二人のこと①


「お邪魔します」


「入って入って!」


今日は約束の木曜日。

お昼は外で済ましてきた。


「すごい綺麗なお部屋ですね…」


「ありがと。昨日の夜はちょっとはりきって掃除しちゃったよ」


「ふふ、そうなんですね」


「ソファに座って待ってて。コーヒーにする?ジュースもあるよ!リンゴとオレンジ!」


「えっと、リンゴジュースでお願いします」


「了解」



******



「はい、お待たせ」


「ありがとうございます」


「さっき行った飯屋美味しかったな」


「そうですね。昔ながらのって感じの味でした。」


「そうそう、何か落ち着く感じの味な」


二人で料理の話で盛り上がる。

仕事じゃない日も仕事のことしか頭にないなんてな…


「育さん、これが話してた化粧品です!」


「ありがとう!見た目とかちょっとお高そうだな」


シンプルなパッケージながら、高級品にも見える。

使い心地良さそうだなぁ…


「見た目はですが、実際は高くないですよ」


「いくら?この分はちゃんと払うからさ」


「いえいえ!それは貰って下さい!日頃の感謝といいますか……」


「え」


和春君の言葉にビックリした僕は動きが止まってしまった。


「これは絶対払う!払わせて!」


こんなの貰うとか絶対出来ない!


「あ、あの……お金のかわりといってはなんですが……」


「ん?」


「育さんと、あきさんの話を聞かせて頂きたくて…」


「僕たちの?」


「はい」


和春君の目はいたって真剣で、ふざけていってないということが一目でわかる。


「前から興味があって聞きたいと思ってたんですけど、なかなかお聞きすること出来なくて……」


「まぁ仕事も忙しいし、ゆっくり話す機会もないよね」


「はい。なのでせっかくの機会ですしお聞きたいなと思いまして…。どうですか?」


確かに仕事が始まってしまえばまた話せないだろうし、断る理由もないし…

話すことで和春君が嬉しいなら何だって話したい


「ん、僕はいいよ。何が聞きたい?」


「ありがとうございます!そうですね……、ではいつからお付き合いされてたんですか?」


「んー、正式に付き合い始めたのは高校一年だったかな?」


「え!学生のうちから?」


「そうそう。でも幼稚園の時から、お互いに結婚したいって言ってたな」


「よ、幼稚園………ずいぶんと早い…」


「家も隣だったし、その時からすごく気があったんだよ。で、ずっと一緒にいたんだ。休みの日は絶対に会ってたし、親同士も仲良かったからな」


「何だか素敵ですね」


「え?」


「始まったのが幼稚園からで、今は付き合って同じ職場にいて……。運命というか、赤い糸というか……。とにかく素敵です!」


こんな風に言われたことがなくて正直びっくりした。

運命の出会いかなとかはあきと話したことあったけど、素敵とか言われるなんて思っていなくて。

なんたって、僕たちの関係は世間一般的には認められてないみたいなもの。

意図せずにバレてしまった時には、

「おかしい」「気持ち悪い」「信じられない」

など、沢山の傷つく言葉をかけられた。

お互いに愛し合ってるのに認めてもらえない。

こんな悲しいことはない。


けど、和春君みたいな受け止めてくれる人もいる。

彼の言葉が嬉しくて、僕は思わず泣いてしまった。


「え!い、育さん!?」


「ありがとう、和春君……。本当にありがとう」



暫くの間、涙が止まらなかったーーー



*続く*


















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何度だって、君に恋をする @omami

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