第四章 踊る姫と萌える人形

第100話 萌人形(フィギュア)

「そういえば第二回イベントの景品も同じカタログだったね。」


 今回は素材提供と献上貢献の2部門があったため、各10位までの景品となっている。


 景品は第一回同様金銀銅色のカタログの中から自分で選ぶ形式となっていた。


 また、11位以降も賞金や参加賞金は配分されている。


 

 6~10位は銅色から2つ。

 5位は銀色から1つ、銅色から1つ。

 4位は銀色から1つ、銅色から2つ。

 3位は金色から1つ、銀色から2つ、銅色から2つ。

 2位は金色から1つ、銀色から2つ、銅色から3つ。

 1位は金色から3つ、銀色から3つ、銅色から3つと差が大分出てくる。 


 77位、100位、1000位、10000位とキリ番的な順位にもそれぞれ銅色カタログ1つが送られている。



 尚、マロン達4人は第一回・第二回のカタログからはまだ何も引き換えていない。


  マロン:金7 銀8 銅8

  トリス:金4 銀5 銅6

  アクア:金2 銀5 銅6

 クマモト:金1 銀2 銅3



 現状何も引き換えていないため上記のようなカタログ冊数となっている。


 まるでオリンピックの国別メダル数のようである。


 ステータスにおいても、途中で仲間になったクマモトでさえ現状トップクラスとなっている。


 普通にプレイしているプレイヤーであれば、その数値は3桁には届いていない。


 第一回イベントに参加していたマロン達を除く上位陣で、漸くHP・MP3桁なのである。


 筋力等のステータスでも50超えである。



 しかし、このニューワールド。


 攻撃力は筋力依存ではないため、平均が必ずしも良いというわけでもない。


 マロンで言えば魅力に依存するので、マロンの魅力が高い程相手に与えるダメージ判定は大きくなる。


 全体的にステータスが高いに越したことはないが、極振りによる一点集中である程度俺つえーが出来てしまうのも一つの強みであった。


 カタログの話をしていた一同であるが、せっかくの景品である。


 銅色でさえ早々手に入るものではないので、使わないのは勿体ないのであった。


「あ、そうだ。私称号【姫】を取ろうと思うんだ。例の銀色カタログの話ね。」


 思い出したかのようにマロンが、カタログの使い道を漸く切り出した。


 しかし同じ色のカタログであっても、その中身が同じであるとは限らない。


 その証として、マロンの銀色カタログには【姫】は存在するが、クマモトの銀色カタログに【姫】は存在しない。 




「まさかマロン、あんた姫プレイでもする気?」



 

「違う違う。スキルにプリンセスラッシュがあるから、姫称号があれば更なる上位技とか手に入るんじゃないかなと。」


 もちろんマロンにその意識はあったが、本来の意図は違った。


 レベルが20に達し最初の進化の時、自分の種族であるボディコニアンが幼体から少女体に進化した事から、恐らく次は成体である事が想像出来た。


 マロンはさらにその先の進化となると、熟女体になるのでは?と考えていた。


 世間一般で熟女と言うと、40代……場合によっては50代の女性を指すように使われているが、言葉の真実は違う。


 実際には年齢で定められてはいないのである。


 辞書を引いた事のある者なら知っている事だが、30代~50代の成熟した色気の漂う女性とある。


 つまりは30歳でも熟女、59歳でも熟女なのである。


 年齢で定められていないという事を当てはめれば、例えば27歳でも熟女と呼んで良いのである。



 そこでマロンは考えた。


 成体の次は熟れた肉体であるならば……


 全盛期体とも呼ぶべき進化先に王や姫のようなものがあっても良いのではないかと。


 プリンセス女王クイーンのような特殊進化があっても良いのではないかと考えていた。

 


 本当にあるのかはわからない。わからないが、妙な事でスキルや称号が得られるこのニューワールドであれば、ワンチャンあるのではないかと思うのは不思議な事ではない。



「あ、あと称号【日本一ィ】も取ろうかなって。ほら、私扇子が主要武器じゃん?巫女服も着るじゃん?」


 マロンがエア扇子でポーズを取る。


「それ、コンプラは大丈夫?」



「大丈夫だから称号の欄にあるんじゃないです?」


 トリスの心配にクマモトが答えていた。


「だって私なんてどう考えても魔王マーラ様ですよ?中身女子なのに。」



「あ、あまりリアルの事は言わない方が良いですよ。」


 クマモトの嘆きにアクアが身も蓋もなく進言する。


 

