第17話 ただの人間なら

1


勇者たちが遠くへ行くのを見て、悠一は思わず息を吸って、自分のために冷や汗を拭いた。


......あの気性の荒い白毛の少女が本当に自分に手を出すとは思わなかった。


「千葉、何があったか教えてくれないか?」


悠一が好奇心を持ってそう言ったのを聞いた。千葉は少し苦労して起き上がり、冷ややかに答えた。


「勇者だ……死に物狂いの勇者が、アンスト・タンティンにいてくれなくて、あたしに迷惑をかけて…」


彼女の目は激しい殺気に満ちていた。それは悠一が普段見たことがないことだ。


なぜか、この時の千葉は、悠一に見知らぬ思いをさせた。


「……千葉?」


悠一が心配そうに尋ねると、千葉はすぐに反応した。


彼女はうつむいて、お詫びの顔をして言った。


「ええと、すみません。ちょっと失態しました」


2


悠に事のいきさつを話してから。


「前に剣を抜いてくれた白髪の少女は、エリスと呼ばれていたのか。でも……勇者なら、どうしてあたしという人間に手を出したの?」


悠一はすぐにそう聞くのを我慢できなかった。千葉は考え、真剣に答えた。


「きみと一緒にいるのを見たからだろう。前にも言っただろう。僕とルシフェルは悪魔だ」


なるほど。


「気にしないわ…」


「でも、彼らは気にします。あなたは私たちと一緒にいて、彼らはあなたを殺します。」


ルシフェルは悠一の言葉を冷たく断ち切った。


悠一はかすかに口を開けて、また何かを説明しようとしたようだ。千葉も口を開いた。


「本当に、今日のことは本当にありがとう、悠一。いつも、お手数をおかけして……」


「でも……もう、このままでは……」


なんだか千葉の言葉がおかしい。


悠一は不吉な予感がする。


「……千葉?」


この時の千葉はうつむいて、何を考えているのか分からない。


突然、彼女は勇気を奮い立たせたようだ。急に顔を上げて、真剣な顔をして言いました。


「だから。これからは、引っ越すつもりだ!」


それを聞いた悠一の表情は少し落ち込んでいた。


「……急に?もっと長くここにいると思ってたのに……」


「前から決めてたんだけど、どう言ったらいいかまだ考えてないだけ」


こんな千葉を見ています。悠一は彼女を引き留める理由が見つからず、結局そう言うしかなかった。


「……ああ、そうですか。そうですか。じゃあ、いいですよ。えーと、お大事に。」


これに対し、千葉は明るい笑顔を見せた。


「ええ。そうします。あなたも、自分のことを大切にしてください」


3


勇者の突然の出現により、悠一自身の安否も脅かされる。


今回勇者を撃退することに成功したが、その後は?


千葉がいる限り、勇者たちは悠一に迷惑をかけ続ける。


千葉はもちろん悠一が自分のせいで不幸になるのを見たくない。


そのため、慎重に考えた結果、千葉は敢然と坂井悠一を離れた。しかし離れて間もなく、千葉は突然足を止めて、思わず振り返って悠一を見た。




彼女の心には不思議な気持ちが混じっている。





おかしいですね。明らかに…彼はただの人間だ。





どうして自分がこんな感じになったの?




4


その日の夜、悠一は眠れなかった。


千葉と手を振って別れを告げた後、悠一はまるで魂を失ったかのようにふらふらと家に帰った。


彼は家の状況を確認した。


うん、散らかっている。まるで泥棒に入ったかのようだ。


いつもなら、悠一は千葉に何が起こっているのかと大きな声で問いかけるに違いない。そして、自分も苦笑しながら部屋の掃除をします。


しかし今、彼は一人で帰ってきた。悠一に相談できる相手はいない。


部屋は何の手入れもしていません。ゆっくりとベッドのそばまで歩いて、横になった。


うん。その前に...すべては夢だったらいいのに。


悠一は自分を慰めようとした。しかし思いもよらず、千葉とこの部屋で一緒に笑っていた映像が頭に浮かんだ。振り切れない。


悪魔という身分が存在しなければ。


もしかすると今の千叶は、ただの普通の中二少女なのかもしれない......

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仕事終わりに悪魔美少女を拾う GOUHU @GOUHU

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