっさと実行に移せばいいと思うのだが?」


 琴葉の言うことは正論である。


 「そうなんだけどさ……」


 琴葉の言葉に大地は更に顔を真っ赤にしていた。


 「どうやって袖ヶ浦さんを誘えばいいのかわからなくてさ、いきなり花火大会に行こうなんていったらあからさまな感じにとられるかなって」


 「大丈夫、深愛姉はそんなこと気づかないですから」

 「安心しろ、深愛っちにそんな考えはでてこない」


 俺と琴葉はほぼ同時に似たようなことを口にしていた。


 「でもさ、どうやって切り出せばいいのかわからないんだよなぁ」


 大地の言葉に俺と琴葉は同時にため息をつく。


 「……市川氏、スマホを貸したまえ」


 呆れた表情の琴葉は大地の方に手を差し出していた。


 「お、おう。いいけど変なことするなよ?」


 大地からスマホを受け取った琴葉はLIMEを起動させる。

 画面には『Mio Sakura』と書かれた画面が表示されていた。


 素早く文字を入力していき、送信ボタンをそのままの勢いに乗せてタップしていく。


 ちなみに琴葉が入力したのは

 

 『今週の土曜日花火大会にいかない?』

 

 と、いうシンプルな内容。

 

 琴葉は送信されたのを確認するとスマホを持ち主へ返す。


 「随分早いな、変なアプリとか入れてないよな……」 


 そう言って大地は自分のスマホの画面をみて、驚愕の表情を浮かべていた。


 「松戸!? おまえ、何勝手に送ってんだよ! こっちは心の準備ができてないのに!」

 「君の場合、いつまで経っても心の準備などできないだろ」

 「そ、それはそうだけど、すぐに帰ってきたら俺、どうしたら……!」

 「大丈夫ですよ、今日は撮影で夕方まで帰ってこないですから」

 「そ、そうなんだ……それまで待たなきゃいけないのも辛い」 


 どっちなんだよ……

 

 「覚悟を決めろ市川氏。フラれたら愚痴ぐらいは聞いてやる」

 「フラれること前提で話さないでくれ!」


 あとは深愛姉の返事を待つだけとなったので、解散をしてそれぞれ帰宅することになった。





 「ただいまー! ねぇねぇ聞いてよ悠弥!」


 いつものように部屋でゲームをしているとノックをせずに深愛姉が勢いよくドアを開ける。


 「深愛姉、頼むからノックしてからドアをあけてく——」

 「——大地くんから花火大会一緒に行かないかって来たんだけど!」

 

 俺の言葉を遮るように若干興奮気味な感じで、深愛姉は俺にスマホの画面を押し付ける。画面には琴葉が打った文章がそのまま表示されていた。


 「せっかくのお誘いなんだし行ってもいいんじゃないか?」

 「でも、なんで私なんだろう? 大地くんならもっと可愛い子誘えると思うのに」


 深愛姉の言葉に俺は深くため息をついていた。

 ……相変わらずの鈍感っぷりである。


 「そうだ! 悠弥も一緒に行こうよ!」


 深愛姉は俺の腕を引っ張る。


 「行かない」

 「えー! なんでよー! みんなで行けば楽しいよ!」

 

 いつもならここで諦めるところだが、今回ばかりはそう言うわけにも

いかなかった。

 ……ここで深愛姉と一緒に大地の前に姿をだしたら後々、琴葉に何を言われるか。考えただけでため息しかでてこない。


 「どうせ悠弥のことだから家でずっとゲームしているんでしょ!」

 「そ……」


 ここでそうだなんて言ったら、行く羽目になってしまうと俺の脳内が危険を察知し、言葉を止める。

 そして脳が導き出した答えは……


 「そ、そんなわけないだろ! ってか俺も一緒に行くやつがいるんだよ!」

 「ふぇ!?」 


 俺の言葉に深愛姉はお馴染みの声をあげる。


 「誰と行くの!? もしかしてナギちゃん!?」


 深愛姉は食い気味な感じで聞いてくる。


 「そ、そうだよ……だから深愛姉は市川さんと一緒に行ってくれ!」


 これ以上話したらボロがでそうだったので、早々に話を終わらせるために深愛姉の話に合わせることに。


 「そっかぁ、ナギちゃんと行くなら無理だよね〜」


 深愛姉はニヤニヤとした表情で俺の顔を見ていた。


 「ナギちゃんとデートなら流石に邪魔できないから、琴葉誘ってみよう〜」


 なぜか上機嫌になった深愛姉はそのまま部屋から出て行ってしまう。


 俺はすぐにスマホを取り出して習志野に連絡をとることにした。




 そして花火大会当日。


 「佐倉、深愛さんはどこにいる?」

 「モールの2階のテラス。浴衣着てるからわかるだろ」

 