「みんなが女子なのはこれまでの会話の中で出てたんだから、実際の性別をこのメンバーの中で話すくらいは問題ないですよ。」




「と、いうわけで二つの称号を取ってしまおうっと。」


 マロンは銀色と銅色のカタログをそれぞれ一つずつ取り出した。


 拍子が銀色と銅色の、分厚い同人誌即売会のカタログにしか見えない本を2冊取り出した。


 この冊子がそのまま武器にもなりそうである。



 マロンが心の中で使用すると念じると、それぞれの本が光り輝き……



「おおぉぉぉお」


 光が集約すると、マロンの手からカタログは消え去っていた。



「確かに称号に姫と日本一ィが追加されてる。」


 マロンが称号の詳細を確認すると、姫は魅力が+100、日本一ィは魅力が+50であった。


 どうやらこの二つが向上するステータスは、自身の職種に適したモノが上がると明記されていた。


 マロンはそれが魅力であるため、魅力が大幅に上がったのである。




「マロン姫……」


「栗姫……」


「クリ姫……」



「なんか卑猥だからやめて。」


 アクア、クマモト、トリスとが姫プレイを始めた。


 流石にトリスのクリ姫はマロンの言うように、卑猥な事を連想させるため、却下された。






「ねぇこの龍素材って……」


「この前王女と一緒にやったクエストで倒したやつ。」


「このスライム素材って……」


「この糸って……」


 カタログを使用してから数日、マロン達は王女……テレトと一緒にいくつかのクエストをこなしていた。


 娘達へのプレゼントのためにという名目で、必要な素材を集めるためという事だった。


 誘拐事件以降、受付嬢だったはずのテレトは、たまに冒険者として自らクエストに赴く事があった。


 それが、娘に関する事のみではあるのだが、人類からすれば脅威となる相手ばかりだったので、所謂ウィンウィンの関係となっていた。


 冒険者ギルドとしても、第一回イベント上位陣のマロン達と一緒に行うのだから安心感は大いにあったと思われる。


「それで、これらの素材を使って最高の人形フィギュアを作ろうかなって。」



「そういえば、マロンの店に人形の発注が増えたみたいだもんね。」




「まぁ、錬金術や錬成や裁縫が使える職人を新たに雇って、量産型で良ければって事で人形部門も立ち上げたんだけどね。」


 流石にマロンが一体一体作っていたら、マロンがゲームを楽しむゆとりがなくなってしまうための措置である。


 発注をするプレイヤーやNPCもとりあえずは、超兵器みたいな人形を求めているわけではないので、マロンの弟子が作製した愛でる人形であれば構わないという風潮であった。



「そういや、選択はしてないけど、10体完成した時くらいに職種の中に人形師ってのが追加されてたね。」



「この前のクエストでレベルも40になって進化可能なんだよね。それで、思惑通り進化先が成体と姫体から選べるようになってた。」


 マロンが人形師が生えた旨と、新たな進化について話した。


 トリスは第二回イベント中にレベル40に達していたため、既に二度目の進化は済んでおり、魔エロフとなっている。


 魔法系に特化したエロフという事だと、進化の時にトリスは説明していた。



「これが私の現在の全てを注ぎ込んで作製した人形……【カスターニャ】だよ。」



「イタリア語やスペイン語で言う所の【栗】ね。マロン繋がりってことかー。」



 名前とは裏腹に、どう見てもまごう事なき日本人形である。


 こけしっぽさやネタ要素は一切ない。


 黒髪ロングで前髪ぱっつん、着物が似合う可愛らしい日本人形であった。


 浅草橋に行けば姉妹達がいるのでは?という程に。



「ご機嫌麗しゅうございます、姫。」


 マロンが作製した人形、カスターニャの口から声が漏れた。 


「称号の姫がこんなところで仕事してるのかー!」 


 トリスが盛大に突っ込んだ。

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魅力に極振りしたら18禁ゲームみたいになった 琉水 魅希 @mikirun14

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