第5界 エルフ妻はスティッキーフィンガーズ(おねショタ 3300文字)

「あたし、キミに教えてあげられること、もう何もないなあ……反復練習なら自分でも出来るものね」


 隣りに住むマリアーヌ姉さんの、近頃の口癖だった。


 ぼくはまだ11歳。

 姉さんは、ぼくより少し年上くらいにしか見えないけど、もう嫁入りして3年になるだろうか。

 エルフなので、歳を取るのが著しく遅いらしい。

 

 ため息が出そうなほどの美人だ。

 そのむせ返る甘い匂いの側で、冒険者としての手ほどきを受けていた。


「弓の扱いもそこそこだし、まさか、キミがあたしの知ってるだけの回復魔法の基礎はマスターしちゃうとは……その歳でなんてすごいね」


 姉さんの側で、あれこれと話をしつつ、見惚れていたり、

 手取り足取り教えてくれた拍子に、度々姉さんのびっくりするくらい柔らかいからだが密着してきて、桃のような甘い匂いと共に包み込まれたりすると、決まってぼくは何だかおかしくなってしまうようになっていて……。


 おちんちんが膨れあがって硬くなってしまい、ヘンな気持ちになって切なくなり困ってしまうんだ。

 何なんだろう。でも、何だか恥ずかしいようなことの気がして誰にもそんなの話せないけど。

  

 マリアーヌ姉さんは、足を悪くして引退した元冒険者だった。

 普通に歩行するなら問題はないけど、走る事が出来なくなってしまった。


 旦那さんのギース兄さんは、人間の冒険者でたくましくかっこいい戦士だ。


 ここから一番近い、冒険者ギルドがあるのは王都だった。

 と言っても、徒歩にして、ひと月弱ほどもかかる。

 そのため、ギース兄さんは殆ど帰って来ない。あちこちのパーティーに引っ張りだことかそんなこともあって。


 人間とエルフの結婚て、どうなんだろう。

 そんなことをぼくの母さんが話してたっけ。


 人間の祖先は、元々は猿だったらしく、進化というものをして、変わってきたらしい。

 猿から猿人、原人、旧人、そして人間へと。

 最近の学者たちの調査で、化石からそういうことが判ってきてるようだ。

 人間とエルフの結婚て、

 例えるなら、人間と原人くらい……いや、もっと? 種が異なるわけだから、生物学的に妊娠し難いらしい。


 実際、いつまで経っても子宝に恵まれそうな気配はなかった。


 ギース兄さん──マリアーヌ姉さんはそんな、殆どの家に帰らぬ夫を持つ身。

 母さんだけじゃなく、村の他の人も噂してたけど、そういうのって〝からだが夜泣きする〟とか。

 それってどういう意味だろう。

 


 ――そんな平和なある日のことだった。


 マリアーヌ姉さんの前に、マモノが現れた!

 ゴブリンだ! 

 若い女たちにりょうじょくの限りを尽くし、二度とうまい棒の味が忘れられぬよう喰らい尽くしてくれるわ! とかそんな感じで言われてるザコだがヤバやつだ。

 

 その、一匹のゴブリンが、姉さんの家へと訪ねて来ていた。


 ぼくはとりあえず、こそっと近くの茂みから、その様子を覗いた。


 改めてそのゴブリンを見やると、噂に聞いてたほど凶悪そうでもないかも。

 でも、手には、おちんちんみたいな棒状のモノを持っていた。

 何だろう。まさかあれで姉さんをいじめるとか。


 何やら交渉してる様子だった。


 どうもギース兄さんが――あのゴブリンの妻と子を殺してしまった――というところだけ、かろうじて聞き取れた。



 姉さんはやがて、ゴブリンを家の中へと招き入れた。

 ぼくは姉さんのことが心配になり、今度は、家の裏手から忍び込み、しっかりと聞き耳も立てていた。


 ゴブリンはどうやら姉さんに、エルフに伝わる木彫りの豊穣の女神像を要求していた。

 

 子宝に恵まれるというご利益のある……。


「ワイ、次はハーピーとの間に、天使のような子でも、作ろうかなと思ってますねん」


「ハーピーって、ちょっと種が離れ過ぎなんじゃないの? 子ども出来るのかしら?」


「そのためのエルフですやん。エルフの豊穣の女神像ですやん」


「……異種間同士でも、子宝に恵まれる効果があるって言っても、そこまでの効果は、流石にあるかわからないわよ? 現にあたしだって、ギースくんとの間にはまだ……」


 そういや、その木彫りの女神像とやらは、姉さんの家のベッドの側で見かけたことがあったなと思い出した。

 小さな像だった。

 ぼくの腕の半分くらいの細さの円柱の、高さはぼくの頭の半分くらい。

 立てておいても、直ぐ倒れてしまう、あの像がそうだったんだ……。

 

