歴史の教科書の上では、あっさり描かれてしまう部分も、深堀していけば、こんなドラマがあったのかもしれないという面白さを、今回も感じました。毎度のことながら、歴史に詳しくなくてもスッと入ってくる文章が素晴らしいです。
歴史というのは、大きな流れではあるのですが、それを起こしていくのが一人一人の人間だというのを、実感させられます。今回も、父と境遇の異なる子供たちという個人的な問題から端を発しているように見えました。
毎月、考えたタイトルが歴史の出来事と照らし合わせて物語を考えられているのに、感激しています。「鬼」を亡くなった軍師に当て嵌めて、その遺言に翻弄される人々という描き方には、唸ってしまいました。
最後に大変遅くなりましたが、自主企画への参加、ありがとうございました!
作者からの返信
コメント付きレビュー、ありがとうございます。
まず、時代状況を簡にして要を得た感じで説明していただき、それから足利家の人たち、この時代に生きた人たちを描いたことに言及していただいて、非常にありがたい構成だと思いました。
そして、一番クローズアップして欲しかった、尊氏の言葉のことを取り上げていただき、深い感謝です。
何となく、必死で生きる人たちへのエールになれば、と思って書いたもので。
さてここからは返信です。
歴史って、どうしてもそれぞれの時代で複雑なものがあって、南北朝は特にそうなんですが、やっぱり教科書には収まりきらないものがあります^^;
その辺を上手く拾って、紹介できればなぁと思って、書いております。
なので、スッと入るとおっしゃられると、とても嬉しいです。
さて、この時代、南北朝の「はじまり」を彩った英雄たちが死に、生き残った足利尊氏とその一族の争いが、繰り広げられる時代となります。
その象徴が、尊氏の庶子・足利直冬となります。彼の扱いをもう少しうまくやっておけば、この時代の争乱もちょっとはマシになったのかもしれません。
そして嫡子・義詮や次男の基氏という、あまり注目されない「尊氏の子ら」も取り上げて、「生きる」とか「父子」を描ければなぁと思って、綴り始めました。
だから「尊氏の子ら」がクローズアップされており、ここに争いの元があるみたいな雰囲気になっております^^;
でも南朝も頑張っており、そこら辺を「鬼」=北畠親房と設定させていただきました。
けれども、拙作では、死んでしまった人は、その言葉や考え、行動を「残す」ことしかできないと設定しており、それ以上は描写していません。
そうすることにより、生者、特に尊氏の言動が光ると思いまして^^;
結果として、こういう描き方になりましたが、唸っていただけたようで、うまくやれたんじゃないかと満足しております。
それでは、最後にこちらこそ、素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございました!
編集済
こんにちは、四谷軒様。御作を読みました。
ひりつくような戦闘シーンと、儚さを感じさせる親子の一騎打ち、実によかったです。
笑ったのは生者という結末も、希望が見えて素晴らしかった。
……でも、「いるか骨喰」「臨終の時には」の尊氏と義詮のやりとりが『最後は心安らかに隠居したいなあ』『アンタのせいで俺は乳飲み子の頃から働き倒しだ。だから、生きている限り働け』というブラック企業に見えた私の目はだいぶ曇っていますw
だって尊氏、死ぬその時まで働いたからなあ。
実に面白かったです。次は最新シリーズ読むか、戻るか、迷いますね。
また御作を読みにきますね。ではまた^ ^ノシ
作者からの返信
恐縮です。
東寺合戦って、結局のところ「見せ場」はこの尊氏直冬父子対決しかないみたいな(笑)
いや、軍事的に見てどうこうでなく、小説的な「見せ場」となると、拙い書き手からすると、もうこの父子対決しか無いので、そこに注力した次第です^^;
そして勝者たる足利尊氏の方に、生きて足掻いた男の方に、「義満」という次世代へバトンを渡す権利が与えられた、という感じにしてみました。
(たぶん)「置き文」に振り回された尊氏ですので、こうして自身の孫に受け継がせることができたんだよ、としてあげたかったのです。
尊氏と義詮のやり取り、たしかにそう見えますね(笑)
まあでも、義詮も本気を出せばアレなのに、それを発揮する機会があまり無いまま亡くなってしまった観がありますから、そう見えても仕方ないと思います^^;
拙作については、お読みいただければ幸いと思っておりますので、もし、お時間がありましたら、お気が向いた方でどうぞ。
ありがとうございました。
編集済
「歴史・時代・伝奇」のランキングから見つけて、タイトルに興味を惹かれて読んでみました。
なにしろ太平記の第三部は怨霊の跳梁で、本作のタイトルの「鬼笑う」にストレートに関わってきますから。
それで、率直な感想を言うと、面白すぎて「一気に読了」です!
