至福の時間

「うーー………ん」


目が覚め、体に感じるのは怠さ。

それは、昨日沢山愛されたという証拠でもある。

途中から記憶が途切れてはいるが、自分から沢山求めていたのはうっすら覚えている。


(あ~……恥ずかしい)


顔に熱が集まるのを感じる。


「あ、あき」


「!!」


台所から申し訳なさそうな顔で歩いてきた育に声をかけられ我にかえる。


「体、大丈夫……?」


「まぁ、大丈夫ではない……かな」


「うわあぁぁごめんなさいっ!!」


ベットの下で土下座する育からは本当に申し訳なさそうな雰囲気が出ている。

というか、このやり取りは結構な確率でするし、逆に僕が謝ることもある。


「気にすんなって。僕だって、そのよかった……からさ」


「あきっ!許してくれる?」


「じゃあさ、とびっきりのキス、ここにして?」


とんとん、と自分の唇を人差し指でたたく。


「するから許して。あき……」


先程とは違い、甘ったるい声で僕の名前を呼ぶ。

ベットの上に乗り上げてきた育が僕の体を抱き締めながらキスをする。

触れるだけのキスのはずなのにそこはすぐに熱をもった。


「ん…は」


(もっと、欲しい)


昨日あんなに求めあったはずなのに、体も心も育を求めてしまう。


「いく…もっと」


「だ、これ以上はダメ!」


慌てて離れようとする育を今度は僕が抱き締める。


「もう知らないぞ」


そう言って、僕を説得することを諦めた育は僕を押し倒した。



******



「もうこんな時間か……」


あれからなかなかベットから出られなかった僕たちは、15時を指す時計を二人で見る。


「さすがにお腹すいたなぁ」


「カップラーメンでもいい?作ってくるよ」


「ありがとう育」


(どう考えてもこの年にしてハッスルしすぎだよな)


そう思うけど、お互いが嫌じゃないならいいかと思ってしまう。

まぁ、考えたとこでどうしようもないしな



******



「あき、今日の夕御飯どうする?」


「さっき食べたのにもう夕御飯か……」


作るのはめんどくさいし、外食もめんどくさい……


「「ピザ頼む?」」


考えてることが一緒だったみたいで言葉がハモる。


「はは、考えてること一緒かよ~」


「あきと一緒のこと考えてるとはね」


お互いの顔を見て笑い合う。


「育は何食べたい?」


「う~ん、いつものと一緒でいいかな」


「わかった。じゃ頼むわ」


「ありがと」



******



「あ~、食ったなぁ……」


「僕ももうお腹いっぱい……。あきコーヒー飲む?」


「うん。」


お腹も心も満たされ、幸せな休日だった。

もっと若い頃はこれが普通だと思ってたけど、最近になってこういう時間はすごく幸せなんだなと思いはじめた。


「顔にやけてるよ?」


コーヒーを持ってきてくれた育に指摘される。

いつもなら恥ずかしくて誤魔化そうとしてしまうけど……


「うん。お前の事とか考えてたらにやけちゃったみたい。」


「!!」


育は一瞬びっくりした表情をしたけど、すぐにいつもの顔に戻り


「僕も今にやけそう」


そう言って優しく僕を抱き締めてくれた。



******


「もうそろそろ寝ないとな」


あれからまたダラダラと過ごし、もう少しで日付がかわりそうな時刻になっていた。


「そうだね。あき、今日は湿布貼るね?」


「ん、頼むわ」


明日からまた仕事。

でも、今日は充電もいっぱい出来たし頑張れそう。


「よし、貼れたよ!」


「ありがと」


「「じゃ、おやすみ」」


声を揃えながら言い、触れるだけのキスをする。


また明日。



*続く*






















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