 何か魔力を宿したアイテムだったのか。

 改めてちょっと好奇心に駆られ、見に行くことにした。

 


 そーっと……、物音を立てないよう、姉さんの寝室へと忍び込んだ。

 

 木彫りの女神像を手に取ると、今まで気にもとめてなかったけど、改めてふと気が付いた。


 ――ゴブリンが手にしていた、あのおちんちんみたいな……棒状のモノと同じものだった。


 女神像も、そういえばおちんちんみたいだ……。


 何だかものすごく甘い匂いがする。少し発酵したような。

 癖になりそうな。 

 ずっと嗅いでいたいと思い、ぼくはつい懐にしまい込み、持ち去っていた。

 


 また心配になってた姉さんのところへと戻った。

 

 姉さんとゴブリンは、別の部屋へと移っていた。

 その部屋には覗けるポイントがなく、扉に耳を当てて、どうにか聞き耳を立てる事しか出来ず。


「――なんだって女神像、見当たらないのかしら」

 ぼくが勝手に持ち出してしまったから、あちこちを探してるらしい。


 姉さんとゴブリンのやり取りによると、女神像をゼロから作るには、かなり骨が折れるという。

 

 1 トネリコの木より彫り出す。つるつるになるまで、よく研磨する。

 2 その後、エルフ乙女が使い込むことにより、豊穣の女神の霊力が宿る。


 使い込むって、どういうことだろう。


 ともかく、エルフ乙女が使って、レベルアップさせる必要があるアイテムだと言う。

 

 そんなわけで、ゴブリンは素の女神像を持って来ていたらしい。姉さんに霊力を宿らせて貰おうと。


「一人でするより、手伝ったる方が、ごっつええ塩梅で、よろしおますやろ?」


「……恥ずかしいわよ!」


「奥さ〜ん、そんな遠慮せんでもええですやん。何やったらワイのモノで、泣かしたってもええし。天国にイかせたりますよってに。ほ〜れ、まぁ見たってくださいよ♡」


「ちょ、そんな立派だったの!? ゴブリンのワイマンさんて……ギースくんと互角……。て、てか、そ、そんなものしまってよッ!」


「ほらほら、奥さ〜んからだの方は正直ですやん。欲しがってまっせ。もうワイの子どもは、奥さんに産んで貰うという話にしてもええんですよ♡」


「ちょ、あああんッ!!」 


 ――ね、姉さんが、ゴブリンに襲われる! りょうじょくというものって何だか分からないけど、そんなことされてしまう! ピンチだ!

 

 

 慌てて、玄関に回って戸を叩き、マリアーヌ姉さんの名を叫んだ。

 姉さんが戸を開け顔を出すと、ぼくは言った。


「えと、猿が! 姉さんの家から、何かを持ち出したところを見かけて、取り返してきたよ!」

 女神像を持ち出した猿とはぼくだ。下手な言い訳まで言ってごまかすとか、かなり罪の意識を感じた……。



 ゴブリンはその女神像を受けると、あっさり立ち去って行った。


「……見つけ出してくれてありがとうね」

 そう言う割に姉さんは、何だか複雑そうな、がっくりしてるような顔をしていた。


「……素の女神像の方に、しっかり霊力宿らせないとなあ」


 エルフ乙女が〝使い込む〟というのをするらしい。

「それって、どうやって?」


「エッチね! ……うふふ、興味ある?」

 

 えっ、ええ!? エッチなことなの?……。

 

「でもほんと、キミには教えられる様な事、もう何もないし、ちょぴっとくらい見返り貰っちゃっても良いわよね?」

 言いながら姉さんは、ぼくの服を脱がし始めて……。 


「うふふ。なかなか活きが良さそうね、ジャガーくんの♡」

 

 それは、〝ちょぴっと〟じゃ済まなかった。





 * エピローグ(マリアーヌ視点)


 ギースくんは40代も半ばになると、冒険者を引退し帰って来ていた。


 豊穣の女神像のおかげで、子宝に恵まれて、娘が生まれてもう13になる。

 ジャガーくんはもう24。立派に成長していた。ホントに立派で。


 今じゃ、すっかり娘と恋仲にもなっていたり。


 ギースくんはそんな様子を微笑ましく見やって言った。

「ジャガーのところに嫁にやるなら、おれは賛成だな。マリアーヌはどうよ?」


「あたし? あたしは……」


 ジャガーくん、娘の父親はキミなのよ……なーんて言えないなぁ。てへぺろ。



 〈おわり〉

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異世界おっぱい魔女にキノコが元気だす! 他、ショートショート集 西 喜理英 @velvet357

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