いやー、貴重な作品を、ありがとうございます。
自分では神話や輪廻転生絡みの未来ファンタジーを書いてるんですが、実は歴史ものは大好きなんです (^^;)
でも、南北朝時代(「太平記」ですね!)を扱った作品は少なくて、欲求不満気味 (+_+)
この作品には堪能させて頂きました。
楠木正儀についての心理描写と、特に「05話」における尊氏の発言は特に素敵です。
尊氏は日本史に残る英雄の1人でありながら、他の幕府創設者2人と比較すると知名度が低く、評価されていないのは残念ですよね。
戦前の皇国史観の影響が、いまだ少なからず残ってるのかも?
夢窓疎石師の言葉によれば、幕府の創設者である3人の中で最も愛すべき人物なのに……
ということで、比較的めずらしい(?)「尊氏大好き」「太平記大好き」、そして勿論、この作品に惹かれまくった私としては、当然 ★★★ 押させて頂きます。
長文の感想、失礼しました (^^;)
作者からの返信
お星さま、ありがとうございます。
「太平記」の世界って、小説のネタの宝庫だと思うのに、あまり書かれない印象があります。
まあ、マイナーであり、複雑な環境が「とっつきにくい」印象を与えているせいだと思いますが……。
でも、web小説なら、そういうマイナーなネタを扱っても大丈夫だろうと思って書きました^^;
あまり読まれないだろうと思い、せめて一気読みしやすいように(&カクコン短編に応募するために)、一万字の短編とさせていただきました。
南北朝時代を扱った作品は、おっしゃるとおり、たしかに少ないので、アピールするためには、サクッと読める短編で……という謎の使命感(笑)もありました。
Evelynさんの欲求不満を、多少なりとも解消できれば幸いでございます。
楠木正儀は、当初プロットでは出すつもりは無かったんですが(ナレーションオンリーでした)、やはりこの時代この時期なら、この人は書いておきたいという欲求に耐えられませんでした(笑)
南朝の良識派として、その苦労性なところ(笑)を描けていたら幸いです。
足利尊氏……この人もこの人で、もうちょっとちゃんとしようよと言いたいところがありますが、おっしゃるとおり、この人が最後までコンティニューしてくれたおかげで、この国は何とかまとまったという功績は大きいです。
でもあれですね、皇国史観というよりは、この時代の複雑さ、覚えにくさが、学校で習った時点で「やっぱいいや」と思われてしまうのでしょう^^;
まあ尊氏自身も、すぐ諦めたり投げ出したりするので、そういうところが、とっつきにくさを助長していると思います。
私はそういうところが人間くさくて好きなんですけどね……為政者として、武士としてどうかは置いておいて^^;
足利尊氏、そして太平記、もっと書かれたり読まれたりしても良いんじゃないかと思い、それならまず自分がと思って筆を執った作品ですが、お楽しみいただけたようで何よりです。
改めまして、お星さま、ありがとうございます。
こちらこそ、長文の返信をさせていただき、恐縮でございます^^;
ありがとうございました!
こんにちは。
完結、おつかれさまでした。安定の筆の冴え、さすがです。
尊氏は晩年家族との争いに明け暮れていたような印象です。それは後々まで足利家の呪いとなって、室町幕府の基盤が脆弱になる一因になったような。。。
南北朝の微妙な政治機微と愛憎、楽しませていただきました。ありがとうございました!
作者からの返信
お星さま、ありがとうございます。
おかげさまで完結いたしました。
尊氏、たしかに弟に息子にと戦いを挑まれてしまい、それが室町幕府の弱体化というか歪な構造を生んでしまったように思います。
関東公方なんか、その最たるものでしょうね。
初代関東公方・足利基氏は、兄の将軍・足利義詮と仲が良かったし、有能だったから良かったんですが……時代が下ると関東公方が争乱の原因となるパターンが定番になるんでしょね^^;
南北朝時代、いろいろと分かりづらいところもありますが、その中でもドラマになる部分を切り出して、何とか描いたつもりです。
そのあたりをお楽しみいただけたのなら、まことに嬉しい限りです。
ありがとうございました!