 一体どこからこんなに人が出てくるんだと思えるぐらい大勢の人が集まっていた。

 深愛姉は美月さんに着付けてもらった薄緑の浴衣姿、大地は黒のTシャツにジーパン姿で横並びに立って他の人たちを同じように上空を見上げていた。。


 ちなみに俺と習志野、琴葉は2人に見つからないようにモールから離れたロータリーに立っている。


 「あーもう! 手を握るチャンスだろ!」


 俺の目の前で首からかけている双眼鏡で2人の様子を見ながら一人怒りを露わにしていた。


 「それにしてもビックリだよ、佐倉から連絡がきた時は」


 深愛姉と話したあと、すぐに習志野に連絡を入れてこれまでの流れを説明したのだった。もちろん深愛姉に関わることなので、すぐに了承してくれたわけだが……。


 「市川先輩と言ったら学校でも超モテモテの人だから、深愛さんと付き合うなら釣り合うとは思うけどさ……」


 隣に立つ、大きめのサイズの夏物パーカーにジーンズのハーフパンツ姿の習志野が声のトーンを下げながら話を続ける。


 「2人が付き合っちゃったら前みたいに遊べなくなっちゃうんじゃね?」


 習志野の言葉に俺は何も答えられなくなってしまう。

 ……深愛姉と一緒にいられなくなる。

 一緒にいることが当たり前すぎて考えもしなかったことだ。


 深愛姉とずっといたいと思う気持ちは嘘ではない。

 だからと言って、それで深愛姉のことを縛りつけるのは俺の我儘になってしまう。


 ——もし、深愛姉が俺以外と……


 答えが出ることのないことをずっと考えていると、ドンと何かが弾けるような音が響き渡る。


 俺が顔を上げると雲一つない夜空に花火が上がりはじめる。

 どうやら花火大会が始まったようだ。


 「たーまやー!」 


 隣で習志野は大きな声を上げていた。

 目の前では琴葉は花火を気にもせず双眼鏡で2人の様子を見ている。


 すぐに次の花火が打ち上がると、今度は赤い火花と青い火花が交互に散っていった。

 その後すぐに次の花火が上空に舞い上がると、どこかでみたようなキャラの顔が上空に浮かんでいた。


 「佐倉、あのキャラクターなんだっけ?!」

  

 隣で興奮気味の習志野が俺の服の袖を引っ張る。


 「この市のイメージキャラのイカーにゃんだ」 


 答えるとすぐに俺は遠く離れた深愛姉の方を見ていた。


 「って何だまだ手を繋ごうとしないんだ、あのヘタレ男は!」


 ……目の前では琴葉が別の意味で大声を上げていた。




 『本日の花火大会は終了いたしました。 誘導員の指示に従ってゆっくりとお進みください』


 「我々も帰るとするか、市川氏にはどうなったか後で聞くとして」


 そうして俺たちは帰路に着く人たちの波に飲まれるかのごとく、その場を後にする。



 そのまま家に帰ると、そのまま自分の部屋に行く。

 リビングには父親と美月さんの話し声が聞こえていたが話をする気分にはなれなかったからだ。


 部屋のパソコン用の椅子に座り、全体重を背もたれに乗っける。


 PCを電源をいれてヘッドフォンつけて1人の世界にどっぷり浸かろうと思っていたが、後ろから勢いよくドアが開かれる。


 「ただいまー!」


 声の主はもちろん深愛姉。

 頼むから部屋に入る時はノックをしてほしいんだけどな……


 そう思いながらも、椅子をドアの方へ向ける。

 帰ってきてすぐなのか、会場で見た時と同じ浴衣姿のままだった。


 「おかえり、どうだったんだ花火大会は?」

 「楽しかったよ! 大地くん花火に夢中になったみたいで、ほとんど喋ってなかったけどね」

 「何も……?」

 「うん、最初に会った時に話したぐらいであとは何も喋ってないよ。 終わったらそのまますぐ移動しちゃったから、お礼もLIMEでしたぐらいだし」

 「……じゃあ、告白とかも?」

 

 俺の言葉に深愛姉は笑いながら手を左右に振っていた。


 「もー! そんなのあるわけないじゃん! 大地くんが私に告白するなんて絶対にないよ!」


 深愛姉の言葉に俺は空いた口が塞がらなくなっていた。


 「それに大地くん、面白いの! 花火に夢中になっていたのか手がすごい震えてたの! 何回も私の手とぶつかってたよ」


 いや、それ震えてたんじゃない!深愛姉の手を繋ごうと必死になってたんだって!

 と、言いたい衝動を必死に抑える。


 「私のことはどうでもいいの! 悠弥はナギちゃんとどうだったの? もちろん告白したんだよね!」


 深愛姉はベッドに腰掛けて、早く言いなさいと言わんばかりに俺の顔を見ていた。


 ……まったくこの姉は。

 そう思いながらも心の中で安心している自分がいた。


 ちなみに夜中に大地からLIMEが来て

 「何もできなかった申し訳ない!」

 というお詫びの連絡が入っていたことは言うまでもない。


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【あとがき】


数週間ぶりですが、お久しぶりです。

お読みいただき誠にありがとうございます。


ちょっと思いついたのでサイドストーリーを追加させていただきました。楽しんでいただけたら幸いです。


そして!!!!

9月に新作を書き始めます!


タイトルは

『ギャルゲーにて序章が終わったらリアルで続きが始まりました』

※もしかしたらタイトルは変わるかもしれませんので今のところ仮称で


公開日にちにつきましてはまだ決まっておりませんが

できるだけ早く公開できればと思っていますので、

何卒、宜しくお願いいたします。

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ナンパしてきたギャルはこれから一緒に暮らす義理の姉だった 綾瀬桂樹 @arcadia_dolls

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