自分なりの努力(育編)


「「休憩頂きまーす!」」


「いってらっしゃーい」


お昼を少し過ぎた頃。

だいぶお店も落ち着いてきたため、僕と和春君は休憩をもらうことにした。


「今日のお昼も忙しかったですね」


「だね~」


他愛ない話をしながら、休憩室のある二階へと移動する。


「和春君、頂きます!」


「どうぞ」


椅子に腰掛け、和春君が作ってくれた賄いのオムライスを食べる。


「相変わらず君の作る料理は美味しいな」


「ありがとうございます。キッチンの責任者として、中途半端なのは作れないですからね」


お腹が空いていた俺たちはあっというまに食べ終えた。


「ごちそうさまでした!」


ふと僕は、向かいに座る和春君の顔をじっと見つめる。


「何か顔についてますか?」


僕が見つめていることに気づいた和春君は鏡で自分の顔を確認し始めた。


「いやいや、違うんだよ!何もついてないよ!」


「確かについてないですね。じゃあどうしたんですか?」


「和春君の顔、キレイだなって思ってさ。」


「えっ!?」


僕の言葉にビックリした和春君は自分の顔を触り顔を横に振ってきた。


「そんなことないですよ!てか、そんなこと言われたのもはじめてですよ……」


恥ずかしかったのか、顔が少し赤らんでいる。


(可愛いなぁ…)


「ね、どんな化粧品使ってるの?」


「どんなって言われましても……ネットで評価がいいのを買ってるだけ……です」


「ネットかぁ……。その化粧品教えてくれる?」


「いいですよ」


「ありがとう。今使ってるのも悪くはないんだけどイマイチ効果が感じられなくてさ」


「俺から見たら普通に綺麗に見えますけどね……」


そう言って、和春君が僕の顔を見つめてくる。


「ちょ、あんまし見ないでっ!」


とっさに両手で顔を覆い隠す。


「はは、もう見つめてませんよ」


おそるおそる手を退けると本当に見ていなかった。


「………恥ずかしい話、していい?」


「はい。何でも聞きますよ」


和春君は僕のよき相談相手。

話の内容があれなため、話せる人は限られてくる。


「あきはね、僕の顔を撫でたり見つめたりするのが好きでさ………」


「はい。」


「僕も撫でられたりするのはすごく好き。でもこの前ね、あきがさ……いつもと触り心地が違う。乾燥してる?って……」


「確かに、今寒いですし乾燥しますもんね……」


「何か地味にショックだったんだ……」


「そうですか……」


「だからね、スベスベ肌になってあきを感動させてやろって思ってるの!だから協力して下さい!お願いします!」


「わわ、頭あげて下さい!」


急に僕が頭を下げたから和春君はびっくりしたみたい。


「理由はわかりました。本当に育さんはあきさんが大好きなんですね」


「うん。気持ち悪くなかった?」


「全然!いつも言ってますが素敵な関係だなって思います。お互いがお互いの事を大事に思っていて、そのために努力もされていて……憧れちゃいます」


「ふふ、ありがとうね」


僕たちの関係を知っていて、それでも気持ち悪いと思わずに全部を受け止めてくれる和春君には本当に感謝してる。


「僕も、そんなふうに…」


「ん?」


「いえ、何も」


何か言った気がしたけど、気のせいかな…?


「そういえば、明後日の木曜日はお休みでしたよね?」


「そうだよ。和春君もお休みだよね?」


「そうです。もしお邪魔でなければ、その日に化粧品もって育さんのお家に行ってもいいですか?」


「いいよいいよ、ぜひ!」


「ありがとうございます。」


「でも、化粧品の予備ある?」


「いつもまとめ買いしているので在庫いっぱいあるんですよ」


「そっか。じゃ、楽しみにしてる。そろそろ戻ろっか!話聞いてくれてありがと」


「いえいえ!俺も楽しみにしてます!」



*続く*







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