こう来ましたか(笑)
何かカッコいいラストですね。
この時代って本当にわかりませんね。
その中でも観応の擾乱は、特にわけがわからない出来事だったりします。
一寸先は闇と言うか、まさに敵味方、優勢劣勢があっと言う間に入れ替わるこの時代を象徴するような出来事です。
あんたさっきまでこっち側だったじゃん。どうしてそっちに居るの?(笑)
ひょっとして光厳天皇(上皇)あたりを主人公にすると面白いかも・・・
ただ、その中でもやはり尊氏は光を放っていたように思えますね。
尊氏と直冬
この二人もまた、この時代を象徴するような関係ですよね。
直冬も、このあと生き延びて長生きするので、ある意味勝者なのかもしれません。
素晴らしかったです。
ちょっと時間かかるかもしれませんがレビューはいずれ書かせていただきます。
作者からの返信
お星さま、ありがとうございます。
この時代、生き抜いた男というと、やはり足利尊氏ということで、その「生き抜いた」という特徴を生かして、ああいうエンディングにしました。
観応の擾乱は本当に罪作りなイベントで、多くの歴史家を泣かせてきました(笑)
これのせいで、足利家内部でも二派に分かれて、それが南朝と結びついたから、さあ大変といったところです^^;
逆にこれが無ければ、高師直、足利直義を抱えて、足利家は安泰だったような……。
光厳上皇は結構したたかというか、ズルいというか……確かにこの人の視点でこの時代を描くというのも、有りといえば有りですね(笑)
足利直冬、まさに徒花という感じですが、この人が生を全うするあたりに、この時代の懐の広さみたいなのを感じます。
あるいは尊氏も、合戦よりも、安定政権を築く方が先、とシフトしていったのかも……。
レビューの件、どうぞお気づかいなく。
いえ、いただけるのはありがたいのですが、お忙しいでしょうから、どうかリアルを優先してくださいませ。
それでは、ありがとうございました!
>矛盾多き人生
さほど歴史に明るくない自分の、足利尊氏の印象はまさにそれでした。
自ら火種をまいて、それを消しているような。
一方で大きな仕事を成した人物である事も疑いなく、不思議な人だなあ、と。
楽しませて頂きました。
作者からの返信
お星さま、ありがとうございます。
足利尊氏って、おっしゃるとおり「不思議」な人物です。
もっと冷徹に天下を取ることが可能だったのに、何か甘いし、妙に優しさを出して、立ち往生してるし……。
それでも、最終的には幕府を開き、太平へと時代を持って行ったのは褒めてあげてもいいと思うのです。
為政者、軍人としてはちょっとアレですけど、失敗しても、それでも歩み続けてきたところは、人間的には面白いと思うのです。
そのあたりを描ければ……と思って書きました。
お楽しみいただけたようで、何よりです。
ありがとうございました。
拝読致しました。
まさかここで父子対決とは恐れ入りました(^_^;)
子でありがら鬼籍に魅入られたかのような直冬さんと、半ば鬼籍に片足を突っ込んでいるのに(酷)生を見据えて戦う尊氏さんの好一対が良かったです。
史実に則してのことかもですが、「骨喰」という銘がいかにも怨霊退治めいて、これを振るい刀を折ること鬼に魅入られた直冬を生者の世界に引きずり戻し、舞台から下ろして退場させてしまうような、そんな歌舞伎の一コマのような情景を感じてしまいました(*´▽`*)
生ききって、次代につないだ本作の尊氏さん、格好良かったです(^^)
作者からの返信
お星さま、ありがとうございます。
ちなみにこの父子対決は、ホントに伝えられていることだったりします。
直冬さんは「囚われている」イメージで、尊氏は「悟っている」感じで、描いてみましたので、その辺りが「好一対」と映ったのかなぁと思います^^;
あとは、父と子、死と生……そういうのが、この南北朝争乱の時代の相剋を象徴しているからかもしれません。
「骨喰」、おっしゃるとおり、これも史実です^^;
こんな厨二心をくすぐるネーミングのウエポン、使わずにいられようかと思って使いました(笑)
この足利家の伝家の宝刀を使うと、「絵」になる感じがいたしますので、そこが「歌舞伎」っぽい感じになったのかも^^;
激動のこの時代、いろいろ欠点はあるものの、とにかく生き抜いてこの国のかたちを作った男・足利尊氏。
その格好良さを描いてみたいと思って書いたので、そこをお褒めいただき、恐縮です^^;
ありがとうございました!